「コミック乱ツインズ」11月号(その二)
「コミック乱ツインズ」2025年11月号の紹介その二です。印象に残った四作品を一つずつ紹介します。
前号の紹介記事はこちら。
『エドゼニ』(青木雄二プロダクション コヤマサトシ&秋月戸市)
悪辣な上司のために、北町同心ながら貧困にあえぐ西川を描くエピソードも今回で第二回。信助の身元引受人である同僚の新井への無心は不発となり、いよいよ追い詰められた西川は、前回描かれたように損料屋と質屋を使って金策に走るものの、予想通りハメられてさらに借金を背負う羽目になります。
悪い時には悪いことが重なるもので、さらに金が必要になってしまった西川は、質屋に紹介された(というかグルの)金貸し・弥七のもとを訪れることに。弥七の手伝いをしている信助にとっては、現代で見慣れた光景ですが……
このまま西川は転落していく一方なのか。物語の方向性的にはそうなるのだとは思いますが、どこかで救いが欲しいと思ってしまうのも事実。何よりも、このままだと信助は現代とやっていることは変わらないのでは……
『前巷説百物語』(日高建夫&京極夏彦)
今回から連載再開の本作ですが、いよいよ物語も後半戦突入の第四章「かみなり」が始まります。
が、物語の方は又市がただ一人、八方塞がりで途方に暮れている姿からスタート――「いっそ死んじまうか」とまで思い詰めている上に、仲間たちの命もかかっているというのですから穏やかではありません。そしてそんな又市に声をかけてきた男は、はたして……
と、原作ファンであれば、こう来たか、とニヤニヤさせられること間違いなしのシーンから始まる今回、時間は遡って又市と林蔵、おちかのやり取りが描かれます。
おちかがかわら版から知ったことによれば、立木藩の江戸留守居役が隣家に夜這いに入った末に取り押さえられ、切腹したというのですが――これは実は又市と林蔵の仕掛けによるもの。
実は留守居役は色魔とでもいうべき人物で、これまで国元の百姓たちは妻や娘を奪われて泣き寝入り状態。そんな中で依頼を受けた又市たちですが、しかし留守居役が切腹したのは全く計算外だったのです。
自分の仕掛けで人死が出ることを極度に嫌う又市としては我慢できないこの事態ですが、林蔵はこれまで散々犠牲者を出してきた人間だからと特に気にも留めていない様子。事情を知らないおちかが、野次馬根性で面白がっているのにも苛つくばかり……
憤懣やる方ない又市が、久瀬棠庵先生のところを訪ねてみれば、というところで次回に続きます。
『古怪蒐むる人』
各地の怪異を蒐集する武士・喜多村を狂言回しにした江戸怪異譚シリーズ、今回は猫にまつわる「猫忠死の事」です。
菓子屋の河内屋では、十六になる美しい娘がいたものの、先代の頃から飼っているぶち猫が娘について回り、厠にまでついて回ることから噂の種になり。叩き出そうとしたところ姿を消した猫は、なんと主人夫妻の夢枕に立ち、意外なことを語ったというのですが……
喜多村が事件に関わることと、舞台が大坂から(おそらく)江戸に移されていることを除けば、「耳嚢」に記された原話にほぼ忠実な本作、猫好きにとっては嬉しいような悲しいような内容ですが、もう一匹登場する虎猫が実にかわいいのは良かったと思います。
『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
将軍・足利義昭からの御教書によって、一転同盟を結ぶことになった宇喜多と毛利。この頃の義昭は信長によって京から追放された直後ですが、やっぱり『信長の忍び』の義昭なので、色々と緊張感も薄れます。
毛利のついでのような気もしますが、なにはともあれ天下をめぐる争いに巻き込まれることになった直家ですが、その第一歩として狙ったのは三村元親。これまで幾度も直家に敗れながら、毛利と結んで反撃を目論んできた元親を除くため、直家は小早川隆景を巻き込んで……
と、短いページ数ながら、謀将同士の腹のさぐりあい――というより隆景すら動かしてみせる直家の策が印象に残ります。
