「値上げしたら客が離れる」が怖い。飲食店の倒産最多ニュースから考えた、小さな店の発信【AI時代の仕事とnote】
この記事では、飲食業の倒産最多ニュースを入口に、小さな商売の値上げと普段の発信を考えます。客離れを恐れて価格転嫁できない背景には、価格以外の判断材料が伝わっていない問題があります。値上げの告知文で説得するのではなく、普段から仕事の背景や手間を「記事棚」として蓄積し、価格以外で選ばれる理由を整える方法を整理します。
いつもの定食屋さんで「来月から50円値上げします」という貼り紙を見かけました。
申し訳なさそうに頭を下げる店主と、「今までが安すぎたんだよ」と笑う常連さんのやり取りに、少し胸が温かくなりました。
けれど、すべての店がそうやって笑って値上げを受け入れてもらえるわけではありません。
むしろ、客離れが怖くてどうしても値上げに踏み切れない店のほうが、圧倒的に多いはずです。
ネタリエの綿樽剛です。
小さな商売のnote発信をサポートしています。
この連載『AI時代の仕事とnote』では、技術や環境が激しく変わる時代に、小さな商売が自分の言葉で仕事を残し、読者と信頼を育てる方法を考えています。
今回は、飲食店をめぐる厳しい倒産のニュースから、小さな店が普段から蓄積しておくべき「発信の役割」について考えてみたいと思います。
8月最多の飲食店倒産から考える、「なじみの店」ほど値上げできないジレンマ
東京商工リサーチのデータによると、2026年8月の飲食業倒産は80件に達しました。
前年同月比で42.8%の増加となり、8月単月としては過去30年で最多を記録しています。
さらに、2026年1月から8月までの累計も701件にのぼっています。
これは年間最多だった2025年の1,002件を上回るペースであり、飲食店の苦境は一時的なものではありません。
テレビ朝日の報道によると、倒産した事業者のうち資本金1,000万円未満の小規模事業者が9割以上を占めています。
倒産原因の多くは「販売不振」で、全体の65件を占めていました。
背景にあるのは、止まらない食材費、光熱費、そして人件費の上昇です。
本来であればコストの上昇分を価格に転嫁しなければ、商売を維持していくことはできません。
しかし報道では、客離れを恐れるあまり値上げできずに追い詰められる「なじみの店」の姿が指摘されていました。
私が強く引っかかったのは、まさにこの「なじみの店」という言葉でした。
大手チェーンであれば、全店一斉の価格改定のお知らせを出し、淡々とシステムを更新することもできます。
けれど、店主とお客さんの距離が近い小さな店では、そう簡単にはいきません。
「いつも来てくれているあの人に、値上げして申し訳ないな」
「高くなったと思われて、足が遠のいてしまったらどうしよう」
「近所にはもっと安いチェーン店があるのに、うちを選んでくれるだろうか」
お客さんとの距離の近さは、小さな商売にとって最大の強みであるはずです。
しかし価格改定の場面では、その親しさがかえって値上げの決断を鈍らせる重石になってしまうことがあります。
「値上げの技術」ではなく、普段から価格以外の判断材料があるか
もちろん、最初にひとつだけ断っておきたいことがあります。
それは、「noteやSNSを書きさえすれば倒産を防げる」という話では決してないということです。
原材料費やエネルギーコストの高騰は、発信の工夫だけで解決できるような生易しい問題ではありません。
商売の構造そのものに関わる、極めて重い現実です。
それでも、値上げという価格転嫁が避けられなくなったとき、店によって大きな差が生まれます。
「高くなったから別の店へ行こう」と価格だけで離れてしまう店と、「この店なら、この値段でも通い続けたい」と思ってもらえる店です。
その差を生み出すひとつの要素が、普段からお客さんの手元に残されている「情報」の差です。
価格だけで比較されている状態は、小さな店にとって極めて危険です。
たとえば、いつも食べているラーメンが800円から950円になったとします。
数字だけを見れば、誰にとっても単なる「150円の値上げ」でしかありません。
もしその店について「800円のラーメン屋」という情報しか知らなければ、150円の負担増はそのまま不満や離脱につながります。
近所にある800円の別の店へ移ってしまうのも無理はありません。
けれど、その店がなぜその材料を選んでいるのかを知っていたらどうでしょうか。
毎朝どんな仕込みをしているのか、店主がどんな思いで出汁をとっているのかを知っていれば、受け止め方は変わります。
なぜこのメニューを残しているのかまで知っている常連客なら、同じ150円を「価格」だけで判断しません。
店がかけている手間や背景の情報と一緒に、納得して受け止めてくれる可能性が高くなります。
もちろん、「普段から発信しておけば高くても売れる」という魔法のような話ではありません。
ただ、価格しか判断材料がない状態のまま値上げを迎えるよりは、選ぶ理由がひとつでも多いほうが、小さな商売はずっと守られやすくなります。
価格改定のお知らせを書く前に、仕事の背景を「記事棚」にしておく
では、小さな店は何を普段から発信しておけばよいのでしょうか。
値上げのお知らせ文を推敲する前に、書いておきたい記事があります。
ネタリエでは、仕事の背景や考え方を書き溜めておく場所を「記事棚」と呼んでいます。
1本の記事で集客や説得を完結させようとせず、読者が判断するための材料を少しずつ並べておく考え方です。
以前、noteを単なる日記で終わらせず、仕事の資産に変える記事の配置について整理しました。
→ noteを「日記」で終わらせず、仕事につながる「小さなオウンドメディア」に変えるための記事設計
たとえば町の飲食店なら、普段から次のようなテーマを1本ずつ記事にして残しておくことができます。
・なぜこの場所で、この店を始めたのか
・料理に使う材料をどうやって選んでいるのか
・時代に合わせて変えてきた部分と、絶対に守りたい変えない部分
・名物の一品が完成するまでの仕込みの工程
・常連客からよく聞かれる質問や、食べ方の提案
・店主が料理をつくるときに最も大切にしている基準
・見た目の値段には表れにくい、仕込みの手間や工夫
・これまでに失敗しながら、味やサービスを改善してきた話
・お客さんにどんな時間を過ごしてほしくて店を開けているのか
これらは、Instagramに美味しそうな料理の写真を投稿することとは、少し役割が違います。
「うちの料理はこんなに素晴らしい」と売り込むための宣伝ではありません。
お客さんが店を信頼し、通い続けるための「判断材料」をあらかじめ増やしておくための記事です。
ここで重要なのは、値上げを決めた瞬間に慌てて「こだわり」を語り始めないことです。
価格改定の貼り紙で、突然「厳選素材を使用し」「伝統の製法を守るため」と長文で書かれても、どこか言い訳のように見えてしまいます。
それまで何も語ってこなかった店が値上げのときだけ熱弁を振るうと、値上げを正当化するための説明に受け取られやすいのです。
けれど、値上げなどまったく関係のない普段の時期から、仕込みの様子や店主の考え方が淡々と綴られていたらどうでしょうか。
「前から手間と時間をかけて仕込んでいた店だよね」という文脈が、すでにお客さんの頭の中にあります。
値上げのお知らせ文を上手に書く技術を磨くことより、値上げの必要がないときから自分の仕事を言葉にしておくこと。
この事前の蓄積こそが、いざというときに小さな店を支える防波堤になります。
noteは「新規集客」だけでなく、価格以外で選ばれる理由を蓄積する場所
こうした発信をするとき、noteはとても使い勝手のよい場所になります。
ただし、noteを「新しいお客さんをどんどん連れてきてくれる集客装置」として過度に期待する必要はありません。
飲食店の集客であれば、Googleマップや口コミサイト、Instagram、あるいは地域の看板のほうが圧倒的に強い場面が多いはずです。
noteを書いたからといって、翌日から予約の電話が鳴り止まなくなるわけではありません。
以前、店舗ビジネスにおけるInstagramやGoogleマップとの役割分担についても整理しました。
→ 【note集客】カフェ集客にnoteは必要?Instagram・Googleマップとの使い分け
けれど、noteには別の明確な役割があります。
それは、「もう少しその店のことを知りたいと思った人」が、安心して立ち寄れる場所になることです。
Instagramで美味しそうな写真を見て気になった人が、プロフィールのリンクからnoteを読む。
Googleマップで店名を知た人が、店主の書いた仕込みの記事を読んでファンになる。
あるいは、長年通ってくれている常連客が、店主の創業の思いを読んでさらに応援したくなる。
noteは、単なる宣伝チラシではなく、仕事の背景を残しておく「商売の記録庫」として機能します。
この役割は、飲食店に限った話ではありません。
美容室でも、整体院でも、士業でも、フリーランスのライターでもまったく同じです。
どのような仕事であっても、物価や人件費が上がれば、いつか提供価格を見直さなければならない日がやってきます。
そのとき初めて価値を説明するのではなく、普段から「なぜそうしているのか」を言葉にしておくことが大切です。
私は、小さな商売の発信を考えるとき、「何を書けば集客できますか」より先に、「お客さんが依頼するとき、何が分からないと不安なのか」を考えるようにしています。
飲食店であれば、選ぶ基準は決して料理の味や値段だけではないはずです。
値段、材料、店主の人柄、店の雰囲気、続けている理由。
お客さんはそうした無数の情報を肌で感じ取りながら、「またここに来よう」と決めています。
そう考えると、発信は新しいお客さんを呼び込むためだけのものではありません。
すでに知ってくれている人に、もう少し深く知ってもらい、価格以外の理由で選んでもらうために使うことができます。
コストの高騰という厳しい現実に向き合わなければならない今だからこそ、値上げの告知文を考える前に、普段の仕込みや仕事の理由をひとつずつ言葉にしておきたいものです。
今日仕込んだ料理の「ひと手間」や、当たり前に続けてきたこだわりを、まずは1本の短い記事として残すことから始めてみませんか。
以前、飲食店の来店前の不安に答える発信についても整理しました。
→ 【note集客】飲食店のnoteは、来店前の不安にどこまで答えられるか
この連載は、マガジン「AI時代の仕事とnote|ネタリエ」にまとめています。仕事の言葉を残し、小さな商売を守るための発信のヒントを随時更新しています。https://note.com/mentaltuyoshi3/m/mbace383576f6
読んでくれて、ありがとうございます。
綿樽 剛がどんな考え方で発信や記事制作を支援しているかは、こちらにまとめています。
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この記事は、綿樽 剛のメモや構成方針をもとに、AIを下書きや整理の補助として使用しています。どの内容を残すか、どこを削るか、公開するかどうかは綿樽 剛が判断します。
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