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ガラケーの意味って知ってる?~カーナビ ガラパゴス化編~|宇宙一わかりやすく解説|GPSの基礎の基礎#6

今回からはGPSってこんなことに使われているよ。という話を中心に語っていきたいと思います。
第一回は、カーナビ。
GPSと言えば、誰でも最初に思い浮かべるのがカーナビだと思います。
え?思い浮かべないですか??
私はカーナビの歴史は、日本におけるGPSの歴史そのものと言っていいくらいだと思っています。というわけで、少し主題とズレてしまうかもしれませんがご容赦ください。


ガラケーとカーナビの関係

突然ですが、みなさん”ガラケー”はわかりますよね?
まだ使っている、という人もいるかもしれませんが、ほとんどの人はガラケーではなくスマホを使ってるでしょう。

では、”ガラケー”の言葉の由来はわかりますか?
”ケー”はケータイ(携帯)の略であることは想像がつくと思います。
では”ガラ”は何でしょうか?
”柄”でしょうか?

正解は”ガラパゴス”の略です。

実は、これ意外に知らなかったという人が多いんじゃないでしょうか?
”ガラケー”とは”ガラパゴスケータイ”の略、つまりガラパゴス化した携帯電話のことなんです。

では”ガラパゴス化”とはどういう意味があるかわかりますか?
ガラパゴス諸島が由来です。
ガラパゴス諸島は周囲と隔絶された絶海にあったことで、他の大陸や島々の影響を受けることなく、独自の生態系を築いて生物が進化していました。ダーウィンが進化論を提唱するヒントになったことで有名ですよね。

そして”ガラパゴス化”とは、ガラパゴス諸島になぞらえた日本で使われるビジネス用語。日本市場に適合するように進化し過ぎた結果、世界から孤立して取り残されてしまった状態を揶揄した表現なんです。

さて、なんでガラケーの説明をしたかと言うと、”ガラパゴス化”という言葉を使いたかったからです。
日本でガラパゴス化してしまった事例というのはたくさんありますが、その代表例が”ガラケー”なんです。
そして、ガラケーの次の代表例と言っていいのが”カーナビ”なんです。

本題に入る前の説明でずいぶん長くなってしまいました。
では、カーナビはどのようにして日本でガラパゴス化してしまったんでしょうか。
それを説明するには、まずカーナビの成り立ちから語らないといけません。

最初のカーナビはGPSを使ってなかった

世界初のカーナビと言われているのは、ホンダが開発した「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」と言われています。

発売は1981年。
前の記事でも書きましたが、GPSが民間で利用できるようになるきっかけとなった大韓航空機撃墜が1983年なので、まだ誰もGPSなんて言葉すら知らない時代のことです。

GPSもないのにどうやって?というと、慣性航法というセンサーを利用した方法で実現していました。簡単に言うと、センサーで車が曲がった方向と移動した距離を検出して、地図上を移動していくというものです。

GPSを使わないので、自車位置の絶対的な座標がわからず、走行しているうちにだんだん地図とずれていってしまい、ドライバーが自分で修正する必要があったようです。

最初のGPSカーナビを発売したのも日本

GPSが無い時代から世界で初めてカーナビを実用化した日本。
GPSを使用したカーナビを世界で初めて実用化したのも日本の企業でした。

1990年に、パイオニアが「サテライトクルージングシステム」というネーミングで世界初のGPSを使用した市販のカーナビをリリース。同年にマツダからも、純正品としての三菱電機製GPSカーナビを搭載した車が発売されました。

実は、アメリカの国防総省が正式にGPSの運用開始を宣言したのが1993年。GPSが正式に運用開始する3年も前に、製品を発売してしまうなんてすごいですよね。
おかげで、当時はまだGPS衛星の数も少なかったので、カーナビが利用できる時間帯も一日に数時間だけだったようです。

GPSの弱点も克服!カーナビ先進国となった日本

1990年以降、日本国内では多くのメーカーからGPSによるカーナビが発売され、開発競争が加速していきました。
しかし、GPSには過去の記事でも説明したとおり、トンネル内では使えなかったり、都市部では位置が大きく外れたりするという弱点がありました。

そんな弱点を克服したカーナビが1993年にクラリオンから発売されました。
どうやって克服したかというと、GPSとジャイロセンサーと車速信号を合わせたハイブリッド方式を採用したのです。
つまり、ホンダの世界初のカーナビで使われていた慣性航法と組み合わせたということですね。

更にここにマップマッチングという技術を組み合わせることで、トンネルの中だってナビできるし、多少GPSの位置が外れても補正できるようになったのです。

  • ジャイロセンサー:角速度がかわるセンサー。車が曲がった方向が分かります。

  • 車速信号:車のスピードメーターなどで使われている信号。車の内部配線から直接取り出してカーナビに接続すると、文字通り車の速度が分かります。

  • マップマッチング:GPSによる位置を地図上の道路に合わせこむ技術。GPSで計測した位置が多少ズレていても、道路上に居るように補正されます。

以降、ハイブリッド方式によるカーナビが主流となり、日本国内ではカーナビのスタンダードとなって一気に普及。
その結果、GPSを運用しているのはアメリカなのに、GPS製品の世界市場では日本が7割近くのシェアを占めるという状況になりました。

ここまで聞くと、日本製のカーナビが世界市場を席捲していたかのように聞こえるかもしれませんが、実はちょっと事情が異なります。
日本製のカーナビを搭載した車が流通していたのは、ほぼ日本国内のみだったのです。

その時、世界では何が起こっていたか?

では、1990年代に日本で順調にカーナビが普及していった時、日本以外ではどういう状況だったのでしょうか?
実は、日本以外の国では、相変わらず地図を片手に運転するのが当たり前という状況がしばらく続いていました。

海外で日本のようなカーナビが普及しなかった理由はいくつかあるようです。
例えば、カーナビに必要な正確な電子地図は、当時はどこの国でも準備できるようなものではありませんでした。
アメリカでは、日本のように道路が複雑に入り組んだ都市がほとんどなく、そもそも地図を見て運転することすらほとんどなかったようです。
また、海外は日本のように治安が良くなかったので、高価なカーナビが車内に設置されているとすぐに盗難されてしまう恐れがありました。

ポータブルナビの登場で潮目が変わる!?

ところが2000年代に入ると、ヨーロッパを中心にPND(ポータブル・ナビゲーション・デバイス)という製品が注目を集め始めます。
ポータブルナビと言ったら分かる人がいるでしょうか。ナビゲーション機能に特化したスマホみたいなもので、使う時だけ吸盤でペタッと取り付ければカーナビとして利用できるといった製品でした。
それならスマホを使えばいいじゃん!と思うかもしれないですが、当時はまだiPhoneも発表されてない時です。

ポータブルナビ(PND)のイメージ画像

手軽なポータブルナビは持ち運びも容易で、使うときだけ設置すればいいので盗難される心配もありません。性能は日本のカーナビには及びませんが、価格はカーナビが20〜30万円は当たり前なのに対して、数万円程度と手ごろだったので欧米で一気に普及しました。

長らく、国内のカーナビ市場で国内企業同士でしのぎを削っていた日本のカーナビメーカー。気づいた時には、海外のメーカーが次々に新しい製品をリリースしている状態で、完全に流れに乗り遅れてしまいました。
それでも日本のメーカーからもポータブルナビは発売され、三洋電機の「ゴリラ」など、国内ではそれなりに認知されるようにはなりました。
しかし時すでに遅く、盛り上がりを見せるグローバル市場では、カーナビ先進国だった日本メーカーが存在感を発揮することはなかったのです。

これがカーナビがガラパゴス化の代表例の一つ、と言われるようになった顛末です。

カーナビだけでは済まなかったガラパゴス化の影響

でも実は、それだけではありません。
日本で実用化されたハイブリッド方式のカーナビは完璧と言っていいものでしたが、ジャイロセンサーと車速信号による補完がとても優秀だったため、肝心のGPS受信機としての性能は多くは求められませんでした。

実際、最初の位置さえGPSで計測できれば、後はGPSが無くてもナビとして十分成立するくらいでした。
そのため、ソニーなどの日本の半導体メーカーが一時はシェアを握っていたGPS受信機の心臓部となるGPSチップも、長らく新しい製品の開発が停滞したままでした。

一方で、ポータブルナビは車から情報に頼らずナビゲーションを行う必要があるため、GPS受信機の性能が非常に重要でした。その上、”ポータブル”という名の示す通り、携帯性を求められる機器なので小型化も重要な要素でした。

そういった状況のもとで、海外のベンチャー企業を中心に技術的な革新が起き、小型で高性能なGPSチップが次々にリリース。
ここでも、日本の名だたる半導体メーカーは乗り遅れ、GPSチップというGPS市場の主役の座を完全に奪われてしまったのです。

それで結局どうなったの?

ポータブルナビの市場はその後も成長が期待されていましたが、皆さんもご存じのように2000年代終盤になってスマホという超強力なゲームチェンジャーが登場すると、すべてが変わりました。
スマホでナビが出来るようになると、ポータブルナビはあっという間に取って代わられ、存在感を失っていきます。

しかし、ポータブルナビ市場の盛り上がりがきっかけで開発された小型で高性能なGPSチップは残りました。
2000年代まではカーナビかポータブルナビくらいにしか使われていなかったGPSは、2010年代以降になっていろいろな用途の製品に使われるようになり、一気に市場が拡大。そういった製品では、小型で高性能なGPSチップが欠かせない存在となったのです。

日本式のカーナビも、その後ゆっくりと欧米にも広がっていきましたが、すでに日本の半導体メーカーにかつてのような勢いはありません。現在のカーナビの内部は、完全に海外メーカーのGPSチップに置き換わっていることは言うまでもありません。


カーナビをめぐる日本の栄枯盛衰、みたいになってしまいましたね。
今回の内容は、私自身の仕事の経験とも深く関わる内容でした。なので、記事を書きながら、当時私が感じたことを改めて振り返って確かめなおしたりする中で、新たな気づきなどもあったりして。。

そんなこんなで記事を書き上げるのにもずいぶん時間がかかってしまいました。
ちょっと難しめな内容もあったかもしれないですが、最後まで読んでくれた方、どうもありがとうございます。

次回からはもう少しライトに、引き続きGPSが他にもこんな用途で使われてるよ、という話を中心に解説していきたいと思います。

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