不思議の国のアリスと言えば、トムペティもいいけれど、グウェンステファニーは外せない!(オススメMV #165)
こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の165回目です。(連載のマガジンはこちら)
今回は、Alice's Adventures in Wonderland、不思議の国のアリスをモチーフにしたMVをお届けします。
「不思議の国のアリス」は、皆さんご存じ児童文学の名著ですが、1865年と今から160年も前に出版されています。
今でこそ児童書でもチョット気色悪い内容や、捻ったテーマのものもありますが、当時はキレイでマジメな内容の児童書ばかりであった中、児童書の新時代を切り開いた小説とも言われています。
そして、独自の世界観と個性的かつ多様性のあるキャラクターを輩出しているがゆえ、不思議の国のアリスをモチーフとしたMVも国内外で多数リリースされているのですが、その中でダントツにオススメな2つのMVを紹介しましょう。
では、最初の不思議の国のアリスをテーマとしたオススメMVはコチラ。
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの「Don't Come Around Here No More」です。どうぞ!
ちょっとレトロ感はあるものの、独特な雰囲気を醸し出す映像と、まったりとした楽曲との組み合わせが秀逸なMVです。
不思議の国のアリスをテーマとしたMVとしては、うまくオリジナルを取り入れつつ独自の世界観を作り上げた成功例と言えるでしょう。
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ(Tom Petty and the Heartbreakers)は、1976年に結成されたUSのロックバンドで、残念なことにフロントマンであるトム・ペティが2017年に鬼籍に入られたため解散してしまいましたが、それまで1度も解散することなく活動をつづけたご長寿バンドになります。
数多くのヒット曲を世に送り出し、数度にわたるグラミー賞の受賞に加えて、ロックの殿堂にも名を連ねているという、すごいバンドです。
そして、この「Don't Come Around Here No More」は、1985年リリースの6thアルバム「Southern Accents」からのリードシングルとして同年にリリースされた楽曲で、彼らのヒットナンバーのひとつです。
では、さっそくMVを観てみましょう。
映像は、不思議の国のアリスと、その続編である鏡の国のアリスのモチーフをそのまま取り入れた、分かりやすい内容となっています。
オープニングからいきなり(少し大人びた)アリスが登場し、キノコの上で水キセルをふかす芋虫に出会います。
そして、場面が変わってもうひとりの主役でトム・ペティ扮する帽子屋が登場するのですが、この帽子屋の役にピッタリはまっているのが驚きです。
この場面以降の舞台となる白黒の格子模様の部屋は、鏡の国のアリスのチェスを模していて、その部屋の中でお茶会は不思議の国のアリスの場面そのままですので、このMVでは不思議の国のアリスと鏡の国のアリスの両方をミックスしながら取り入れていることが分かります。
フラミンゴを模した弓でチェロを弾いているところも、クロッケーという競技でつかう木槌としてフラミンゴを使っている場面からの流用ですね。
そして、ちょっとヘンテコ感のある映像と、まったりしているというか、独特なメロディラインの楽曲との組み合わせが抜群で、この楽曲と映像の相乗効果で素晴らしいMVとして仕上がっています。
この楽曲が収録されている6thアルバム「Southern Accents」を聴いてみると、「Don't Come Around Here No More」とそれ以外の楽曲のテイストが違っていることが分かります。
それ以外の楽曲が、アルバム「Southern Accents」、直訳すると『南部なまり』というタイトルとマッチしており、逆に「Don't Come Around Here No More」だけが浮いているようにも感じるのですが、その理由は明白です。
このアルバムのプロデュースにはユーリズミックスのデイヴ・スチュワートが参加しているのですが、「Don't Come Around Here No More」はデイヴ・スチュワートとトム・ペティの共作となっており、デイヴ色が強い楽曲となっているため浮いているように思います。
実は、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズと私の相性はイマイチで、彼らの楽曲とMVではこの「Don't Come Around Here No More」しか視聴していないという現実があり、デイヴ・スチュワートとの相性が良いため、この楽曲とMVだけリピートしているということのようです。
そして、MVにもデイヴ・スチュワートは登場しており、最初の芋虫がデイヴとなっています。(この役も結構ハマっていますね)
この「Don't Come Around Here No More」は、不思議の国のアリスをモチーフにしているMVの中ではオススメなのですが、実は一番お気に入りのMVは他にあるのです。
それが続いて紹介する、不思議の国のアリスをモチーフにしたMVで一番お気に入りのこのMV。
グウェン・ステファニーの「What You Waiting For?」です。
このMVはイイ!
パラレルワールドの要素もありつつ、不思議の国のアリスに加えてオリジナルの要素を組み合わせたモリモリの映像に、疾走感がありパワフルな楽曲が高次元で融合し、唯一無二の傑作MVとして仕上がっています。
本当に素晴らしい!
グウェン・ステファニー(Gwen Stefani)はUSのアーティストですが、グラミー賞も受賞しているノー・ダウトというバンドのボーカルとして1986年から活動を開始し、そののちソロデビューして現在に至っています。
ソロデビューは2004年なのですが、そのソロデビュー1作目のアルバム「Love. Angel. Music. Baby.」からの1stシングル、つまりソロデビューシングルとして同年にリリースされたのが、この「What You Waiting For?」となります。
「What You Waiting For?」は、まず楽曲自体が素晴らしく、疾走感のあるメロディとステファニーの2つの音色を使い分けたボーカル、そして「チャレンジしなよ!」という前向きな歌詞、この3つが組み合わさり、何度聴いてもテンションが上がる楽曲となっています。
詳細な解説に入る前に、この楽曲の生い立ちを説明しましょう。
ノー・ダウトがグラミー賞を初めて受賞した2002年の翌年2003年が彼らの絶頂期とも言え、スーパーボウルのハーフタイムショーを務めたのちグラミー賞を再び受賞しているのですが、その2003年にステファニーは所属レーベルの意向もありソロデビューに向けて動き出すことになります。
しかし、『ソロとして活躍できるんだろうか...』、『ちゃんと曲が書けるんだろうか...』という不安に押しつぶされそうになり、なかなか一歩を踏み出せない中、プロデューサーであるリンダ・ペリーの「What You Waiting For?」(何を待っているの?)という投げかけから、この曲は生まれました。
つまり、『待っているんじゃなくて、自分から踏み出さないとダメじゃない?』という意図なのですが、このひと言で吹っ切れたステファニーは、この不安からの脱却のプロセスさらけ出す楽曲を制作し、無事ソロデビューを果たした...ということなのです。
そして、自分をさらけ出したソロデビューシングルこそ、この「What You Waiting For?」なのです!
では、「What You Waiting For?」の楽曲とMVを詳細にみてみましょう。
まず、上にも書きましたが、『待っているんじゃなくて、自分から踏み出さないとダメじゃない?』というメッセージがこめられた歌詞がいいですね。
これは、私の敬愛するアーティスト、マドンナの『自分らしく生きる』という生き方に通じるものがあるようにも思います。
また、その歌詞の歌い方にも特徴があります。
踏み出せずにいるステファニーと、そのステファニーを奮い立たせるもうひとりのステファニーを声を変えて歌っているのです。
そして、楽曲だけでなく、MVの映像でも対比が表現されています。
MVでは、まさに現実世界でソロデビューする曲が書けずに悩んでいる暗いステファニーと、不思議の国のアリスを模した違う世界でのステファニーが演じる白の女王や赤の女王がその対比となります。
その赤の女王が、これまたステファニー演じるアリスを涙の池に突き落とし、池の底に落ちてゆく中でアリスは吹っ切れて、お茶会のテーブルの上で踊りまくり、現実世界のステファニーもシンクロしながら吹っ切れて踊り出す...というまさしくパラレルワールドに同時に存在する主人公が影響しあっているかのような深みのある表現と言えるでしょう。
落語で「一人二役」(ひとりふやたく)という技法があり、声色(こわいろ)やしぐさを変えて複数の登場人物を表現するのですが、まさしくこのMVではその技法そのものですね。
このMVの凄いところはまだまだあります。
不思議の国のアリスの要素をしっかり盛り込みながらも、インパクトのあるオリジナルの要素も違和感なく組み合わされているところも秀逸です。
既出のもの以外では、不思議の国に誘(いざな)うウサギから始まり、フラミンゴや家の中で大きくなり手足が出ているアリスに加え、水パイプをふかす芋虫も出てきますが、その芋虫が噴き出す煙が『愛』の文字になるなど細かなギミック(仕掛け)もイイ味だしています。
そして、オリジナルの要素としては、なんと言っても日本人の女子4人組のバックダンサー「Harajuku Girls(原宿ガールズ)」の存在と、彼女たちがつぶやく『何を待ってるの?』、『あんたならできるのに』、『ほざくんじゃねぇ』という日本語の歌詞がインパクトを与えているものの、違和感が無いのが不思議なところです。
ステファニーは幼少時に両親の仕事の関係で何度か日本で暮らしたことがあるようで、その時に日本にリスペクトを受けたと語っており、特に原宿の女子のファッションがお気に入りだったため、そこから「Harajuku Girls」が生まれたようです。
日本文化がリスペクトされている様(さま)をみると、なぜかうれしくなっている自分に気が付き、やっぱり日本人なんだな...と思う今日この頃です。
また、更には『時間』というキーワードの使い方も面白いところです。
不思議の国のアリスでも時間というキーワードが随所に出てきますが、このMVでは最初の懐中時計が止まったタイミングからパラレルワールドに意識が飛び、またこのタイミングから始まる時計の音である『チック、タック』というバックコーラスが楽曲の特徴にもなっています。
これらのように、様々な意味のある要素が複雑に絡み合い、高いレベルで融合して素晴らしいMVが出来上がっているのです。
つまり、このMVは偶然できたスゴイMVではなく、綿密に計算されて制作された作品なのです。
『こんなスゴイMV、誰が作ったんだろう?』と思って調べたところ、フランシス・ローレンスという映画監督が作ったことが分かりました。
監督を務めた映画の中では、キアヌ・リーブスのコンスタンティンやウィル・スミスのアイ・アム・レジェンド、ジェニファー・ローレンスのレッド・スパローなどがお気に入りです。
映画だけでなく、MVでも私のお気に入りの作品をいくつも手掛けておられますが、この連載で過去に紹介したMVも含まれています。
参考までにリンクを貼っておきますので、ご興味ある方はご覧ください。
・1つ目はLet's Get It Started⇒ブラックアイドピーズの特集だ!
・2つ目はBad Romance⇒レディーガガの特集だ!
しかし、この「What You Waiting For?」のMVは本当によくできています。
まだまだ解説したい内容はたくさんあるのですが、最後に2つだけ追加で説明して終わりにしましょう。
まずひとつ目は、現実世界のスタジオでトランス状態になっているステファニーが歌っている時のこと、スタジオのマイクやミキサーが自動で動いて録音を始める...というシーンです。
これは、人知を超えた何かの力(ちから)が動かしていると考えられますが、ステファニーの潜在意識、あるいは潜在能力により自ら動かしているとも捉えることができます。
ふたつ目は、同じく現実世界のスタジオでトランス状態のステファニーが歌うと同時に、グランドピアノの上にある楽譜の白い紙面にその歌詞が自動で書き込まれていく...というシーンとなります。
これは、ステファニーが思いついた歌詞が自動で記録されているという捉え方もできますが、ここでは逆にスタファニーに何かが降りてきている、つまりステファニーが依り代(よりしろ)となり人知を超えた何かがメッセージを記録しステファニーに歌わせているとも考えられます。
北の国からの脚本を書かれた倉本聰さんは、その脚本はご自身が考えて書いたのではなく、何かが発するメッセージを代わりに書いているだけだ...とインタビューでこたえられており、まさしくそれに近いものがこのシーンでは描かれているように思えてなりません。
この2つのシーンにより、MVに深みを与えつつ、誰しもが無限の能力を持っているというメッセージと、人知を超えた力(ちから)とヒトとの関係性を示唆しているとも思われます。
以上が今回の内容ですが、オマケで1つ、MVを紹介させてください。
今回の「不思議の国のアリスをテーマとしたMV」を企画するきっかけになったMVがあるのです。
それが、以前この連載で紹介したコチラのMV。
Tommy february6の「Bloomin’!」です。
ウサギにトランプと、まんま不思議の国のアリスですね。
以前の連載で、この「Bloomin’!」を紹介した際、『不思議の国のアリスをモチーフにしたMVでは、もっとスゴイのがあるので、特集を組もう!』と思い立ち、今回の企画となった次第です。
ちなみに、「Bloomin’!」を紹介した以前の回もオススメですので、ご興味のある方はご覧ください。(以前の回はコチラ⇒「知らなかった、川瀬智子とストロベリースウィッチブレイドがつながっていたなんて!」)
さて、今回の「不思議の国のアリスをモチーフにしたMV」はいかがでしたでしょうか。
オマケの「Bloomin’!」も含めて3つともオススメですが、やっぱり一番のオススメはグウェン・ステファニーの「What You Waiting For?」です。
何度観ても素晴らしく、かつ前に進む勇気をくれるMVですので、未見の方はぜひご覧ください。
ではまた次回に。
