二種の「たまり」醤油でつくる軽やかなスイーツ(オリジナルレシピ3点)
醤油の味には、個性があります。香り華やかなもの、どっしりと旨みがつまったもの、甘みがしっかり感じられるものーそれぞれが持つ一番の強みをスイーツに取り入れることで個性をより表現できるのではないかと試みました。
今回使う醤油は、いずれも東海地方でつくられる山川醸造さんの「みのび」(タイプ:たまり醤油)と日東醸造さんの「しろたまり」(タイプ:白醤油)。旨みの濃さが特徴のたまり醤油、色が淡い白醤油はいずれも東海地方で伝統的に使われてきた醤油で、私も二年前に愛知に越してくるまでは全くなじみがありませんでした。しかし使えば使うほどに替えがきかない魅力を持っていることに気づかされ、料理によって醤油を使い分ける楽しみを教えてくれた醤油でもあります。今回のレシピはバターなどの乳製品を使わずとも醤油を取り入れることで軽やかなまま風味豊かに、簡単に作れることにこだわっています。新たな醤油とのときめく出会いになりますように!
「たまり香るソイティラミス」

朝から食べられる軽やかなティラミスを作りたいと思いメインの材料をお豆腐に。豆乳グルトの酸味、メープルシロップの甘みを加えたクリームに「しろたまり」を一さじ加えてぐっとチーズっぽさを。底のビスケットに染みこませたたまり醤油「みのび」のコクが全体を引き締めます。
材料
充填豆腐(150g)-1パック
豆乳グルトー200g
メープルシロップ-大さじ1
「しろたまり」-小さじ1
ビスケットー適量
(ここでは北陸製菓さんのハードビスケットを7枚使用)
「みのび」ー小さじ2
きな粉ー 適量
1.ボウルを重ねたザルにキッチンペーパーを敷き豆乳グルトを載せ、軽く包んで重しをのせて2時間弱水切りする。総量は200g→100gに減る。
2.充填豆腐を別のボウルにあけ、泡立て器で勢いよく混ぜて全体をペースト状にする。水を切った1の豆乳グルトを混ぜ合わせたらメープルシロップ、しろたまりを加えて味付けしクリームの完成。
3.小皿にみのびを注ぎ、ビスケットの両面を1枚ずつ軽く浸してタッパーやバットなどの容器に敷き詰める。ビスケットを割ってもよいので、なるべくすきまなく詰めるとおいしい。
4.敷き詰めたビスケットの上に2のクリームを載せ、ゴムベラなどで表面を軽くならして、冷蔵庫で2時間以上置いてなじませたらクリームが軽く固まってムース状になるので完成。皿にとりわけたら、表面にきな粉をたっぷり振って仕上げる。
醤油を2種も使ってしょっぱくならないのか、と心配になるかもしれませんが豆腐クリームに入れた「しろたまり」はクリームチーズを思わせるようなコクを出しながらすっと溶け込み、ビスケットにしみこませた「みのび」はどこかカラメルっぽい風味をプラスしてくれて全体をさりげなくまとめあげています。豆腐とは思えない味わいだけど、いくらでも食べられそうな軽やかさです。
「しろたまりカスタード」

ティラミスでは隠し味的に使ってみたしろたまり。醤油全体のわずか1%の製造量とと言われるレアな「白しょうゆ」の一種で、東海地方で使われてきた力強い旨みと濃い色が特徴的な「たまりしょうゆ」の対極として誕生した歴史があります。素材やだしを引き立てるためのプロユース調味料として活躍してきたこともあり、あらゆるジャンルの料理となじみがいいため黒子的ポジションになりがち。でもそのままなめても美味しいぐらい、小麦から引き出された甘みとコクがぎゅっと詰まった味わいをもっと前面に感じてほしい!と思い、しろたまりの味わいを具現化したようなクリームをつくりました。
材料
卵黄 1個
牛乳(豆乳などお好みのミルクで)150㏄
小麦粉(米粉でもOK)大さじ1
砂糖 25g
しろたまり 小さじ2
※自然な甘みのあるオーツミルクを使うと砂糖を省いても美味しくできます!(私はプリマヴェーナ バリスタズオーツミルクを使いました)まさに麦由来の甘み100%に!
1.ボウルで卵黄を溶きほぐし、砂糖、小麦粉、しろたまりの順に加えながら泡立て器でよく混ぜる。
2.小鍋に牛乳を注ぎ、弱火にかける。鍋のふちがふつふつとしてきたら火を止め、1に少しずつ注ぎながらよく混ぜる。
3.茶こしで2をこしながら鍋に戻し、ゴムベラで絶え間なく混ぜながら弱めの中火にかける。底から混ぜたときになべ底の1/3が見えるぐらいにとろみがついたら火からおろし、耐熱容器などに移して完成。粗熱がとれたら冷蔵庫へ。

あたたかいできたてをパンにのせてもおいしい!
そのままなめるとしっかりしろたまりの風味と塩気が感じられ甘じょっぱめさが楽しめるクリームなのですが、フルーツやあんこなど他の素材と合わせると味の輪郭を引き立たせるようにさりげなくなじむのが不思議でしろたまりらしいな、と思うポイント。タルトやシュークリームなど様々なスイーツに取り入れても美味しそうです。卵としろたまりは相性の良い素材で、オムレツやゆで卵などにもよく使っているのですが、甘くしてもとても合うことは新たな発見でした。
「みのびの米粉フィナンシェ」

カスタードを作ると余ってしまう卵白問題は、さっとフィナンシェを作ってしまえば解決。ここで活躍するのがもう一つのたまり、「みのび」です。
「みのび」の持つ大豆由来の力強い旨み、深い香り、そして濃い色がバター不使用とは思えない風味の良さに仕上げてくれます。せっかくグルテンフリーのお醤油なので、小麦粉を使わずに作ってみました。
材料(ミニフィナンシェ型8個分)
卵白 1個分
砂糖 25g
太白ごま油 25g
アーモンドプードル 15g
米粉 15g
ベーキングパウダー 1g
くるみ(刻んだもの)2g
「みのび」小さじ1/2
※オーブンは180℃に予熱する。
1.卵白をボウルに入れ、泡立て器で砂糖をすりまぜる。太白ごま油を加え、さらさらになるまでよくすりまぜる。
2.アーモンドプードル・米粉・ベーキングパウダーを重ねるようにボウルに加え(米粉は粒子が細かいのでふるわなくてOK)、ゴムベラでよく混ぜる。
3.刻んだくるみの半量と、みのびを加えてよく混ぜる。
4.型に流し入れ、残りのくるみを均等に散らす。オーブンに入れ、180℃で20分ほど加熱する。
生地に醤油を垂らした瞬間は色が一気に濃くなりますが、焼き色は自然なキツネ色に。ほんのりと香る醤油は塩キャラメルのような風味をもたらしてくれます。フィナンシェに欠かせなかったバターのコクは、植物油×たまり醤油でも再現できるんです!

シリコンのカヌレ型を使って焼いても可愛いです。もっと甘じょっぱさを感じたい!という方には、クリームチーズをちょこんと載せて追い醤油をかけるのもおすすめ。お酒のアテにもいけそうな味わいに。
「みのび」「しろたまり」の味わいの秘密は?
そろそろこのお醤油たちは何者なのか気になって来た頃でしょうか。初めて味わうと、こんな醤油もあるの!?と驚くこと間違いなしの「みのび」と「しろたまり」。味わいも作り方も対照的ですが、選び抜いた材料と木桶仕込みへのこだわりは共通しています。大好きな二つの醤油を蔵に伺って学んできたので、最後に少しご紹介させてください!
みのびーこれぞ「ソイ・ソース」!大豆の旨みの濃厚エキス。
岐阜県岐阜市、山川醸造さんが木桶で醸すたまり醤油の原料は岐阜県産大豆・食塩・長良川の伏流水。大豆に豊富に含まれるたんぱく質は旨みの元となるため、大豆100%で仕込むことで濃厚な旨みに仕上がることかつグルテンフリーであることも強み。

一般的な醤油が大豆・小麦などの原料10に対し15の水分で仕込むところ、山川醸造さんのたまり醤油は10:10で仕込む「十水仕込み」。水分量が少ないため攪拌も一苦労で、豆みそのような固いもろみの中に立てた木製の筒から上がってくる水分をかけて混ぜる「汲みかけ」を繰り返すこと二年。木桶の中で熟成されたもろみを掘り出し丁寧に圧搾したものが「みのび」に。口当たりはやわらかく大豆の旨みがこれでもかと詰まった味わいに仕上がっています。

創業当時に酒蔵から譲り受け80年以上使い続けてきた木桶は寿命を迎え始めているものもある中、近年クラウドファンディングを成功させて新たな木桶も導入。蔵を訪れた日は年に二度開催される「たまりや蔵開放」の日で、たまり醤油を使った料理や体験を楽しむ方で賑わっていました。と丁寧な作りを続けていらっしゃることはもちろん、迎え入れてくださった蔵の方々のにこやかさからも山川醸造さんが愛される理由を感じます。
しろたまりーまるで小麦のシロップ!甘みと旨みがギュッと。
黒に近い濃いカラメル色をしている先ほどの「みのび」とは対照的に、淡い黄金色が特徴の白醤油。料理を美しく仕上げるための命でもある淡い色を保つため、大豆はなるべく使わず高い塩分濃度発酵にブレーキをかけ、火入れをせず濾過とアルコールで味を保つという色が濃くなる要因を徹底的に取り除いた造りはとても特徴的です。

なかでも「しろたまり」は、塩気の強さから一般家庭では使いづらいとの意見もあった白醤油の旨みと甘みを高めるため、古来の麦醤の製法を参考に原料を一から見直して作られたもの。大豆は一切使わず、小麦を愛知県産100%に、塩もミネラルたっぷりの自然海塩「海の精」を使うことで風味を向上。さらに美味しい仕込み水を求め、日東醸造さんの本社がある碧南市から60㎞も離れた豊田市足助に構えた「足助仕込蔵」で作られています。澄んだ空気と美しい清流に囲まれた、元校舎を改装した木桶が並ぶ蔵にも心地よい空気が流れていました。蔵の裏の井戸で汲み上げた柔らかな味わいの「足助の水」はもちろん、この環境も味を作っているのだなと実感。

色がつかないギリギリまで木桶で熟成させることで円熟味のある味わいに仕上げたしろたまりは甘みとコクがたっぷり。「木桶によって出来上がる醤油の味が少しづつ違うのも楽しい、いずれ個性も評価される時代になれば」と蜷川社長が愛おしそうに語られていたのも印象的でした。
醤油の味の多様性には夢がある
今回は両者が持つ個性をスイーツを通してわかりやすく表現できればと試みましたが、様々な料理に使ってもとても楽しいです。「みのび」はかけるだけでも料理をごちそうに仕上げるパワーがあり、ラーメンなど濃い旨みが欠かせない料理にも取り入れると便利。「しろたまり」は和食に限らずパスタやフォーなど料理のジャンル問わず味の骨格を作ってくれる不思議な醤油で、しろたまり料理のレパートリーは毎日増加中です。
そしてこの二本の味の違いにとどまらず、日本全国にある醤油はそれぞれ味が違い個性を活かして使い分けていくととっても楽しいのです!何本あっても使い方には困らないし、日々食べる豆腐やサラダに汁もの・・・色々な料理を楽しくしてくれるので料理に行き詰った時、おいしそうだなとときめく醤油を一本迎え入れてみるのはおすすめです。
これからも研究を続けて醤油の個性を活かした楽しみ方からその背景まで届けていきたいと思います。皆さんのとっておきに出会えるお手伝いができますように!
(醤油14本の味とそれぞれのおすすめレシピを紹介したZINEも作りました、気になった方はぜひ!)
