いい履歴書の書き方
《「就活」と世間が騒がしくなるタイミングが年々早くなっている気がする》と日記に書いたのは、2004年2月20日(金)のこと。
日記のタイトルは「いい履歴書の書き方」。
あれから22年。そんな前から「就活」と呼んでいたのかとちょっと驚いた。
シューカツという言葉がなかった頃
「就職活動」を略して「就活」と呼ぶようになったのは、就職氷河期を経た1990年代後半から2000年代初頭らしい。
わたしが就職活動をしていたのは氷河期に差しかかる少し前なので、「就活」という呼び方はまだしていなかったし、大学4年生になるまでは就職のことを何にも考えてなかった。
《「就活」と世間が騒がしくなるタイミングが年々早くなっている気がする》と日記に書いた2004年当時は大学3年生のうちに動き出すのが主流になっていて、デパートのスーツ売場では年明けから就活コーナーができていた。
時は流れて2026年。今はインターンと称して学生のうちに企業で社員体験をして、そのまま内定につなげたりする時代らしい。
友人のお子さんたちもインターンに忙しい。時期をずらして何社にも行っている。お見合いの後、しばらくお付き合いしてから結婚するかどうか決めるように、就職先も相性を見極めてから決めたほうが円満な関係が長続きするのかもしれない。
日記を書いた2004年当時は、マッキャンエリクソンという広告代理店でコピーライターをしながら脚本を書き、「いまいまさこカフェ」というサイトを持っていた。ある日、掲示板に今年就職活動だという学生さんから書き込みがあった。そういえばと会社の引き出しを探り、古いプリントアウトを掘り出し、内容を紹介した。
それが「いい履歴書の書き方」だった。
たしか入社して3年目ぐらいに書いたものだった。「今井は面倒見がいい」と評判にを取り、いろんな大学の学生のOB訪問がわたしに回ってきた。やって来る学生(美大生が多かった)の中に「履歴書の書き方がわからない」という人が多く、実際に書いたものを見せてもらったり、一緒に空白を埋めたりした。
今だったらネット検索で「いい履歴書の書き方」を調べて解決するが、インターネットは今みたいに普及していなかった。
毎回同じことを聞かれ、同じことを答えるので、紙にまとめて渡すことにした。
「自分らしい履歴書を書けました」「自分を見つめるいい機会になりました」といったお礼状が届いたので、ある程度は役に立ったのだろう。
その内容がこちら。
いい履歴書の書き方
履歴書は、あなたを売り込む「広告」です。
あなたの代わりに、あなたを知らない人たちに、あなたを欲しいと思わせる。売れ行きは、書き方次第です。
印象に残るのは、百人に一人か二人。
読み手は、何千通もの履歴書を、仕事の合間を縫って読む人たち。あなたのを読むのにかける時間は、長くて5分と考えましょう。
面接=店頭。客(面接官)を釣る餌をばらまいておきましょう。
広告だけを見て商品を買う人がいないように、履歴書だけでは採用されません。履歴書ですべてを語ろうとせず、「ここを突っ込んで欲しい」という部分を強調しておく。そうすれば、面接でちゃんと聞いてくれます。
(逆に、焦点のぼやけた履歴書だと、とんちんかんな質問をされて失敗する)
各項目ひとことで言いきる、つまり、キャッチフレーズを書く気分で。
同じことでも、書き方ひとつで魅力もインパクトも変わります。
「友人と作った野球同好会で四年間エースとして活躍しました」と書くより「草野球界の野茂英雄」とネーミングしたほうがユニークで覚えやすい。「誰が見てもほのぼのする、温かくてヒューマンな人間関係をドラマにしたい」のなら、「日だまりのような人間ドラマを描きたい」と凝縮させて余韻を残します。
まず、言いたいことを紙に書く。
どんどん書く。その中で、とくに言いたいことを絞っていく。書けば書くほど自分という商品のウリが見えてきます。
最後に残ったもの=エッセンスを履歴書に書けばいいのです。(この作業は、一時間やそこらじゃ、できないはず)
できあがったら、広告としての出来をチェック。
① 短く歯切れがいいか。(気持ちよく読めるか)
② わかりやすく具体的か。(商品イメージがわくか)
③ 書いた人らしさが出ているか。(他の商品=ライバルと差別化できているか)
④ もっと知りたくなるか。(もうひと押しで買ってもらえそうか)
Good Luck!!
30年経って読み返してみて
入社3年目頃に書いたということは、1996年あたり。日記を書いた2004年よりもさらに前。そこから30年も経っている。
古びてしまったか、はたまた熟成したのか、読み返してみると「客(面接官)を釣る餌」など煽っていたり、ずいぶん盛ってるなと思う部分もある。
「一人で履歴書千通見る」というケースは稀で、普通は手分けする。
紙に手書きからネットからエントリーになった今、採用側に届く履歴書(エントリーシート)は桁違いに増えているだろう。人間が一通ずつ読んでいては追いつかない。NotebookLMに読み込ませてエクセルに落とし込んで、キーワード検索でふるいにかけたりしているのかもしれない。
職種によっては「キャッチフレーズにする必要なし」なところもある。キャッチフレーズなんてつけたら逆効果な会社もあるだろう。そのまま真似するのは危なっかしい。お見合いもそうだが、「相手を見て、出方を決める」のが大事。
時代は変わったし、情報はいくらでも手に入るようになったが、自分の持っているものをどんどん書き出す作業の中で「自分の売り」が見えてくるというのは、就職活動するすべての人にあてはまるのではと思う。
履歴書の書き方は、自分の見つめ方。高校や大学の志望理由書にも通じる。
就活は履歴書や面接で相手を口説くこと。当時と比べて今は「解像度」「言語化」がもてはやされている。自分を的確に喩えるワードを探している人には「タトエール」noteが参考になるかも。
余談だが、「履歴書(エントリーシート)」や「企業担当者向けのメール」をAIに書かせている学生が増えているのを実感していると読む側の担当者から聞いたときに「AI臭がするんですよ」と話していたのが面白かった。
「使う順序が逆じゃないですかね」とわたしは言った。
自分の売りを見つけるための壁打ちにAIを使うことは否定しないが、せっかく自分の言葉で練り上げた内容をAIに整えさせると、ギザギザがならされて引っかかりがなくなってしまう。雑味を消してデオドラントしたつもりがAI臭が鼻につくのは、もったいない。
わたしのシューカツ
ちなみにわたしは、自分のことを「全天候型お祭り人間」と名づけ、応援団で歌って踊った4年間をアピールし、「これまでは自分が踊って選手を励ました。これからは言葉を躍らせて商品や企業を元気にします!」と志望動機につなげ、広告を通してお茶の間にあったかい会話や笑顔を運びたいという意気込みを、「日本をチンしたい」というキャッチコピーで表現した。
もちろん突っ込まれた場合の会話は想定し、練習して面接に臨んだ。
「なるほど。応援団と広告代理店は似ているんですね」と面接官に言われ、「どっちもチンドン屋です」と答えたら、どっと受けた。笑ってもらい、内定ももらい、その会社に無事就職した。
クリエイティブ部のコピーライター職。数百人の応募から採用は一人という枠だった。一騎打ちになった最終面接の模様はnote「人生はオーディションの連続だ」に。「思えば入社試験もオーディションだった」と書いている。
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目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。