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「コミック乱ツインズ」10月号(その一)

 「コミック乱ツインズ」10月号は、表紙&巻頭カラーは『そば屋幻庵』。暦の上では秋ということでバックの画像は紅葉です。特別読切で『艶笑譚 後家の妙薬』、単行本発売の『玉転師』最終回が収録されています。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介します。

前号の紹介記事はこちら。


『そば屋幻庵』(かどたひろし&梶研吾)


 今回の中心人物は、剣術家の大林左門。剣術道場を営む禿頭の巨漢である左門は、いかにも剣豪としての存在感たっぷりですが――弟子の赤子を抱っこしたことでいきなり家族欲(?)に目覚めてしまい、妻子を持ちたい! となってしまう微笑ましすぎる冒頭から引き込まれます。
 折しも左門は、よその道場主から剣豪小町と呼ばれる娘をもらってほしいと頼まれ、渡りに船と大喜びするのですが……

 この先の展開はある意味予想通りではありますが、いかにも無骨な左門の、不器用でしかし粋な計らいが嬉しく感じられます。そしてそんな左門を包み込むような最後の一杯も、また実に旨そうなのです。


『江戸の不倫は死の香り』(山口譲司)


 今回のヒロイン(被害者兼加害者)は、尾張藩藩士の妻・おまさ。六年にわたった江戸勤番を終えて国許に帰ってきた夫・仁十郎を迎えた彼女は、まだ世継ぎに恵まれていなかったことから、これから頑張りたいと願うのですが――その翌日に現れたのは、江戸で仁十郎がもうけたという息子・鉄之助でした。
 鉄之助を生んだ女が流行病で亡くなったことから、尾張に連れ帰ったという仁十郎。鉄之助の母になってほしいと手をついて頭を下げる仁十郎に対し、首を縦に振るおまさですが……

 タイトルに「死」とあるように、基本的に悲劇がメインの本作ですが、今回は――後味の悪さではおそらく過去最高レベルでしょう。直接的な描写は避けられているものの、内容的にはほぼ越えてはいけない一線を越えたとすら感じられます。
(しかし、今回不倫はどこに――と思えば、これは江戸で仁十郎がしていたから、ということでしょう)
 それにしても今回は、おまさの年齢が35歳(つまり6年前はギリギリ20代)というのが、また考えさせられるものがあります。

 なにはともあれ、そんな無惨でやるせない物語でありながらも、それでも目が離せず毎月読んでしまうのは、個人的には物語のバラエティの豊かさによります。
 思えば作者はエロコメをメインとしながら、伝奇、ホラー、アクションも巧みに描いてきました。本作もまた、前月号は艶笑譚であったように、毎月何が出てくるかわからない作品で、ある意味作者を象徴するような内容なのかもしれません。


『寿司銀捕物帖』(オズノらいおん&風野真知雄)


 第二章「夏のマグロは、まずいはず」第2回となる今回は、何者かに殺された「万五郎寿司」の万五郎と生前トラブルがあった人間の線から、銀蔵が捜査を始めることになります。
 寿司便覧では銀蔵の銀寿司と並んで関脇だったものの、プライドの高さから自分以外の寿司屋を悪しざまに罵り、トラブル続きだったという万五郎。しかし何故か銀蔵の悪口は言っていなかったというのが意味深ですが――それはさておき、その中でも与兵衛寿司は、万五郎が縄張りに入ってきたら弟子ともどもただではおかないと公言していたということから、銀蔵は調べに向かうことになります。

 ここで、この与兵衛寿司の華屋与兵衛(と弟子)が、また実に原作者のキャラらしいクセつよなのですが、ラストに登場するのは、それとは次元の異なるクセつよすぎるキャラなのにひっくり返ります。
 もはや『江戸の不倫は死の香り』のキャラみたいなノリですが――前回冒頭に描かれた寿司ネタダイイングメッセージの謎もまだ全く解明されておらず、事態はさらにややこしくなった感もある今回の事件。しかし、むしろそれが期待通りに感じられます。


『艶笑譚 後家の妙薬』(子門竜士郎)


 薬種問屋・近江屋の若旦那・世之介はDTながら(いやそれだから)女体に興味津々。そんな有り様を見た父に勘当されかかる世之介ですが、そこに現れた父の知り合いの後家・おすずは、一時世之介を引き取って居候させると言い出します。
 おすずのもとで平和な日々を過ごす世之介ですが、しかし彼女の色香に悩むようになり……

 というわけで、いや、それはそうなるしかないよなあ、としか言いようのない展開となる本作。その意味では意外性は全くないのですが(おすずさんの二人の前夫が亡くなった理由はベタながらちょっと可笑しいのですが)、成年漫画家ならではの画はやはり達者というべきでしょう。
 ただ、このオチであれば、最初から史実に寄せていてもよかったのでは――とは思います。
(あと、全く関係ないのですが、年代設定が『エドゼニ』と全く同じというのがちょっと面白い)


 長くなりますので次回に続きます。

前号の紹介記事はこちら。


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