恐怖〜東三国駅の白いダイヤ〜
毎日暑いですね。
今日は、私の新婚時代の恐怖体験をば、ひとくさり。
結婚して間もなくの頃、夫の会社の方々が私の歓迎会を開いて下さることになった。
夫の勤務先は大阪の東三国駅近くにあった。
それで夜6時、東三国駅改札前で夫と待ち合わせしていた。
冬のことで辺りはすっかり真っ暗であり、電車が吐き出す人々が去ってしまえば、駅員さん1人以外誰もいない。
少し心細い思いで、初めて降り立った駅で、夫を待っていた。
駅だけが煌々と明るく、その光が届かない向こうは真っ暗であった。
その真っ暗な中、向こうから地上1mくらいの所に、縦長の白いダイヤが浮かび上がった。
それをよく見ると、縦長の白いダイヤが幅広の白いダイヤになり、また細いダイヤに戻り、伸縮を繰り返して近付いて来る。
え、何?
この伸縮する白いダイヤ。
目を凝らすと、男の黒いシルエットが浮かんで来た。
あっ、この人痴漢だ!
駅員さんのいる改札の方へ逃げた。
件の男がどんどん近づいて来るのが気配でわかる。
どうか通り過ぎてくれますように。
駅員さん、助けて。
靴音が迫り、とうとう男が私の背後に立ち、肩を掴んだ。
ビクッ、として振り向くと、
夫だった。
夫のスーツのズボンのファスナー、社会の窓が全開だった。
歩く度に、ファスナーからのぞくワイシャツの白い生地が、縦長ダイヤ、横長ダイヤに見えていたのだった。
新婚1ヶ月の私は、恐怖と安堵と軽い絶望を瞬時に味わい、混乱していた。
夫は優しい顔でにこにこしながら、見つめ返して来た。
……あの、私が指摘しないといけないんですよね?
…まだ、新婚1ヶ月目なんです。
夫にどんな顔で指摘すればいいんでしょう?
余りに恥ずかしく、よく覚えていないのだが、
目線を夫のダイヤの方へ落とし、
「開いちゃってるね」
ぐらいしか言えなかったと思う。
この頃の私には人並みの羞恥心があったのだが、
長い年月の間に何処かへ落として来てしまったらしい。
私がnoteを書くにあたり、座右の銘としているのが、
何を書くかが知性
何を書かないかが品性
どう表現するかが人間性
なのであるが、今回は全て欠品状態です。
夫の社会の窓事件は、その後も度々起こり、笑顔で爽やかに悪びれもせず、ファスナーを閉めるという事で解決しているらしいのが、人徳なのか呆れられているのかはわからない。
先日も、夫が上野東京ラインの座席前の吊り革に掴まって、満員電車に揺られていたところ、
夫の目の前に座っていた若手サラリーマンが、おもむろに夫にスマホをかざして来たそうだ。
画面には
ズボンのファスナー全開です
と書いてあったとのこと。
夫が帰宅後に珍しく興奮気味で語ったが、
私はそのリーマン青年のスマートさと優しさに感嘆した。
夫に恥をかかせることなく、夫にだけわかる方法を咄嗟に選ぶ機転。
他人の恥を放っておけない優しさ………うん、イケメン、仕事出来さん。
見ず知らずのオッサンリーマンに温情を掛けてくれる青年が、この世知辛い世の中にいるなんて、捨てたもんじゃないな、と。
また、そういう風に指摘しても、憤慨しそうに見えない夫にも、何らかの徳があるのだろう。
ここまで来て、私は一体何を書いているのだろうか?
怪談じゃないし、途中から羞恥プレイの話だし、最後は青年を讃えてる。
逍遥型ライターにも程が過ぎる。
タイトル詐欺じゃん……タイトル変えようかな…………暑い。
脳が煮えている。
原紫苑(ハルシオン)でした🐦💕
