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#不登校 「ロクな大人になりませんよ」担任は母に言った。


「このままだと、ロクな大人になりませんよ」

担任の先生は、僕にではなく母に言った。

市営団地の狭い部屋。

僕はシャワーから出たばかりで、着替えも取りに行けず、そこに立っていた。

母はうつむいたまま、言い返さなかった。

僕のせいで母が責められている。

7歳の頭でも、それだけはわかった。

まだ「不登校」という言葉はなく、学校に行かない子どもは「登校拒否」と呼ばれていた。

その翌年の1986年から、僕は完全に学校へ行かなくなった。

あれから40年。

学校に行かないと、「ロクな大人」になれないのか。

その答え合わせを、ここから始めたい。


なぜ学校に行かなくてはいけないのか

7歳のころ、僕は学校を休みがちだった。

理由を聞かれても、うまく答えられなかった。

ただ、どうしてもわからなかったのだ。
なぜ学校に行かなくてはいけないのか。

周りに、学校へ行かない子はいなかった。

担任は何度も家に来た。教員になったばかりの、まじめな女性の先生だった。

まじめな人ほど、休む子どもを放っておけなかったのだと、いまなら思う。

その日も、先生は母に迫った。

「まさあきくんは、どうして学校に来ないのでしょうか」
「ちゃんと行かせてください」

狭い部屋で、母はずっと責められていた。
そして、あの言葉が来た。

「このままだと、ロクな大人になりませんよ」

僕の頭の中が、しんと止まった。

学校に行かないと、ロクな大人にならない。

学校に行けば、ロクな大人になれる。

本当だろうか。

よくわからなかった。

わかったことは、ひとつだけだった。

僕のせいで、母が傷つき、うつむいている。


ロクな大人じゃないのは、どっちなんだ

あとになって、「ロク」の意味を調べた。
まっとうな、しっかりした、という意味だった。

なら聞きたい。

まっとうな大人は、子どもの目の前で、その子の母親を責めるのだろうか。

ロクな大人じゃないのは、どっちなんだ。

でも、母は言い返さなかった。

もしかすると母も、信じていたのかもしれない。
「学校に行かない子」は、ロクな大人になれないと。

だから、あんなに必死に僕を学校へ連れて行こうとしたのかもしれない。

子どもの頭では、そこまでしか考えられなかった。

代わりに、僕にはひとつの宿題が残った。
学校に行かない僕が、学校に行く理由を探すこと。

誰も納得できる答えをくれないなら、自分で探すしかなかった。


僕は「ロクな大人」になれたのか

あれから40年がたった。

僕はいま、あの日の先生より、たぶん年上になっている。

学校にはほとんど行かないまま、大人になった。
履歴書の学歴の欄は、いまも少なめだ。

それでも働いて、税金を納めて、生きている。

それでも。

僕は「ロクな大人」になれたのか。

正直、自分ではまだ採点できていない。

だから、この連載を始めることにした。

学校に行かないと、「ロクな大人」になれないのか。その答え合わせを、40年後のいまから始める。

やることは、答え合わせだ。

あの日の言葉を問題用紙にして、そのあとの人生を突き合わせていく。

うまくいったことも、痛かったことも、隠さずに並べる。


夜、この画面を見ているあなたへ

夜、この画面を見ているあなたも、誰かの言葉に刺されたことがあるかもしれない。

学校に行かせないと、この子はどうなってしまうのか。

その不安は、夜のほうがふくらむ。
特に日曜の夜は。

先に約束しておきたい。

この連載は、学校に行くべきだとも、行かなくていいとも言わない。

行っても行かなくても、子どもが生き抜けるようになるには何が要るのか。

それを僕の「1986年から始まり、義務教育を2年で終えた、不登校人生」を使って、確かめていく。

学校に行かないと、ロクな大人になれないのか。

あの日の先生に、いつか読んでほしい答え合わせを、来週から続けていく。

【40年後の僕から】

この回を書きながら、気づいたことがある。

先生を恨む気持ちは、もうほとんど残っていなかった。
あの人も新任で、たぶん必死だったのだと思う。

ただ、あの日の母のうつむいた顔だけは、40年たっても消えない。

この連載は、あの顔への、40年越しの返事でもある。


★「ロクな大人」になったかどうか、40年後の答え合わせ

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「お子さん、今日も学校に来ていません」



◆この連載について
8歳で学校をやめ、義務教育2年のみで育った著者が、40年後のいま検証する「生き抜く力」の育て方。書籍化を前提に執筆中。

不登校、社会からの圧力。
大人になった時のすばらしさ、苦しさ、現実。
ありのままをお伝えします。

この連載は実体験に基づいています。
プライバシー保護のため人物は仮名にし、記憶をもとに一部を再構成しています。

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