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【第1話】不老不死の地球は『150年の住宅ローン』が当たり前の『社畜ディストピア』!? | 神(=宇宙人)が『仏眼』で民の愚痴を受信しながら人類救済に挑む!




【 あらすじ 】(全4話)

「神などいない、いるのは宇宙人だ」
人類に「不老不死の薬」を与えたら、地球は『150年住宅ローン』が当たり前の『社畜ディストピア』になっていた。
クールなエリート宇宙人(※見た目は187cm国宝級イケメン)と、渋谷育ちの宇宙人2世が、神社で民の「愚痴」を受信しながら地球を観測!? 豚カツの美味さに泣き、人間の心臓のバグ(恋)に戸惑いながら、2人は人類を救う『第二の種』を蒔く――。
笑って、お腹が空いて、最後にちょっと心が温かくなる、宇宙人目線の地球観測日誌。




太陽からおよそ1億5千万キロ離れた場所にある太陽系第三惑星『地球』が誕生したのは、およそ46億年前。
太陽系が形成される巨大なプロセスの中で、塵や岩石が集まってドミノ倒しのように巨大化していくことで形成された。

我々、宇宙人は途方もない年月をかけてこの地球を観測してきた。
約35億年前に最初の生命が芽吹き、やがて『人間』と名乗る、ちっぽけな二足歩行の生命体が生まれた。

彼らの歩みはあまりに緩やかであったため、我々はごくたまに、ほんの指先をかすめる程度の叡智を与えた。

砂漠にそびえる巨大な金字塔も、孤島に佇む謎の人面像も……当時の技術では説明のつかないもの そのほとんどが我々の指先が触れている。

人間は、彼らの知能では理解し得ない我々の存在を『神』と定義し崇めた。
我々は彼等を『民』と呼んだ。

以来我々は、『民』が望む『神』とやらを演じる一方で、人混みに紛れ、人間になりすまし、生温い呼吸を装い、密かに観測を続けているのだ。

『民』の望みを知ることは容易だった。
なぜなら我々は彼らの言う『神』なのだ。神社仏閣などに祀られている我々に対し、『民』は、願い事に加え、ご丁寧に住所や名前まで告げるのだ。

あれほど個人情報保護を声高に警告しておきながら『神』に対し、いとも簡単に個人情報を、欲望剥き出しに伝える彼等は稚拙で愚かな姿に見えたが、その甲斐あって多くの民が長い年月変わらず望む願いを簡単に知り得た。

そろそろ我々の叡智なる種を落とすとしよう…我々は新たな実験を行なうことにした。

地球上の全ての民の中から選抜した者に対し、それが何であるかを伝えることなく、夢でパズルの1ピース(1ブロックごとの構造)を繰り返し見せた。

それらは数年かけて、SNSで都市伝説化され『#幾何学模様の夢』というハッシュタグで世界中が繋がり、おのおのが見た『パズルのピース』を持ち寄って掲示板で復元されて行ったのだ。

SNSの出現により、格段に早くトンネルを抜け夢の解明に辿り着くかのように思われたが…
パズルのピースが埋まらない部分もあり、それらが何であるのか?解明できるものは一向に現れなかった。

我々からのギフトはとっくに贈ったというのに、受け取れるものがいない。我々は歯がゆさと苛立ちを腹の底でフツフツと感じていた。宝の持ち腐れとはこのことだ。刻を無駄にくゆらせた。

しかし、とうとう未知なる重い扉が徐々に開き始めた。ギフトの解明に近づいたのは、ある日本人だった。

子供の頃から繰り返し見る夢が、実は「高度な分子構造式」や「遺伝子配列」の立体パズル。子供の頃はテトリスのようなゲームだと思っていたものが、大人になって化学やプログラミングを学んだことで「これ、分子構造だ…!」と気づいた。

我々が夢の中に蒔いた『種』が、ようやく芽を出し始めたのだ。

我々からのギフト。それは、『民』が喉から手が出るほど望む『不老不死』の薬だった。

夢の新薬に地球中が湧いた。この開発は、民を救うのか?あるいは…

保険の利かない高値の新薬に富裕層は真っ先に飛びついた。
次第に上流から下流へと水が流れるように中流層へと浸透して行った。

夢の新薬ではあったものの、高値に手が出ない民もいた。

民に贈ったギフトは、我々の意に沿わず平等に行き渡るものにはならなかったようだ。
民の一部は高額な薬に手が届かない自らの境遇を「世の中は不公平だ。神はいないのか…」と怒り、嘆き、悲しんだ。

「稚拙な民よ……神などいない、いるのは宇宙人だ。勝手に『神』と崇めておきながら、願いが叶わなければ神はいないだと?何とも勝手でブレブレな真理だな…」

……不覚にも心の声が漏れ出てしまった私は、地球ネーム『宙月 光一(そらつき こういち)』地球見た目年齢29歳。本日付で地球潜入観測員に任命され、UFOで地球へやってきた。

相棒となるのは、地球ネーム『輝星 美夜(きらぼし みよ)』地球見た目年齢23歳。地球観測員の両親の元に誕生した銀河系2世だ。地球でネイティブに育った彼女と、一度は来てみたかった民の待ち合わせの定番、この『渋谷ハチ公前』で待ち合わせをしているのだが……

「あのぅ…もしかして…宙月 光一さんですか?」

のぞき込んできたのは、小柄な娘だった。ビー玉みたいに丸い、黒目がちなクリンとした瞳が、至近距離から私を捉えている。我々と同じ銀河の血を引いているとは思えない、いかにも渋谷に馴染みきったZ世代といった装いである。

 
「あぁ、いかにも!私が本日より観測員として地球に下った、宙月 光一だ。そなたが輝星 美夜なる者だな?」

「ちょ、ちょっと! いつの時代の『言語データ』入れてきたんですか? その喋り直ぐにアップデートしてもらえます? 全く先が思いやられるわ…… はい、言語化アップデート飴、今すぐ食べて下さいね」

差し出された飴を口に放り込む。

「ん…もぐ、もぐ…ウマっ! これが噂の『イチゴ』味!? マジヤバイんだけど!! 」

「アップデート早っ!!」

「刹那の甘美、追うは甘酸の余韻……実に見事な調和なり」

「っていうか、口調ブレブレなんですけど」

『ガリッ』

ハッ。いかん、いくら未知の味覚とはいえ、たかがイチゴ味ごときに心揺さぶられるとは。私は冷静さを取り戻すべく、奥歯で一気にそれを噛み砕いた。

超難関資格『全銀河地球観測検定1級』をトップの成績、しかも最年少で通過したこの私に対し、なんという口の利き方だ。たまたま地球で生まれ育っただけで資格取得を免除され、潜入観測員になれたばかりの未熟な銀河系2世の分際で!

「それはそうと、光一さん…… なんでその姿? 目立たないようにって言われませんでした?」

早口に口を尖らす美夜。私のネクタイを雑に掴みグイッと引っ張られ思わずよろけた。か、顔が……ち、近い……これが地球上での距離感なのか? 圧が半端ない。

「コ、コホン……。目立たないようにして来たのだが……我々『宇宙人の美』とは真逆の不細工仕様。高身長、手足は長く、顔には凹凸をつけ、頭部には風になびく無駄に高密度な茶髪を増設してみた。如何かな?」

美夜が眉をひそめ顔を近づけたまま小声でささやいた。

「如何かな? じゃないですよ。何やってくれてんですか? 顔は彫りの深い国宝級イケメン、手足も長く身長187センチの細マッチョ、無駄に爽やかサラサラヘア!!

さっきから女子の目がハートになっちゃってるの気づきません? あぁ~もう写真撮られちゃってるし、ハチ公以上に人だかりができちゃってる。 

一刻も早くこの場を離れましょう!!」

美夜に腕を掴まれ、渋谷のスクランブル交差点を一気に突っ走った。『自力で走る』などという原始的な移動手段は、全銀河地球観測検定試験のテキストにも載っていなかったぞ! 

​大股で足を交互に繰り出すたび、硬いアスファルトから伝わる振動が、ジンジンと足裏を通して全身を駆け巡り、心臓が『バクバク』と聞いたこともない音を立てて暴れていた。

​自力で走ることも、この胸の鼓動も、さっき食べたイチゴ味の感覚も……何もかもが初めてのことばかりだ。これが地球人の日常だというのか!?


美夜の車(軽自動車)にドンッ!と押し込まれ、頭を天井スレスレにつきながら連れて行かれたのは、郊外の雑居ビルの屋上。そこには2DK程の部屋がついていた。

「ここは?」

「私たちのアジトです。光一さんはここに寝泊まりしてください。屋上のほうが本部と交信しやすいでしょ?」

「ここに? 私が住む? ハイテクノロジーとは程遠い、構造体の劣化が著しい未開の建築物だが……」

「仕方ないでしょ! 目立たないためでもあります。『郷に入れば郷に従え』ですよ!! 直ぐに慣れますって。そんなことより早く報告会を始めますよ」

「そんなことよりって……」

美夜のペースに押されまくり、クールなエリートが台無しだ。そんな私にお構いなく報告会は進められた。

「既に昨日付けで潜入観測員の任務を終え、母星に帰還した私の両親からのデータは受け取っていますよね?」

「あぁ、ざっと目は通した。不老不死の夢の新薬誕生により、人手不足、年金問題、空き家問題などなど、数々の問題が解消されたとか……」

「そうなんです。けれど、新薬誕生から数十年経過し、新たな問題も出てきたんです。」

「新たな問題?」

「はい。確かに人口は増え、人手不足は解消されました。夢のような新薬の誕生により、年金問題『定年』『老後』という概念が消滅したため、既存の年金システムは完全に崩壊しました。空き家問題は人口の増加により一気に解決しました」

「それのどこが問題だと言うんだ?」

「不老不死により、『相続』という概念がなくなりました。死なずに住み続けるわけですから、空き家は格段に減りました。しかし、民の数は増えているのに、住む場所は限られています。

需要と供給のバランスが崩れ土地や家屋の値段は爆上がり、賃貸料も超高額です。お陰で、このアジトを見つけるのも大変でしたよ。」

「なるほど。それでこの郊外に……」

「都内なんて競争率高すぎてマジ無理ゲーです。知ってます? 不老不死により定年制は事実上廃止、いくら可能とはいえ、当たり前に150年の超長期ローンとか組まされてマイホームを購入するんですよ」

「何だって!? 夢のマイホームが、もはや地獄のマイホームじゃないか!!

建物の物理的耐用年数を完全に無視した150年ローン!?  家が朽ち果てても返済だけが残る悪魔の半永久機関システムじゃないか。ヒル並みの吸いつき方だ」


「不老不死により、民は生き続けるために社畜化しているのが現状です」

「ディストピアじゃないか!!」

我々は民に夢を与えたはずだったのに、社畜化だと? 民よ! 一体どこへ向かおうというのだ? 不老不死の行先は『ユートピア』ではなかったというのか? 赴任初日にも関わらず、私の想像からはかけ離れた地球の姿がそこにあった。

「明日は街に出て民の生の声を拾いますよ。まずは手っ取り早く『神社』へ行きましょう」

「神社か……確かにあそこは民が自ら住所と欲望を告げに来る最高の観測ポイントだったな」

実は世界中の宮司や神職の中には、我々のような潜入観測員が一定数潜んでいるのだ。



👇【第2話続きはこちらから】👇



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