小説【ハムレット〜要塞の王城〜】#02
✅️デンマークの最初の悲劇。
デンマーク王・ハムレットが亡くなった。
突然の事だった。
昨日まで行政をこなして王様。
暗殺という衝撃と畏怖の中に私達は人間関係の闇を知る事になった。
遡る事、3日前。
早朝は執事が居なくとも一人で起きるハムレット王。
顧問の執事は支度の準備をして整える。洗顔の銀製の水差しと銀容器と紅茶を用意した荷物運搬用のカートを押して王の寝室である扉をゆっくりとノックした。
王様の様子を見る為に扉を開ける。少し遅れて寝てるのかと思ったが蒼白した顔に可笑しい事に気付いた。
王の寝室にぞろぞろと幹部の政治家や官僚、軍の幹部達が王様の様子を見に来た。
既に医師は遺体を調べている。
「病死でもない。自然死にしては、いささか不審だ。」
医師は言葉を選びながら、遺体の顔に視線を落とした。
宮廷の者達は一瞬、互いに顔を見合わせる。
王の専属医師は慎重に手袋をはめ、静かに検体を進めた。
「外傷は認められない。だが、耳周辺に不明な痕跡がある。その性質は判別できない。」
言葉が途中で止まる。
誰も続きを言わなかった。
ただ、その場に“何かが違う”という沈黙だけが残った。
「ふむ・・・これは毒液による死の疑いがある。」
注意深く診断した結果、医師は呟いた。
「自然死ではないですと?」
「つまり、これは他殺?」
「ああ、なんておぞましい。誰がこんな事をッ!!」
「暗殺した犯人を捕まえるしかない。」
「神の身元にきっと天使たちが王を迎えに来るだろう。今までご苦労だった、ハムレット王よ、アーメン。」
「アーメンとはなんたる失礼な!!私はまだ王が生きてると信じてますぞ!!」
「不謹慎だ。ハムレット王の前で喧嘩するな。」
静かに遅れて王弟が現れる。
「クローディアス様!!」
宮廷の者達は王弟の登場に緊張を走らせた。
空気がわずかに凍った。
隣の王妃のガートルードは恐怖の顔になっていた。
動揺が隠しきれない。
失意の中、王弟のクローディアスは考えあぐねていた。
息子のハムレットが不在の時だ。
叔父であるクローディアスは意志を固めた。
「ただちに評議会を開く。」
王弟のクローディアスは全ての指揮を執った。
✅️評議会
「諸君、集まっていただきたい。」
クローディアスは真剣な眼差しで周りを見つめる。
「このままでは国王の死は、国家の安定に直結する問題である。内外に示しが付かない。混乱を避ける為に今は病死という形で扱う。詳細な調査は継続する。この不測の事態に護衛兵と調査員を増やし、真相は必ず明らかにする。また、国王の死に不審な点がある以上、関係者の事実確認を徹底的に洗い出し、追って評議会で処罰を下す。」
いつもの温和な王弟よりも更に厳しい表情だった。
重責に耐えられるか周りの臣下はクローディアスを見つめた。
「ハムレット王の逝去は我々にとっても心身ともに辛い。王政が空白になるのは避けなければならないですが、王位継承についてまた日を改めて慎重に議論しましょう。」
重鎮のポローニアスが静かに喋った。側近の話に皆が同意した。
皆が評議会から居なくなった時にポローニアスは執事を呼んだ。
「執事、ハムレット王子に書簡を。」
「畏まりました。ただちに使者を立てます。」
執事は一礼すると、足早に部屋を後にした。
海峡が広がる華やかなエルシノア王城、今や氷点下の要塞城として沈黙の炎に包まれていた。
📚️続く📚️
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