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小説【ハムレット〜要塞の王城〜】#01

主な登場人物

ハムレット(18歳)
ホレイショ(19歳)

✅️序章 ドイツ大学

窓の扉を開ける。そよ風がハムレットの心を撫でた。柔らかな空気が教室に入り込む。

「ああ、世界はこんなにも美しい。それなのに僕の心は退屈だ。」

ドイツのヴィッテンベルク大学でハムレットは王政学を専攻していた。

「退屈ならチェスでもするかい?」

友人がチェスボードを持ってくる。

Chess Japan

「ホレイショー」

ハムレットは振り向いた。

「王を攻略するには先ず、兵士を攻略しなければならない。」

相変わらず、自信満々な言い方が癪に障る。

「また説教か。」

「違う。勝ち方の話さ。」

「負けを見越してやるチェスは嫌いだ。」

年甲斐もなく、すねるハムレット。

「ハムレット、おいで。」

優しくホレイショーは微笑みながらハムレットを誘導した。

「チェスは戦争の遊びじゃない。政治の縮図だよ。」

ホレイショは駒を進めながら、北欧神話のオーディンについて静かにそして抑揚を付けながら語り始めた。

「オーディンは力だけで世界を治めたわけじゃない。知識を得るため、自ら片目を差し出したんだ。」

得意げに語るホレイショ。ハムレットも駒を進める。

ゲオルク・フォン・ローゼン
オーディンの絵画

「王に必要なのは剣よりも、真実を見る覚悟なのかもしれないね。」
ホレイショの言葉に、ハムレットはわずかに視線を伏せ、言葉を探す。そして思考の底から言葉を引き上げるようにして答えた。

「真贋か・・・。アダム・エルスハイマーの《聖ステパノの石打ち》。最初の殉教者が石に打たれる瞬間を描いたものだ。そこには、魔女狩りにも似た気配がある。権力と嫉妬が絡み合い、見えない陰謀が影を落としている。民衆は彼を慕っていたという。だが、それでもなお、人は彼を裁いた。慕うことと、裁くことの間に、一体どれほどの距離があるのだろう。・・・真実とは、いつも静かにねじれていくものだな。」

アダム・エルスハイマー
《聖ステパノの石打ち》

ホレイショはチェスの歩を進めながら引き続きオーディンを語る。

 「オーディンも戦だけでは九つの世界を治められなかった。情報、同盟、犠牲。その全てを秤に掛けていた。」

なめらかに言葉を紡ぐホレイショ。

「───王は民を動かす前に、自分自身を律しなければならない。オーディンが片目を失ったように、王になる者も何かを失わずにはいられない。」

それが二人のいつもの昼下がりだった。

📚️続く📚️

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