世界一瞬旅行|お題【流れ星空港】
凍てつく空気のなか、緑や紫の光が夜空を波打っていた。
写真や映像で何度も見たはずなのに、思わず息を止めて見上げた。
スペインでパエリアを食べ、カプチーノ片手に早朝のニューヨークを歩く。
ウユニ塩湖では、足元の空を蹴って、頭上の空をつかもうと跳ねた。
幼い日から夢見た世界一周が、ようやく叶った。
旅の最後にたどり着いた名も知らぬ小さな島で、夕日に染まる海を眺める。
ここに家でも建てて、終の棲家にしようかな。
そう思った瞬間、肩を叩かれた。
「お客様、ご体験は以上です」
目を開けると、窓際の席に戻っていた。
「今のは?」
「あなたがあの一瞬に、いちばん強く願った夢をお見せしました」
時計の針は、ほとんど動いていない。
そのとき、機内にアナウンスが流れた。
「当機はまもなく空港に到着いたします」
窓の下で少年が空を指さした。
「あ、流れ星!」
少年は目を閉じ、何かを三度唱えた。
それを見た係員が小さくつぶやいた。
「あの子には、この便はまだ早いです」
(409文字)
あとがき
こんにちは、芽芽斗 守(めめと・まもる)です。
前回の「高校野球怪談」にも、たくさんのスキとコメントをいただきました。ありがとうございます。
先週に続き、田原にかさんが主催されている「毎週ショートショートnote」という企画に参加させていただきました。
今回のお題は【流れ星空港】です。
いかがでしたでしょうか。
「世界一瞬旅行」という題は誤字だと思われそうですが、気に入ったのでそのまま進めちゃいました。
創作に感想をもらえるのは、エッセイとはまた違う嬉しさがありますね。
今回の物語も少しでも刺さるものがあったら、スキを押してもらえると励みになります。
