「最近、よくむせる」は見過ごさない。毎日始めた嚥下トレーニングの話
研修講師、手話通訳士の横山熊太郎です。
AIを活用しながら、シニア向けの情報や、書籍やガジェットの紹介などをしています。
食事中や飲み物を飲んだとき、以前よりむせることが増えてきました。
最初は「たまたまだろう」と思っていましたが、何度か続くうちに、さすがに気になります。
「これはまずいな。今のうちに、どうにかしないといけない」
そう考え、本を読んだり、インターネットで調べたりするようになりました。そしてYouTubeで動画を探しているときに出会ったのが、「嚥下トレーニング」です。
嚥下とは「飲み込むこと」
「嚥下」は、「えんげ」と読みます。
食べ物を口に入れ、かみ砕き、舌を使って喉へ送り込み、食道を通して胃まで運ぶ一連の動作を指します。
普段は特に意識することなく行っていますが、実際には唇、頬、舌、喉など、さまざまな部分が連携することで成り立っています。
これらの働きが弱くなったり、動きのタイミングが合いにくくなったりすると、食べ物や飲み物が気管へ入りかけて、むせることがあります。
国立長寿医療研究センターによると、摂食嚥下障害には、口や喉、食道などの病変によって起こるものだけでなく、脳卒中や筋肉量の減少などが関係するものもあります。単に年齢のせいだと決めつけず、変化に気づくことが大切です。国立長寿医療研究センター「摂食嚥下障害」
動画を見ながら毎日トレーニング
YouTubeで見つけた嚥下トレーニングを、毎日行うようになりました。
内容は、口や舌を動かしたり、声を出したりするものです。動画を見ながら行えるため、動きやペースが分かりやすく、一人でも取り組みやすいと感じました。
特別な道具を用意する必要がなく、短い時間でできることも、続けやすい理由の一つです。
私の場合は、数日続けただけでも、以前との違いを感じました。もちろん、これはあくまで個人の感想です。症状や原因には個人差があるため、誰にでも同じ期間で同じ変化が現れるとは限りません。
それでも、「何もせずに心配しているだけ」という状態から、「毎日できることに取り組んでいる」という状態へ変わったことは、大きな安心につながりました。
嚥下トレーニングは無理なく続ける
嚥下トレーニングには、口を大きく動かす、舌を出す、頬を膨らませる、唾液を飲み込むといった、さまざまな方法があります。
日本歯科医師会も、唇や頬、舌を動かす体操を紹介しています。口の周りや舌の筋力を高めることで、口の機能が向上し、食べ物を飲み込みやすくなることが期待されています。日本歯科医師会「オーラルフレイル対策のための口腔体操」
自宅で取り組むときは、次の点を意識すると続けやすくなります。
体調のよいときに行う
痛みが出るほど無理に動かさない
毎日続けやすい時間帯を決める
動画を選ぶ際は、医療機関や専門職など信頼できる発信元を確認する
食べ物を使う訓練は自己判断で行わない
実際の食べ物や飲み物を使った訓練には、誤嚥や窒息の危険があります。専門的な評価が必要になるため、医師や言語聴覚士などの指導を受けて行うことが重要です。
手軽にできる「パタカラ体操」
嚥下や口の機能を保つための体操として、よく知られているのが「パタカラ体操」です。
「パ」「タ」「カ」「ラ」の四つの音を、口をしっかり動かしながら発音します。それぞれの音には、異なる役割があります。
「パ」は唇を意識する
「パ」は、唇を閉じてから、はじくように発音します。
食べ物を口からこぼさないためには、唇をしっかり閉じる力が必要です。「パ」と発音することで、唇の動きを意識できます。
「タ」は舌先を意識する
「タ」は、舌先を上の前歯の裏側につけるように発音します。
食べ物を押しつぶしたり、口の中でまとめたりするときには、舌先の働きが欠かせません。
「カ」は舌の奥を意識する
「カ」は、舌の奥を上あごの奥につけるように発音します。
舌の奥や喉に近い部分を使う音なので、食べ物を喉へ送り、飲み込む動きに関係する部分を意識できます。
「ラ」は舌全体を意識する
「ラ」は、舌先を丸めるように発音します。
舌を滑らかに動かし、食べ物を口の中でまとめたり、喉の方向へ運んだりする動きにつながります。
日本歯科医師会は、一例として「パ」「タ」「カ」「ラ」を各8回、2セット行う方法を紹介しています。最初から速さを求めず、一音ずつ、はっきり発音するところから始めるとよいでしょう。
慣れてきたら「パパパパ」「タタタタ」と同じ音を繰り返したり、「パタカラ、パタカラ」と続けて発音したりする方法もあります。
食事前の習慣にすると忘れにくい
運動は、一度に長時間行うことより、無理のない範囲で続けることが大切です。
例えば、朝食前や昼食前など、毎日の食事と組み合わせれば、習慣にしやすくなります。
私の場合も、動画を見ながら取り組む時間を決めることで、忘れにくくなりました。最初から完璧に行おうとせず、短時間でも毎日口や舌を動かすことを意識しています。
家族と一緒に「パタカラ」と発音すれば、堅苦しい訓練という感覚も薄れます。声を出しにくい場合や、口や首に痛みがある場合は、無理をせず専門家へ相談してください。
「むせる人」にも教えてあげたい
この記事を読んでいる本人だけでなく、家族や友人、身近な人に「最近、よくむせる」という人がいたら、嚥下トレーニングやパタカラ運動のことを教えてあげるのもよいと思います。
ただし、「これをすれば受診しなくても大丈夫」と伝えるのは避けるべきです。
むせが頻繁に続く、食事に時間がかかる、食後に声がかすれる、体重が減る、発熱を繰り返すといった変化がある場合には、医療機関への相談が必要です。急に飲み込みにくくなった場合や、息苦しさを伴う場合も、自己判断で体操だけを続けるのではなく、早めに受診してください。
相談先としては、かかりつけ医のほか、耳鼻咽喉科、歯科、リハビリテーション科などがあります。飲み込みの状態は、言語聴覚士などの専門職が評価や訓練に関わることもあります。
むせに気づいた今が、始めるタイミング
飲み込むことは、毎日の食事と健康を支える大切な働きです。
むせる回数が増えたことは、不安を感じるきっかけになりました。しかし同時に、自分の口や喉の働きへ目を向け、毎日の習慣を見直す機会にもなりました。
動画を見ながら行う嚥下トレーニングも、手軽なパタカラ運動も、特別な道具を使わず始められます。
大切なのは、無理をせず、安全に続けること。そして、症状が続くときには体操だけで済ませず、専門家へ相談することです。
自分のために始めるのはもちろん、身近な人の「最近、むせるようになった」という言葉にも、少し注意を向けてみてはいかがでしょうか。
#嚥下トレーニング #嚥下体操 #パタカラ体操 #むせ #飲み込む力 #オーラルフレイル #口腔ケア #健康習慣 #誤嚥予防 #シニアの健康 #介護予防 #健康寿命
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!