風と対話するように旅をする。与那国島の大自然を五感で受け取るための、小さな選択
第1章:最果ての島、風が選ばせる移動術
日本の西の最果て、与那国島。この島へ旅立とうとするとき、私たちはまず飛行機やフェリーを予約し、眠る場所を確保します。けれど、多くの人が見落としがちなのが「島に着いてからの、自分の足」をどうするか、ということです。
なぜ、宿や乗り物と同じタイミングで、島内の移動手段を考えておくべきなのか。そこには、この最果ての島特有の、どこか愛おしい交通事情が隠されています。与那国島を流れる主な交通手段は、バス、自家用車、そしてレンタカー。
島に暮らす人々のほとんどは、日々の生活を自家用車とともに送っています。免許を持たないお年寄りなどは、のんびりと走るバスを待ちます。それ以外といえば、原付バイクのエンジン音、中学生の自転車、そして時折、趣味のランニングで風を切って走る人を見かけるくらい。もちろん、線路も電車もここにはありません。
そうなると、この島を訪れる旅人にとっての選択肢は、自然と「バス」か「レンタカー」の二つに絞られていくことになるのです。
第2章:五感を満たす、自由な翼を手に入れる
与那国島を気ままに巡るなら、やはりレンタカーが心強い相棒になります。
島内にはいくつかのレンタカー会社がありますが、与那国空港に降り立つのであれば、空港内かそのすぐそばで借りるのが一番スムーズです。滞在中、自分の「なんとなく」という直感のタイミングで、好きな場所へ風のように移動できるのは、レンタカーだけの贅沢。
もし「丸一日借りるほどではないな」と思われるなら、島内観光をする日だけ、あるいは数時間だけスポットで借りるのも賢い選択です。
お値段も幾分リーズナブルになりますし、空港内のカウンターで借りるか、空港から数分歩いたお店で借りるかによっても、少しずつ料金が異なります。費用を少しでも抑えたい方は、宝探しをするように事前に問い合わせてみるのも良いでしょう。
ここで一つ、最果ての島ならではの現実をお伝えすると、島のガソリン代は都会に比べて少し高めです。たとえば首都圏で150円台の時期なら、与那国島では190円ほど。その数字に最初は少し驚くかもしれません。
けれど、安心してくださいね。島はぐるりと一周しても約27キロメートル。ゆっくり景色を眺めながら走っても3時間、ノンストップなら1時間ほどで回れてしまう、愛らしい大きさなのです。滞在中にどれだけ乗り回したとしても、それほどお財布を圧迫するような消費量にはなりません。
それよりも、レンタカーという自由な翼を手に入れることで、あなたの五感は極上の幸福で満たされることになります。
朝日が優しく昇る東崎(あがりさき)。
青空の下、時間を忘れたようにゆっくりと歩くヨナグニウマの愛おしい姿。
水平線に真っ赤な夕焼けが沈んでいく西崎(いりざき)灯台。
そして、夜の静寂のなか、満天の星をただ静かに眺めるナンタ浜や比川浜……。
「いま、あそこへ行きたい」そう心が動いた瞬間に、誰の目も気にせず、すぐにハンドルを握って向かえること。
それこそが、レンタカーという小さな選択がもたらしてくれる、何よりの醍醐味なのです。
第3章:島に流れる時間に、身を委ねてみる
一方で、この島にはもう一つの、どこか不思議で優しい移動手段があります。島を走る「与那国町生活路線バス」。

驚くことに、このバスは誰でも無料で乗ることができるのです。島民の毎日の大切な足ですが、私たち旅人も、まるで島の一部になったような気持ちで自由に乗り込むことができます。
運行は早朝から深夜まで、だいたい一時間に一本。ただし、時間帯によっては二時間ほど間隔が空くこともあります。詳しい時刻表は、島で手に入るパンフレットを宝探しのようにめくって確認してみてくださいね。
ルートは、島の東にある祖納(そない)集落をスタートし、中央のホテルや空港を経由して、西の久部良(くぶら)や南の比川(ひがわ)集落へと向かいます。要は、島の西半分を右回りするか、左回りするかという、のんびりとしたルートです。
無料のバス旅はとても魅力的ですが、一度目的地でバスを降りると、そこには次の便が来るまでの「たっぷりと豊かな空白の時間」が待っています。だからこそ、行動する前に帰りのバスの時間を確認しておく。そして、その時間を見定めてから、島の自然の中に身を浸す。これが、バスと仲良くなるための鉄則です。
もし乗り遅れてしまったら、果てしない一本道をトボトボと歩くことになります。「それなら、タクシーを呼べばいいのでは?」そう思う方もいるかもしれませんね。けれど、都会の当たり前が通用しないのが、この最果ての島のおもしろいところなのです。
第4章:島で見かけたら奇跡? 幻のタクシー
旅の移動手段として、観光タクシーを思い浮かべる方も多いでしょう。確かに、与那国島にもタクシーは存在します。けれど、その数はほんの僅か。私がこの島に3ヶ月滞在していた間、実際に街中でタクシーを目撃したのは、なんと、たったの「1回」だけでした。
噂によると、島にいるタクシーは1台か2台。運転手さんも2〜3名ほどだそうです。利用している姿を見ることも滅多にない、まさに島内の「レアキャラ(幻の存在)」なのです(正直なところ、パトカーを見かける回数のほうが多かったくらいです)。
そのため、もしタクシーの利用を考えているのでしたら、旅の前の事前予約が絶対に欠かせません。都会のように、電話をすれば数分で迎えに来てくれる、というわけにはいかないのです。
ちなみに、夜の居酒屋さんでお酒を楽しんだあとに恋しくなる「運転代行」も、この島にはたったの1台しかありません。料金も、初めて見たときは「おや、少し高いな……」と、私の頭の中の計算機が少しびっくりしたのを覚えています。
第5章:圧倒的な緑のなかで、野生の温もりに触れる
風を全身に浴びて旅をするなら、レンタサイクルやレンタルバイクという選択肢も、島内には心地よく用意されています。空港をはじめ、島のあちこちに借りられる場所があります。できれば旅立つ前に声をかけて予約しておくのが安心ですが、現地に着いてからの「なんとなく」の思いつきで借りることもできますよ。
自転車のペダルを漕ぎ、バイクのスロットルをひねる。その瞬間、車内には届かなかった、亜熱帯の濃密な植物たちの匂いが一気に鼻腔をくすぐります。
日本の他の地域とは明らかに違う、見たこともない樹木や草花、圧倒的な緑のグラデーション、そして視界の奥にきらめく海と空のブルー。
ただ、一つだけ覚えておいてくださいね。この島には、夜の帳(とばり)を優しく照らす街灯がほとんどありません。集落の中でさえ、お店の明かりが途切れた途端に、息をのむような深い闇に包まれます。夜のライドには、ご注意を。
そして、島を車で走っていると、時折出会うのが「歩いて旅をする強者(つわもの)」たち。
「次の目的地まで、まだずいぶん距離があるはずなのに……」
そんな場所でも、自分の足で一歩一歩進む人を見かけては、その健脚ぶりに何度も感心させられました。
実はわたしも、15分から20分程度の距離であれば、バスを待たずにのんびり歩いて移動していました。歩く速度だからこそ、出会える景色があります。
道端に咲くハイビスカスやブーゲンビリアなどの花々、聴き慣れない南の鳥たちの声。
そして、生い茂る緑の向こうから突然現れる、のんびりとした牛やヤギの姿。植物に覆われたたくましい岩肌の向こうから、少しずつ近づいてくる青い海の輝き。
歩いていると、すれ違う車から島の方が「乗っていく?」と優しく声をかけてくれることもありました。その時は歩く時間を楽しみたくてお断りしてしまいました。
でも、外から来た旅人をそっと包み込んでくれる島の人々の温かさは、今でもわたしの胸に深く残っています。
第6章:「癖を手放した」その先で、あなたが選ぶ旅のカタチ
もし、あなたの旅の目的が「ダイビングだけ」なのであれば、こうした有料の移動手段はそもそも必要ないかもしれません。多くのダイビングショップが、空港や宿への送迎を丁寧にしてくれるからです。ただし、それも「宿に食事がついている場合」に限られます。
歩いて行ける距離に飲食店がない場合、無料バスを使ってご飯を食べに行くことになりますが、お酒が美味しくてついついバスの時間に遅れてしまう……というのは、この島での愛すべき「あるある」です。
ダイビングというひとつの目的に没頭するなら、車を持たない不便さをあえて楽しむのも一つの旅のカタチ。
けれど、もしあなたが「好きなときに、好きな場所へ行きたい」と願うなら。
あるいは、予定調和の毎日から離れて、自分の「なんとなく行ってみたい」という直感を最優先にしたいのであれば、やっぱりレンタカーという小さな余白を自分にプレゼントしてあげるのが一番おすすめです。
バスの停留所から遠く離れた、東崎(あがりさき)の灯台。
島ならではの泡盛が静かに眠る、小さな直売所。
そうした場所へは、バスの時刻表を眺めているだけでは、どうしてもたどり着けないのです。
以前、島で出会った外国からのお客様が「明日の日の出が観たい」と仰ったことがありました。けれど、日の出の名所である東崎へ向かうバスはありません。
交通手段がないと寂しそうに微笑むその人に、あの時のわたしは車を出して差し上げることができず、とても切ない気持ちになったのを覚えています。
旅の移動手段を選ぶこと。
それは単に「目的地へ行く方法」を選ぶことではありません。都会で身につけてしまった「効率よく、がんばって動く」という心の癖をそっと手放し、最果ての島で、あなたがあなたを一番心地よくさせてあげるための、聖なる選択なのです。
【この記事を気に入ってくれたあなたへ】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
わたしはこれからの地球人の聖書となる『大日月地神示』を愛読しながら、日々の暮らしにそっと「空白」を迎え入れ、不完全な自分を生きる智慧を言葉にしている随筆家です。
普段は、共感力が高く、周りのためにがんばりすぎて疲れてしまう女性たちへ向けて、直感を信じて内なる主権を取り戻すメッセージを届けています。
今後は、神示の教えに絡めた等身大の体験談や、かつて暮らした大好きな与那国島への移住への旅路をこのマガジン【大日月地神示とわたしの余白日々】へ大切に綴っていく予定です。
もし、あなたの心にも「なんとなく」の直感が響きましたら、ぜひフォローして、これからの旅路を一緒に眺めていただけたら嬉しいです。
あなたの今日という日が、心地よい余白で満たされますように。
ーーー 凛麻 美由紀
※この記事は、旧名義(おいかわみゆき)のアカウントから、現在の活動名「凛麻美由紀」への統合に伴い、こちらにお引越しに伴い加筆編集したものです。
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