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MCR ギターの役割が逆転 主旋律を奪うリズムギター Summertime 考察


マイケミカル・ロマンス(My Chemical Romance)の4thアルバム『Danger Days』に収録されている『Summertime』。

Gerard Way(Vo.)自らが「妻へのラブソングである」と語り、歌詞でも「君がノイズを消してくれた」と平穏を手に入れた喜びが歌われる、バンド屈指の美しくノスタルジックな名曲だ。

しかし、この曲の「ライブ映像」を見たとき、私は強烈な違和感に襲われた。
ジェラルドがインタビューで伝える平穏な愛というメッセージと、実際にステージ上で鳴らされているギターのアレンジが、音楽的に完全に矛盾しているのだ。

あなたがもしただの綺麗なラブソングとしてこの曲を聴いているなら、一度立ち止まって、彼らのライブパフォーマンスにおける誰が、どの音を鳴らしているかに注目してほしい。そこに隠されているのは、綺麗事では済まされないロックバンドとしての生々しい業である。

1. リードとリズムの「異常な役割逆転」
まず、マイケミカル・ロマンスというバンドの絶対的なルールを思い出してほしい。
緻密なメロディやテクニカルなソロを弾くのは、音楽的支柱であるリードギターのレイだ。一方、フランクはリズムギターとして、衝動的で暴力的なコードをかき鳴らし、バンドにパンクの血肉を与える役割を担っている。
しかし、『Summertime』においては、この前提が根底から覆る

曲の幕開けを告げる、あの世界からノイズが消えていくような美しく繊細なイントロの単音メロディ。これを弾いているのは、技術のレイではなく、狂犬であるはずのフランクなのだ。

アコースティック・ライブの映像を見るとそれが顕著に分かる。フランクが祈るように美しい主旋律を弾き、レイは一歩引いて黙々と伴奏(リズム)に徹している。

アコースティックだから特別だったのか? いや、違う。2011年の「iTunes Festival」における通常のエレキセットでも、フランクが一人でこの繊細なイントロを弾き始めている

つまり、「この曲の始まりと終わりの最も美しいメロディは、レイのテクニックではなく、フランクの音でなければならない」という、バンドとしての強烈な意図(DNA)が最初から組み込まれているのだ。

2. 「愛についての歌」というMCの直後に鳴る音
前述した2011年のiTunes Festival。この日のパフォーマンスは、この曲が持つ特異性をさらに浮き彫りにしている。

ジェラルドは放送禁止用語を連発するカオスなMC (今までアルバムが出るまでずっと待っててくれてありがとう、ロックンロールを信じてくれてありがとう。ってことを繰り返し序盤言ってる(実際、前のTBPのアルバムから4年後にDanger Days が発表されてかなり時間がかかっている)中盤はジェラルドの口癖の過激ワードで規制音のオンパレードで全く本人の声が聞こえなくなっていて笑う) の果てに、こう叫んだ。

「Rock and roll, we live forever(ロックンロール、俺たちは永遠に生きる)」

そして一呼吸置き、「This song is about love, It’s called Summertime(これは愛についての歌だ。サマータイム)」と曲振りをする。

その宣言の直後、スポットライトを浴びて、誰よりも早くその愛のメロディをギターで紡ぎ出すのは、フランクだ。

ボーカルが個人的な平穏と愛を歌う曲で、なぜバンドで最もノイジーなギタリストが、その核となる旋律を独占しているのか。それは単なる伴奏ではない。地獄のようなツアーと精神的な摩耗を共にサバイブしてきた「戦友」としての、圧倒的な音楽的エゴと矜持の表れに見えてならない。

3. 「ノイズを消した」瞬間に爆発する、ディストーションの真意
そして、この曲における最大の音楽的矛盾であり、私が最も鳥肌が立ったポイントがここだ。
曲の前半、ジェラルドの歌声に寄り添うように、フランクのギターは透明感のあるクリーンな音色で弾かれている。しかし、サビに突入し、ジェラルドが「'Cause you stop the noise, and(だって、君がノイズを止めてくれたから。そして、)」と感情を爆発させるその瞬間

ライブではフランクは足元のペダルを踏み込み、ギターの音色をパンクバンド特有の「激しく歪んだディストーション(巨大なノイズ)」へと一気に豹変させるのだ。

普通に考えれば、アレンジとして完全におかしい。
「ノイズが消えた平穏な世界」を歌うサビなのだから、最後まで綺麗なクリーン音やアコースティック調で伴奏する方が、歌詞のメッセージとはリンクする。なのに、フランクはあえてそこで荒々しいノイズを爆発させ、曲全体を飲み込んでいく。

この矛盾したアレンジは、リスナーに強烈なメッセージを突きつける。
ボーカルが「外の世界からノイズが消えた」と歌い上げるその真横で、リズムギタリストが「俺たちがずっと鳴らしてきたこの巨大なノイズ(ロックンロール)こそが、不条理な世界からお前を守る壁だったんだろ」と、音の塊でアンサーを返しているような、ヒリヒリとする共犯関係だ。

ただのラブソングに収まらない、バンドの生き様
言葉(歌詞)では、安全な場所への逃避と平穏を歌うジェラルド。

しかし音楽(サウンド)においては、フランクの鳴らす激しい歪み
——かつて彼らが血を流しながら共に戦ってきた日々の象徴——
に完全に身を委ね、その爆音のノイズの中で溺れるように歌っている。

『Summertime』は、一人の男が平穏を手に入れた美しいラブソングであると同時に、マイケミカル・ロマンスという傷だらけのパンクバンドが、決して切り離すことのできない過去の痛みとノイズを抱えたまま鳴らした、極めて生々しいロックンロールの記録なのだ。

次にこの曲を聴くときは、どうかボーカルだけでなく、その横で鳴っているギターの矛盾した音色に耳を傾けてみてほしい。きっと、今までとは全く違う景色が見えるはずだ。

ここまで、ギターのアレンジとエフェクターの音色という音楽的な事実から『Summertime』の持つ矛盾とバンドの業を紐解いてきた。

しかし、この曲が抱える決定的な矛盾や不審点は、サウンド面だけではない。

ボーカルであるジェラルド・ウェイが紡いだ「歌詞」そのものや、公式のインタビュー映像の中にも、彼が用意した「平穏なラブソング」という建前を根底から崩壊させる、あまりにも生々しい証拠がいくつも残されているのだ。

• なぜ、結婚した妻への歌のはずなのに、時系列が全く合わない「6年間(Six years)」という数字が刻まれているのか?
• なぜ、「君のすりむいた膝(Your scraped-up knees)」という、泥だらけの共犯関係を示す残酷なレトリックが使われたのか?
• ジェラルドがインタビューで「これは妻の歌だ」と語った瞬間、隣で聞いていた相棒の身に起きた、痛ましいほどの「異常な心理的反応とは何だったのか?

音の矛盾に気づいてしまったあなたなら、もう引き返すことはできないはずだ。
言葉のレトリックと、映像に残された心理的証拠から、この曲の最も残酷で、血の通った真実を徹底的にプロファイリングしたもう一つの考察記事は、ぜひこちらから読んでほしい。

▼『Summertime』の歌詞が抱える致命的な矛盾と、泥だらけの真実について


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