見出し画像

小野不由美を、天才だと確信した日

深夜1時。
私はパソコンの前で、
天才について考えていました。

原因は、AIです。
いや。正確には、
小野不由美さんです。

前回、
小野不由美さんの
『悪霊』シリーズを読んで、
この人、天才ではないか。
そう思った話を書きました。

この時点では、まだ、
「天才ではないか」。
疑問形です。

一度ものすごい稲妻が
来たからといって、
即座に天才認定して
よいものか。

子どもの私にも、
若干の慎重さが
残っていたようです。

そこで、私は、
また小野不由美さんの本を
手に取りました。

『魔性の子』。

どんな話なのかは、
知りません。
小野不由美さんの
本だから、
手に取ったのです。

暗い。

かなり暗い。
読み進めても、
なんだかずっと、
どんよりしています。

次々と、
嫌なことが起きる。
私は途中から、
かなり失望していました。

こういう話は、
あまり好きではありません。

『悪霊』シリーズで、
あれだけ盛大に
稲妻を走らせた人なのに。

今回は、
ずいぶん暗い。
ただただ暗い。

そのまま、
鬱々しながら
最後まで読みました。

そうですか。


感想はそれだけです。

『魔性の子』は、
ただの暗い本として、
私の中で完結しました。

でも、
『悪霊』シリーズで受けた
稲妻を忘れられません。

今度は
『十二国記』というシリーズを
読み始めました。

こちらは、なかなか良い。
暗いところもあります。
でも、世界が広い。
知らない国がある。
王がいる。
麒麟がいる。
旅がある。
冒険がある。

そして、
ある一冊を
読んでいたとき
のことです。

また、
稲妻が走りました。

え。待って。
そういうこと?

私の頭の中に、
とっくに完結したはずの
本が、突然目の前に
姿を現しました。

『魔性の子』です。

ただ、ひたすら暗い。
そう思って、
自分の中で
とっくに片づけていた
本です。

ところが。
十二国記を読むと、
『魔性の子』の
景色が一変しました。

あれは、
そういうことだったのか。

あの違和感も。
あの人物も。
あの出来事も。

『魔性の子』は
ただの暗い本などでは
なかった。


しかも、
『魔性の子』と
当時の『十二国記』は、
出版社まで違います。

『魔性の子』は新潮社。
『十二国記』は講談社。

私は子どもながらに、
本というものは、
シリーズなら、
同じような表紙で、
同じ出版社から、
順番に並んでいるものだと
なんとなく思っていました。

それなのに、
いったい、これは
どういうことなのか。

私が知っている
シリーズものの常識が、
あっさり崩されました。

これはもう、
疑問形ではありません。

小野不由美さんは、
天才だ。

子どもの私は、
ここで正式に認定しました。

そして今。
昔のこの出来事を
思い出した私は、
AIに聞きました。
「ねえ。これ、
なんで私はこんなに
衝撃を受けたんだろう?」

AIは答えました。
「未桜さん。
一冊の中でだけ
どんでん返しが
起きたのではなく、
別の本を読んだことで、
すでに読み終えた本の
意味まで変わったからでは
ないでしょうか」

『悪霊』シリーズ。
あのときも、
自分なりに
かなり先を読んでいました。

結末まで先に
ちょろっと見ていました。

それでも、
小野不由美さんは、
私の予想の上から
稲妻を走らせました。

そして今度は、
一冊まるごと読み終えて、
これは暗くて鬱々した本だと
私が勝手に決めつけた
あとから、
その本の意味そのものを
ひっくり返してきました。

でも、その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。

一冊読み終わったからといって、
その本が、
完成したとは限らないのです。

別の本を読んだあとで、
前に読んだ一冊が、
突然、別人のような顔をして
現れることもある。

無敵だ。
最強だ。

私は昔から、
本の奥付を見て、
その作家さんが
どれくらいの間隔で
本を出すのか、
勝手に予想する癖があります。

ところが、
小野不由美さん。

奥付を何冊見ても、
何の意味もない。

すぐ次が出ることもあれば、
ずいぶん待つこともある。

発行日予測は、
この作家さんには
まったく通用しないのです。

そして、もうすぐ
小野不由美さんの
新刊が出ます。

2026年9月17日発売の、
十二国記の新作短編集
『幽冥の岸』。

しっかり、
予約済みです。

たぶん私は、
小野不由美さんの新刊を
待っているというより、
次はどこから稲妻が来るのかを
待っているのです。

もしかすると、
今度は本棚の端に
置いてある別の一冊が、
「実は私も十二国記です」
と名乗り出るかもしれません。


いいなと思ったら応援しよう!