見出し画像

「コミック乱ツインズ」11月号(その一)

 「コミック乱ツインズ」2025年11月号は、表紙が『鬼役』(ただ、『紅と藍』『エドゼニ』『江戸の不倫は死の香り』のカットがあしらわれているので大変混沌とした感じに)、巻頭カラーは『江戸の不倫は死の香り』、特別読切で『古怪蒐むる人』が掲載されています。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介します。

前号の紹介記事はこちら。


『江戸の不倫は死の香り』(山口譲司)


 カラーページでは曽根崎心中の文字が真っ先に目に入りますが、内容的には曽根崎は関係なく、心中の方にまつわるお話です。

 今回のヒロインは、武家娘のお千代。兄のところに遊びに来ていた春日家の左門の凛々しい男ぶりに胸をときめかせていたお千代は、その春日家からの縁談に二つ返事で応じるのですが――その相手が左門の兄の半五郎だったことを知ったのは婚礼直前のことでした。
 その事実に大きな衝撃を受け、輿入れの後、頑なに半五郎を拒むようになったお千代。わけがわからず悩む兄の姿に、まさか自分が原因とは知らず、左門はお千代と話そうとするのですが……

 と、悲劇であることは間違いないのですが、なんとも微妙な表情になってしまう今回。確かに武家の婚礼のシステム的に、事前に顔合わせしないこともあるわけですが、しかし――いやいや、もちろんお千代にとってはたまったものではないのですが、側杖を食った形の左門も悲惨です。
 程度の差こそあれ、全員が被害者の物語というべきでしょうか。


『寿司銀捕物帖』(オズノらいおん&風野真知雄)

 「夏のマグロは、まずいはず」第3回は、被害者の万五郎を巡る銀蔵と十四郎の調べが続きます。
 前回、店の中に呪いの藁人形が打ち付けられまくった店という、なんかすごい場所から現れた万五郎の妻ですが、理想が高い万五郎に散々振り回されたらしく、呪いの言葉は吐くものの、事件には関係のない様子。その後、見るからに怪しい男を追いかけたものの逃げられ、打つ手がなくなってしまった二人ですが、気分転換に銀蔵は十四郎を魚市場に誘います。

 そこで市場ならではの符丁の存在を十四郎に説明する銀蔵ですが、符丁といえば暗号のようなもの、暗号といえば――というわけで、ここで章冒頭からの謎の一つが解けることになります。
 その暗号の中身は――この時代にこれはアリ? という気もしますが、それがもう一つの謎に繋がってくるのは面白いところです。

 謎を解き明かすため、虎穴に向かう銀蔵たち――という盛り上がるところで次回に続きます。


『ビジャの女王』(森秀樹)

 ラジンとの交渉(?)も決裂し、今度こそ始まったビジャとラジンの決戦。モンゴルならではの騎馬による突撃で、城壁に空いた大穴から一気呵成に飛び込もうとするラジン軍ですが、もちろんそれを見逃すインド墨者たちではありません。
 孤立無援のビジャですが、限られたリソースでの籠城戦は元祖墨家の頃からのお家芸――さらに防御策がそのまま攻撃手段に繋がるのは、ビジャにとっては頼もしく、ラジンにとっては悪夢でしかないでしょう。

 しかしインド墨者の攻勢はなおも続きます。以前から仄めかされていた策が、ここでついに炸裂するのですが――個人的に気になるのは、その手段の説明です。
 農耕部門の研究の副産物で虫が――って、これどう見ても漫画版『墨攻』の「虫部隊」では!? 墨家は壊滅したといっても、やはりその研究は生き残っていたのだなあ(やっぱりあれはヤバすぎる連中だったなあ)と、これは『墨攻』読者の勝手な感慨ではありますが、やはりそう考えてしまうのが自然でしょう。

 それはさておき、ラストではビジャ側がさらに攻勢に――と、このまま決まってしまいそうな勢いですが、ラジンにはまだ奥の手があります。悲劇の予感に震えながら次回を待ちましょう。


 長くなりますので次回に続きます。

いいなと思ったら応援しよう!