「コミック乱ツインズ」2025年12月号(その二)
号数の上では今年最後の「コミック乱ツインズ」2025年12月号の紹介、その二です。
その一の記事はこちら。
『ビジャの女王』(森秀樹)
潜入した五人のインド墨者が仕掛けた馬ウイルスによって、ラジン軍の馬が次々と倒れる中、後方から迫るインド墨者の増援百騎。これはもう勝確すぎてかえって不安――と思いましたが、冷静に考えればラジン軍は一万三千。百騎が味方に加わったところで状況に代わりはないのでは、という気もします。
しかし、ただでさえ凶悪な墨蝗が五匹いたり(本当に怖いな虫部隊)、漫画版『墨攻』の秘密兵器を思わせるアレをラジン軍にガンガン放り込んだりと、後方から撹乱を仕掛けるのは想像以上に大きな効果を上げています。
そして何よりも、守らせれば異常に強い墨者が守る城には様々な仕掛けが――というわけで、この調子でいえば本当に勝ってしまうのでは、という気持ちになります。
しかし不吉極まりないのは今回からのサブタイトル。「滅びゆく者たち」とは、はたしてラジンか、ビジャか――最後の最後まで本当に気が抜けない決戦です。
『寿司銀捕物帖』(オズノらいおん&風野真知雄)
「夏のマグロは、まずいはず」編も今回で完結。殺された万五郎が残した貝を使ったダイイングメッセージを解き明かし、事件の背後に海賊の存在があることを知った銀蔵。どうやら季節外れのお化けマグロも、海賊から手に入れたようなのですが、しかしどうやって?
というところで冒頭でその謎は解き明かされるのですが、言われてみればなーんだという気はするものの、実に面白いトリックだと思います。
そして手がかりを求めて横浜に向かった銀蔵と十四郎は、前回逃げた怪しい船頭を見かけて……
と、クライマックスらしい大立ち回りもあって大団円の今回のエピソード(銀蔵のアクションがド派手で仰天!)。これ、神奈川奉行所との関係はどうなるのかな、という気もしますが、爽やかな味わいの結末の前には、まあ良しとしましょう。
『江戸の不倫は死の香り』(山口譲司)
今回の舞台は会津――会津藩士・大竹が江戸在府となり、会津に残ることとなった妻のおとしと、まだ元服前の子供。そんな中、大竹の家に寄寓している老牢人・十右衛門は、おとしが同じ藩士の上田と関係を持ったことを知り、厳しく詰問した末、二人から一筆を取ります。
しかし逆恨みした上田は仲間と語らって十右衛門を襲撃、その後もおとしを仲間たちと弄ぶのですが……
少々内容をバラしてしまうと、「ナメてた年寄が実は」パターンの今回。しかし、その結末は想像を絶するものでした。
『軍鶏侍』みたいなことはなかなかないなあ――というより、結局深く考えて行動しないと本当に大変なことになるのだなあ(この後どうなったのか、想像したくもない)と、思わぬところでゾッとさせられるエピソードでした。
『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
対信長のため、一転して毛利と同盟を結んだ宇喜多。しかし毛利に身を寄せていた三村元親はまったく空気が読めぬまま蜂起し、直家と小早川隆景の双方を敵に回すことに……
と、三村側に同情してしまいそうになる展開ですが、作中の描写を見ると、そんな気持ちがスッと消えていくのが巧みというかなんというか。
正直なところ、直家の生き方のアンチテーゼのために設定されたようなキャラの割には、長生きしすぎたなあ――というのは欄外を読みすぎかもしれませんが。
むしろ今回同情すべきは小早川隆景の方で、戦いの流れから暗殺大名と行動を共にするという、気の休まらないというより気を抜けない時間を過ごす羽目に(対照的に爽やかすぎる直家の笑顔が可笑しい)。
本作の隆景はかなりクールなイメージがありましたが、今回の描写でちょっとその印象が変わったのは、思わぬ副産物ではあります。
次号は23周年特別記念号。表紙&巻頭カラーは『そば屋幻庵』ですが、それ以外の掲載作品はレギュラー陣のようです。
