週刊やわらか返信室 創刊号「一応、真面目にやっています」
皆様、こんにちは。
今週から編集部では、
どうでもいいことに、
それなりの時間を使ってみることにしました。
一度、創刊号としてお届けしたのですが、
しばらく続けているうちに、
もう一度、最初から作ってみたくなりました。
その一部を、
今週号としてまとめています。
それでは、
創刊号、もう一度。
お届けします。
今週のインタビュー No.1 神崎 烈

神崎 烈(かんざき れつ)
28歳。神奈川県出身。
職業
食品メーカー営業部勤務。勤続6年。
もう一つの職業
ヒーロー
「マッハジャスティス」
ヒーロー歴9年。
19歳の時、発明好きだった祖父から変身装置を渡され、活動を始める。
祖父は現在も装置の整備を担当。
本人によれば、
「メーカー保証はありませんが、祖父保証はあります」とのこと。
活動記録
怪人撃退 47体。
人命救助 23件。
勘違いによる出動 推定180件以上。
主な敵は、秘密結社
「暗黒商会ブラック・カンパニー」
世界征服を掲げているが、
これまでに占拠した場所は、
商店街、公民館、スーパーの屋上など。
倒した怪人にも礼儀正しく、一度、
「立てますか」
と手を差し出し、
「お前が倒したんだろ」
と言われたことがある。
本人は、
「おっしゃる通りであります」
と答えた。
趣味
漫画、アニメ鑑賞。
祖父の影響で昭和作品を好む。
会社で「よろしくお願いします」と言うところを、
「よろしくメカドック!」
と言ってしまったことが二度ある。
長年、好きな女性のタイプは、
『The♥かぼちゃワイン』のエルだった。
しかし、乃木坂46の握手会に怪人「握撃男爵グラッパー」が現れた際、井上和を救出。
事件後に握手とサインをもらい、
現在は本人いわく、
「少々、情勢が変わっております」とのこと。
登場時の独特なステップは、
『パタリロ!』のクックロビン音頭を参考にしている。
本人は、
「マッハステップ」
と呼んでいる。
好きな食べ物
ナポリタン。
苦手なもの
美容院。
鏡の前で長時間会話する状況に、いまだ慣れない。
特技
縄跳び。
二重跳びの自己記録、連続186回。
弱点
困っていない人まで助けてしまうこと。

編集部
本日はよろしくお願いします。
神崎
よろしくお願いいたします。
マッハジャスティスこと、神崎烈であります。
編集部
最初からフルで名乗るんですね。
神崎
はい。祖父から「名乗る時は腹から声を出せ」と教わりました。
会社では、やらないようにしております。
編集部
普段は食品メーカーの営業マンです。
ヒーロー活動と会社員生活は、どう両立しているんでしょう。
神崎
怪人が出た時は、営業先へ向かうふりをして会社を出ます。
一応、嘘ではありません。
怪人も、だいたい外におりますので。
ただ、戻った時に商談の資料がそのままだと、少し説明が難しくなります。
編集部
会社には秘密なんですね。
神崎
はい。
ただ、営業部長にはかなり疑われています。
一度、「お前、外回りの割にニュースに映りすぎじゃないか」と言われました。
編集部
素朴な疑問があります。
怪人たちは強い力も、高度な科学力も持っていますよね。
それなのに、なぜ商店街や公園など、妙に小さな場所を襲うんでしょう。
神崎
私も、九年間ずっと疑問に思っております。
空を飛べる怪人が、なぜ町内会館を占拠するのか。
巨大ロボットを作れる組織が、なぜ駅前のたこ焼き屋を狙うのか。
一度、戦闘中に怪人へ聞いたことがあります。
編集部
答えてくれました?
神崎
「予算の問題だ」と。
あちらにも、いろいろあるようです。
編集部
最近は、ヒーロー活動もSNSの影響を受けますか。
神崎
非常に受けます。
昔は怪人を倒せば終わりでした。
今は、戦っている最中から撮影されています。
翌朝には、
「マッハジャスティス、植木鉢を踏む」
という動画だけが切り抜かれていたりします。
編集部
怪人を倒した部分ではなく。
神崎
はい。
怪人は映っておりませんでした。
植木鉢だけで、十八万回再生されました。
編集部
気をつけるようになったことは?
神崎
まず周囲を見るようになりました。
車、自転車、店の商品。
それから、スマートフォンを構えている人。
特にライブ配信は怖いです。
こちらにも準備というものがありますので。
編集部
変身前を撮られると困りますね。
神崎
はい。
一度、変身ポーズの途中で宅配便が横切りまして。
その動画は、今も消えておりません。
編集部
ヒーロー歴九年。
昔と比べて、正義感そのものは変わりましたか。
神崎
そこは、あまり変わっておりません。
困っている人がいれば助ける。
悪い怪人がいれば止める。
ただ昔は、全部こちらで決めていました。
今は少しだけ、相手の話を聞くようになりました。
編集部
九年かかって。
神崎
はい。
祖父には、
「変身する前に覚えてほしかった」
と言われました。
編集部
怪人との戦いで、怖いと思うことはありますか。
神崎
もちろんあります。
強い怪人もおりますし、毎回無事に終わる保証もありません。
ただ、不思議なもので。
変身すると、怖いまま前へ行けます。
勇気というのは、怖くなくなることではないのかもしれません。
編集部
そこは、やはりヒーローらしいですね。
神崎
ありがとうございます。
ただし、高い所は変身しても普通に怖いです。
編集部
最後に。
これから、マッハジャスティスとしてやってみたいことはありますか。
神崎
後輩を一人、育てたいと思っております。
一人で九年やってきましたので、そろそろ二人いてもいい。
編集部
二代目ではなく、二人体制。
神崎
はい。
祖父に変身装置をもう一台頼みました。
編集部
作れそうですか。
神崎
「部品がない」と言われました。
古いラジカセに使われていた部品らしく、
今は二人で中古店を回っております。
世界を守る以前に、
部品が見つかりません。
取材終了後。
廊下で女性社員が、大きな段ボールを抱えていました。
神崎さんは立ち止まり、
「お手伝いしましょうか!」
まず、聞いていました。
古書院りひとの勝手に悩み相談室

質問
古書院先生、はじめまして。
神戸市在住の男性、会社員です。
趣味は、
サプリメントの飲み比べです。
悩みは、
寝ているときに奇声を出すことです。
最近、
はじめての彼女が出来ました。
先日、彼女と一緒に、
家で『SPY×FAMILY』を見ていました。
その時、彼女が、
「もし私がヨルみたいに、暗殺者ならどうする?」
と聞いてきました。
私は、
「なら僕はロイドになって守るよ」
と答えました。
その時は、
なかなか良い返事ができたと思っていました。
しかし古書院先生。
あとになって考えると、
彼女は本当に暗殺者なのかもしれません。
あれは質問ではなく、
私の覚悟を試したのではないでしょうか。
私は、しがないサラリーマンです。
アーニャもいません。
ボンドもいません。
最近はスパイ映画を見て、
研究しています。
古書院先生。
どうしたら、
短期間でスパイになれるでしょうか。
古書院
なれません。
それと君は、
彼女から一度も、
「スパイになってください」
とは頼まれておりません。
昔の郵便配達には、
ずいぶん大変な仕事がありました。
手紙というものは、
書いた人間と、
読む人間が離れております。
その間を誰かが運ばなければなりません。
雨の日もあります。
雪の日もあります。
道が悪い日もあります。
それでも、
「たぶんこの辺でしょう」
で隣の家へ届けるわけには参りません。
宛先を見るのであります。
君には、
これが少々足りません。
彼女は、
「もし私が暗殺者ならどうする?」
と言った。
君は、
「僕はロイドになって守るよ」
と答えた。
ここまでは、
ちゃんと届いております。
ところが君はそのあと、
暗殺者かもしれない。
覚悟を試されたのかもしれない。
スパイにならなければならない。
と、
頼まれてもいない手紙を三通ほど、
自分で書き足しております。
しかも全部、
自分宛てです。
これは郵便屋でも、
なかなか見ない仕事であります。
スパイ映画を見るのは、
止めません。
スパイ映画は面白いですから。
ただし、
尾行の練習や、
暗号の勉強を始める前に、
次に彼女と会ったら、
普通にデートをしてください。
おそらく彼女も、
普通に来ます。
もし本当に暗殺者でしたら、
その時はまた、
お便りください。
もっとも君には、
スパイになることより先に、
一つ確認していただきたいことがあります。
寝ている時の奇声を、
彼女はもう聞いているのでしょうか。
私は、
そちらの機密がいつまで守られるのか、
少々気になっております。
一瞬だけ、漫画だった日
人生を振り返ると、ほんの数秒だけ、
漫画の一コマのようになってしまう瞬間があります。
そんな「あとから思い返すと漫画だった瞬間」を、記録する企画です。

編集部解釈

私は困っていた
私が勤めている会社の社長は、
顔も口調も、
かなり怖いです。
たまに、
や〇ざなのかな、
と思うくらいです。
でも、
LINEだけは違います。
「確認お願いします🙇♂️🌸」
「あの件どうなってる?🫠✨」
最初の頃は、
別人かと思いました。
最近は、
絵文字の種類で、
その日の機嫌まで予想しています。
🌸が入っている日は、
少し安心します。
✨まで付いていると、
今日は大丈夫な気がします。
そして翌日、
普通に怒られます。
最近は、
🌸も✨も、
信用していません。
ただ、
困ったことに、
面倒見はかなり良いです。
怒られた日の帰りに、
「ちゃんと飯食って帰れよ😊」
と来たりします。
その😊が、
今のところ一番怖いです。
未来予想図

2078年。
富士山に、
エレベーターができます。
地上から五合目まで、
四十七秒です。
完成初日は、
朝から大勢の人が並びました。
ところが、
五合目へ着いた人の半分が、
そのまま下りのエレベーターに並びました。
思っていたより、
寒かったからです。
翌年、
六号目まで延伸されました。
利用者は、
さらに減りました。
今週の変な音

夜、
住宅街を歩いていたら、
後ろから、
パカッ、パカッ、パカッ、パカッ。
馬が走ってくる音がしました。
振り返りました。
誰もいません。
また、
パカッ、パカッ、パカッ、パカッ。
今度は、
かなり近い。
角を曲がると、
サンダルを履いたおじさんが、
犬の散歩をしていました。
おじさんが歩くたび、
サンダルと道路が、
見事な蹄の音を出しています。
犬より先に、
馬が来ました。
編集部装丁
編集部が、
その本の余韻を勝手に表紙と帯にしました。
※当記事にはAmazonアソシエイトリンクを含みます。
📖 夏目漱石 『こころ』

編集部帯
先生、
そこまで書くなら、
生きているうちに話してほしかったです。
編集部コメント
はじめて読んだ時は、
こんなに面倒な人たちだと思っていませんでした。
久しぶりに読むと、みんな少しずつ言葉が足りない。
そのせいで、最後まで読んでしまいます。
今週の変な発明

「布団強制発射ベッド」
朝、
設定した時刻になると、
バンッ。
布団が、
天井近くまで飛び上がります。
本人だけ、
ベッドに残されます。
冬は、
毛布も一緒に飛びます。
二度寝防止には、
かなり優秀です。
ただ、
一度使った人の多くが、
翌日から普通の目覚まし時計に戻しました。
過去の自分へのメール
昔の自分へ。
返信が五分来ないだけで、
何度もスマホを見ていますね。
大丈夫です。
相手はたぶん、
普通にご飯でも食べています。
それより、
数学をやってください。
そちらは本当にまずいです。
二十年近く経った今、
返信が来なくても、
ずいぶん平気になりました。
ただ、
返そうと思ったまま、
三日経つことがあります。
君がいちばん嫌っていた人に、
少しなりました。
今週の一曲
The Chainsmokers & Coldplay
Something Just Like This

Something Just Like This
今週はこの曲でした。
やわらか返信室では、
現在は主に4つの企画を書いています。
もし気が向いたら
他の企画や自己紹介ものぞいてみてください。
どこかで、自分だけだと思っていたことに出会えるかもしれません。
📖人間関係の小さい温度差を観察する話
🌙生活の途中で思い出す、景色や気持ちの話
📮少し昔の相談員が現代の悩みに答える話
📰編集部がどうでもいいことを真面目に考える雑誌
編集部より
夏休みの思い出は、なぜか終わってからの方が増えていきます。

編集後記
夏休みが終わりました。
編集部でも、
少しだけ夏の話をしました。
そのあと、
今週号のページ数を見ながら、
「月刊にしませんか」
という意見が出ました。
「ぶ厚いので、絶対無理です!」
いつも静かな編集部員が、
ガチ切れしました。
しばらく話し合った結果、
週刊の志は持ちつつ、
たまに隔週でも良いのではないか、
ということになりました。
週刊やわらか返信室です。
そこは変わりません。
たぶん。
来週は、
もしかしたら再来週は、
もう少し前へ進む予定です。
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