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第1回:標準化・ガバクラでなぜコストが増大するのか

かねてより気になっていたコスト問題がここにきて爆発している。最近立て続けに資料などが公開されているが、いまいち腑に落ちない内容が多い。理想と現実を深掘りして考えることが今後の市場には重要と考える私だが、先日の日経クロステックの連載記事(以下3本)などを受け、私なりに今の私の頭の中を整理してみた。

クロステック記事は有料コンテンツのため内容には言及しないが、タイトルから察するに、標準化・ガバクラ対応で3割減になるはずがなんと数倍にも費用が膨れ上がってしまっている現状があり、そのためにもSaaS化や事業者の事業転換が必要という内容のようだ。
記事内容には言及できないが、私も日頃からコスト問題については思うところがあるので、私の考えを整理していきたい。(念のため言っておくが私は有料会員で当該記事も読んでいる)


本記事は私個人の意見であり、あらゆる他者の意見を否定するものではありません。あらかじめご了承ください。

私の過去ツイを見ていただければ分かると思いますが、かねてよりこの件には思うところがありましたので、その辺りを整理したいと思います。
※前後でツリーになっていたりしますが、よければ過去ツイも見てみてください。

About me

簡単に自己紹介する。私は地方の地場ベンダでバリバリ最前線で標準化・ガバクラ対応をしている。主にガバクラ周りと20業務を担当しているので、割と現場感覚としてはズレていないのではと思う。
ただし本記事はあくまで私個人の見解であることをお断りしておく。

先に言っておくが、私は別にガバクラdisをしたい訳ではない。ただ事実として現状のガバクラには課題がたくさんあり、またその課題感の認識が国側と現場側でずれがあるように感じる。よりよい方向に向かっていけたらいいなーの思いで本記事を書いている。

命題:標準化・ガバクラ対応で3割減どころか数倍に膨れた原因はなにか

この記事の命題はこれ。このことを真剣に議論する時期なのではないかと思う。(いや、遅すぎるが。。。)
どうもお上の方々は「現場の声を丁寧に聞いて」とか「丁寧に説明して」とか言う割には、あまり現場の解像度が高くなさそうだ。この辺りを私なりに整理していきたい。
ただいちいちソースを示していくのは時間がかかるし公開情報のみではディティールに限界もあるので、あくまでイチ現場の肌感覚として執筆していくので、そこのところはご了承いただきたい。
なお2024年1月に以下の記事が謎団体 共闘PFから出ている。ある程度現状とも乖離ないと思うのでぜひ読んでみていただきたい。

と、記事を書いていたところ、5/15にデジタル庁から以下の資料が公開された。こちらもぜひご一読ください。
ただし終始ガバメントクラウドありきの話となっており、そもそも自治体は本当にガバメントクラウドが必要なのかと言う議論がない。また標準化とガバメントクラウドは分けて議論をしたほうが本質的と感じるが、政治的に難しいものなのだと感じる。とにかく一度見てみてほしい。

リンクはこちら

なにはともあれ、まずはコスト構造を正しく整理・理解することから。

コスト構造は主にこれ

デジ庁のレポートや上記記事などにも記載されているが、コストはざっくり分類すると次の4つ。詳細説明は割愛する。

①ガバメントクラウド利用料(★)

自治体が支払うガバメントクラウド利用料。実際は、ガバメントクラウドの契約スキームにより、自治体→デジタル庁→CSPというようなお金の流れとなる。不思議と思われるかもしれないがアプリケーションを提供する事業者は仲介の余地がない

②回線費用(★)

自治体がガバメントクラウドに接続する際に利用する回線費用。
自治体が回線事業者に対して支払う。

③運用管理補助者費用(★)

ガバメントクラウドは自治体に対して国が払い出す環境のことだが、実際はクラウド環境の運用は運用管理補助者として自治体が調達する事業者に委託するケースが大半。運用管理補助者は、払い出されたガバメントクラウド環境上にアプリケーションを構築したり運用保守したりする。その費用。
自治体が運用管理補助者に対して支払う。

④アプリケーション・ミドルウェア利用料、保守費用

業務システムのアプリケーション利用料や保守費用など。
自治体が実際に運用するベンダに対して支払う。

大別するとこの4つに分類できると思うが、よく見てほしい。(★)がついているものって、そもそもガバメントクラウドを利用しなければ発生しない。現状が自治体クラウドなどで既にコスト最適化がされていたと仮定すると、ガバメントクラウドは余剰な投資と言えるかもしれない。もちろん、ガバメントクラウドによって受けれる恩恵も十二分にある。要は、ガバメントクラウドは選択肢であり、当然使わないと言う選択肢も用意されるべきと言うことだ。
(これを言うと、現在もガバメントクラウドを利用しない選択肢はあると言う意見が出そうだが、そもそも当初はガバメントクラウドを利用しないと補助金を出さないというところから話が始まっていると認識している。)

ガバメントクラウドを利用しなければコスト問題の大半は解決するのでは・・・。

標準化とガバメントクラウドは分けて議論すべき

さまざまな意見があることは承知だが、私はひとまずコスト問題を議論する上では、標準化とガバメントクラウドは分けて議論したほうが整理しやすいと思う派だ。混ぜるな危険!!
まぁ、戦略レベルですでに混ぜてしまっているので実際は難しいと言うのは百も承知だが。。。

標準化起因のコスト増要因

標準化は、2025年度末までに国が整備する標準仕様書に準拠したシステムを利用する法的義務だ。対象業務は自治体業務のうち20業務がピックアップされているほか、共通機能や非機能要件など、法で定められた標準化基準に準拠することになっている。
なお標準化基本方針によると、2023年3月末時点で公表されている標準仕様書に、2025年度末までに移行することとされている。大事なのでもう一度言う。2023年3月末時点で公表されている標準仕様書に、2025年度末までに移行することとされている。
そのため、各開発事業者は急ピッチでシステム改修を進めているのだが、現状はこの「2023年3月末時点で公表されている標準仕様書に」と言う部分がまるで守られていない。度重なる法改正により、あれよあれよと言わんばかりに、現在進行形で標準仕様書は成長を続けている。にもかかわらず適合基準日(仕様書を準拠しなければならない日)は2026年4月1日のままなのだ。

このように、標準化起因のコスト増の要因は、一言で言うと度重なる標準仕様書の改版だ

仕様書の改版は追加開発になるのだから、その分の費用がアプリケーション提供価格に転嫁されることは、おかしな話ではないと思う。
またこのようにアプリケーション開発にリソースを取られ、システムをモダン化できていないと言う課題もある。

ガバメントクラウド起因のコスト増要因

対してガバメントクラウドはどうだろうか。
現状を一言で言えば、今まで軽自動車で不便感じていなかった人(自治体)に対しても半強制的にベンツに乗らされている状態だ。もちろん、ベンツなら衝突しても堅牢だし、乗り心地もいいし、イケててカッコいい、というようにメリットはある。問題なのは、そのメリットを必要と感じていない人に対してもメリットの押し付けをしているのではないかと言う点だ。挙句、ランニングコストが数倍に膨れ上がっているのが現状。
その一つが非機能要件(稼働率や遠隔地保管、レスポンス性能など)であったりする。

ところで、そもそもなぜガバメントクラウドを利用させようという意思決定に至ったのかも大切ではないか。多くの自治体にとってメリットがあるのなら多少の痛みは付き物。むしろ強力に推進していく必要があると思うが、現状を見ている限りでは、ガバメントクラウドでは誰も幸せにならない。いや、確かに成功している自治体も観測しているが、ごく一部だ。自治体の費用負担は増え、支払いも煩雑になり、事業者はインフラ料を全て外資CSPに持っていかれる。税金が特定の外資企業に流れること自体問題だが、論点ずれちゃうので割愛。
つまり、国は何のためにガバメントクラウドを推進しているのか、そもそもの目標設定がズレている可能性があるのでは、というのが気になるところだ。
最近の国の資料を見ていると、ガバメントクラウド利用によってコスト低減を図るという文脈が強いように感じる。果たしてクラウドはコスト低減のために利用するものなのか

実は某先進国ですでにこの議論には決着がついている。
以下の記事で詳しく取り上げられているので、ぜひ読んでみていただきたい。

どうも私が思うに、ガバメントクラウドを推進・指揮している方達は、現場のことも先行事例も見えていないようだ。

コストの内訳とコスト増となる要因についてご理解いただけただろうか。現場感覚で書いているが、もし認識違いなどあれば教えてほしい。

自治体基幹系システムはクラウドに適しているのか

次に、自治体基幹系システムとクラウドの相性についてまとめてみる。この観点は非常に重要だと思う。
先ほどの車の例だと「小さい子どもを乗せるから、万が一の衝突事故でも衝撃耐性を考慮して軽自動車はやめておこうかな」「自分一人が日常生活圏内で利用するだけだから軽自動車で十分」「大統領を送迎するから特別装甲が必要だな」など、用途に応じて乗る車を選びますよねという話。
それと同様にクラウドも用途や目的があってこそクラウドの利用価値が生まれるのではないか。自治体基幹系システムの業務特性から見たクラウドである必然性について、考えてみたい。

標準化とガバメントクラウドの関係性をシンプルに表すと【①標準化したシステムを②ガバメントクラウドで動かす】ということになる。このことからも、②はシステムをどこにホストするかの話であり、ガバメントクラウドである必然性は別のところにありそうだ。

一般的なクラウドの利点

chatGPTに一般的なクラウドの利点を聞いてみたところ以下の回答があった。

  • 初期導入コストの抑制

  • システムの柔軟なスケーラビリティ

  • 高い可用性とBCP対策

  • 庁内の運用負荷軽減と人的リソースの有効活用

  • セキュリティと監査対応の強化

  • 短期間での導入と迅速なシステム更新

  • テレワークや出先機関からの柔軟なアクセス

クラウドを利用することでCSPとの責任共有モデルにより、利用者側の運用負荷が下がりその分のリソースを別の場所で利用できるというものだ。またスケーラビリティを活かせるためいわゆる従量課金的な利用によって、必要な時に必要な分を利用できるという性質がある。

ではそのクラウド特性が自治体基幹系業務にマッチしているのかどうかが重要ではないか。
chatGPTは次のように整理した。

適しているという立場

  • 災害対策・BCPに強い:分散構成や自動バックアップにより、高可用性を確保しやすい。

  • 運用負荷の軽減:パッチ適用や監視などをベンダに任せられ、職員の負担を削減。

  • 標準化との親和性:政府が推進するシステム標準化・ガバメントクラウドにフィット。

  • 安定稼働が前提ならコスト予測しやすい:スパイクが少ないため、従量課金でも安定した費用計画が立てられる。

適していないという立場

  • 高可用性の要件に対しクラウド障害のリスク:自治体独自要件への対応が難しい場合も。

  • スケーラビリティが活かせない:負荷が一定のため、クラウドの強みが活用しにくい。

  • 柔軟性・カスタマイズ性の制限:標準化されたSaaSでは業務へのフィット感が薄れる可能性。

  • 住民情報の取り扱いへの懸念:外部クラウド事業者への依存に慎重な声も根強い。

このように意見が分かれるのは、自治体規模・業務特性・運用体制・リスク許容度を総合的に勘案して自治体ごとに検討すべき課題であるからだ。
冒頭の例のように、一律ベンツである必要はなく、本来は自治体要件に合わせて選定していく必要があったのではないか。

朗報としては、現在国は、非機能要件の見直しを検討している
これにより、一律ベンツに乗る必要がなくなるのか。続報を待つところだ。


そもそも自治体クラウドで不満はありましたか?

これは全ての自治体に当てはまることではないが、1741の自治体のうち約7割が中核都市未満であり、そういった「メジャーな」自治体は、すでに何かしらの方法でコスト最適化を図ってきているのではないか。それが庁内基盤の仮想化だったり自治体クラウドの共同調達だったり、いわば身の丈にあった最適化が行われていたのも事実だと認識している。

ガバメントクラウドを利用することにより、ステークホルダーが増える分調整事項が増えたり、身の丈に応じた投資だった自治体クラウドの提供価格の方が安かったり、という点からも、ガバメントクラウドは選択肢であるべきと考える。


長くなったので、次回はSaaS化について思うところを整理してみたい。
(第2回の記事はこちら↓)


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