「夏の虫かご」詩―#風まかせ文芸部 #夏の終着点
りょうちゃん
新しい虫かごを
ジイジに買ってもらった
ポケモン・ボールみたいな
まあるい籠
嬉しくて
寝るときも 枕元に置いている
翌朝
ジイジと虫取りへ
カラスアゲハは
貴婦人のように身を飾り
ゆるりと 網をすり抜ける
緑のバッタは
キチ・キチと羽音を残し
草むらへ 跳ねていく
赤とんぼは
スィーッと 空を泳ぎ
網の先を すり抜ける
悔しくて
りょうちゃんは
口を尖らす
ジイジは
麦わら帽子の影から
その様子を
にこにこと見守っている
桜の古木の下で
ひと休み
冷たい麦茶を飲むと
涼しさが喉を走る
木漏れ日は
夏の情熱を手放し
陽だまりのように
やわらかく降りてくる
空の紺青は薄まり
ペールブルーへ
入道雲は
どこかへ消えた
そのとき
木の上から
ひとつの影が落ちてきた
ミンミンゼミだ
ひっくり返り
手足をモソモソ動かしている
手のひらにのせると
黒水晶の目で
じっと見つめてくる
「夏が行っちゃうから
お空に戻るよ
また来年、会おうね」
その声を追うように
ヒグラシが
一斉に鳴きだした
天に帰る夏を
悼むような響きが
森の奥まで染みわたる
ジイジがぽつり
「坊や、夏は
お国に 帰っていったね…」
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
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