OSの断片|独りよがりの愛──彼の話
「ありがとうが、言えない家だった。」
“悪い家庭”ではない。
でも、
感謝や愛情を、
言葉にする文化がなかった。
だから大人になって、
優しい言葉を向けられると、
なぜか少し怖い。
愛情をどう捉えていいか
正解が分からなくなる。
だんだん、気持ちを言葉にするのが、
怖くなっていった。
僕なりに愛を伝えてみた。
「それは独りよがりだよ」、って返された。
感謝の気持ちを伝えてみた。
「それは嫌味だよ」、って返された。
みんなありがとうや好きを、
求めているんじゃないの?
不幸な家に生まれたわけではないけど、
言葉の受け止め方が分からなくなっていた。
僕の何がいけないの。
優しい言葉をかけてくれる人は、
もういなかった。
▶︎ 愛されたかったんじゃない。
情で、埋めてほしかった。
▶︎ 関係に名前をつけないまま、
私たちは感情だけ深くしていった。
▶︎ あれは愛だったのか、
それとも愛に見えていただけなのか。
