「コミック乱ツインズ」2025年12月号(その一)
「コミック乱ツインズ」2025年12月号は、表紙が二号連続の『鬼役』、巻頭カラーは『かきすて!』です。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介します。
前月号の紹介記事はこちら。
『かきすて!』(艶々)
単行本第2巻発売記念で巻頭カラーの本作。相変わらず街道を駆ける公儀隠密・ナツが今回訪れたのは、川止めで人々が足止めされている中山道の御馬寄村です。
そこで数多くの敵に襲われて傷を負った仲間と会ったナツは、前回下諏訪の温泉で騒動を起こした後に歩き巫女のチヨからもらったお守りが、実は重要な荷だと聞かされるのでした。
一人で荷を川向うに届けることになったナツ。しかし宿の風呂場で襲撃を受けて……
と、シチュエーション的にお色気時代劇だったらこうなるよなあ――という展開を真正面から豪速球でやってくるのに、もはや好感を抱いてしまう今回。
それでもいい意味でいやらしさがないのは、ナツの明るいキャラクターと、本作のムードならではのものでしょう。
その一方で、忍者ものとして時折ヒヤリとさせられるような描写が混じるのも面白いところで、この辺りの硬軟の使い分けは巧みだと思います。
『前巷説百物語』(日高建夫&京極夏彦)
「かみなり」第二回の今回は、なんとほとんど丸々蘊蓄回。ほとんど全て、久瀬棠庵と又市の会話で進行していきます。
百姓たちの妻子を食い物にしていた立木藩の江戸留守居役を制裁したものの、薬が効きすぎて切腹されてしまったことにもやもやを抱える又市。
棠庵のもとを訪れた又市は、そこで「かみなり」だという獣を見せられます。もちろん雷が獣として現れるはずがありませんが、棠庵はそこで様々な典拠をもとに、なぜこの獣が雷なのかを語っていくことになります。
小悪党と本草学者――それぞれの立場で合理的思考を持つリアリスト同士による会話は、いかにも京極作品らしい内容で、これを漫画化するのは大変だろうなあとつくづく思います。しかし今回の内容は蘊蓄の披露のようでいて、語られているのが実は重要な内容だと、この先わかることになるので油断できません。
もちろん、雷とは何なのか――言い換えれば人々にどのように受け止められてきたか、ということは語られます。しかし在る筈のないものであっても
「在って欲しいもの 在るべきだと考えられるものはね これ…ないのに在る――のですな」
という棠庵の言葉は、妖怪というものはもちろん、そして何よりも後の又市の裏稼業を考える上で欠かせないものなのです。
さて、それはそれとして、この先かみなりがどのように物語に絡むのか――それはまだ見えないまま、次回に続きます。
『エドゼニ』(青木雄二プロダクション コヤマサトシ&秋月戸市)
今回は主役の信助は完全に脇役で、貧困に苦しむ北町同心・西川の姿を中心に描かれます。
損料屋と質屋を使った金策が不発に終わり、ついに信助の働く金貸し、つまりは現代で言う街金に手を出した西川。しかし金が増えることがない以上、利息を返すのがやっとの状況に追い込まれた西川は、切米受け取りの手続きの際、自分の扶持が記された切米手形を前に、ついに禁断の手段に手を染めることに……
と、本人が作中に言っているように「もうあと戻りはできない」状況についに足を踏み込んでしまった西川。
その上司であり、彼を今の境遇に追いやった田所はもっと大掛かりな悪事を働いているのに比べれば――あるいはこれが何かの伏線かもしれませんが――まだマシかもしれませんが、今回のラストを見れば、もはや転落の一途を辿るしかないのでしょう。
はたしてそれが物語として面白いかはまだわかりませんが、読者としてはハラハラさせられる展開であることは間違いありません。
長くなりましたので残りの作品は次回。
