「コミック乱ツインズ」 2026年2月号(その二)
今年最初の刊行になる、「コミック乱ツインズ」2026年2月号の紹介です。今回は『エドゼニ』『ビジャの女王』『古怪蒐むる人』の三作品を紹介します。
前回の紹介記事はこちら。
『エドゼニ』(青木雄二プロダクション コヤマサトシ&秋月戸市)
前回は信助が働く金貸しに悪徳同心の田所が乗り込んできたところで終わりましたが、田所が言い出したのは、なんと同じ同心の西川の借金の棒引き。
特に棄捐令とかそういうものがあったわけでもなく、いきなり借金をなくせというのは無茶だと思いますが、しかしそれは現代の常識に過ぎないと、信助は体で理解する羽目になります。
現代ではギリギリとはいえ法の範囲内でやってきた信助。それを法の番人側から無視してくるとは(しかもこちらには法を守らせる)、前回身元引受人の新井に忠告された通りになってしまったわけですが……
そして西川の方は、田所の言うままに同心株を譲り渡し、江戸を離れることになります。これは彼自身の行動のためもあるとはいえ、大半は田所が原因なだけにやりきれません。
しかしその一方で新井が同心株を巡る二人のやり取りを密かに窺い、さらに田所の最大の悪事である蔵米横流しにも気付き始め、ただではすまないように見えます。
そして金貸し側も黙って踏み倒されたままのはずもなく――どうやって相手に一泡吹かせるのか、期待したいと思います。
『ビジャの女王』(森秀樹)
ビジャでの最終決戦は、インド墨者の増援によりラジン軍が大敗――撤退を始めたラジン軍を、二十年前の復讐のためにブブは追いかけます。しかし悪いことは重なるもので、突然発生した大規模な鉄砲水に巻き込まれたラジン軍は濁流の中で壊滅……
という、ほとんど最終回のような展開ですが、まだまだビジャの戦いは終わりません。ラジンの生死は不明、そして死んだかと思われたあの男もやはり生きていて――と、むしろ状況はほとんど変わっていないようにすら感じられます。
それは錯覚にしても、あくまでも今回撃退したのは蒙古軍の一部、それも切り捨てられた反乱分子であって、本当の戦いはこれから。次の戦いの準備が急がれますが、今回はむしろ、ラジン軍との戦いの後処理で終わった感もあります。
(物語冒頭に登場したある人物の運命がなんとも物悲しい……)
そんな中で、一人ラジンを追って旅立つブブ。後を追おうとするオッド姫への身も蓋もない言葉には可笑しみすら感じさせますが(珍しい姫のふくれっ面がかわいい)、ここでのブブの言葉は、ラストに向けた伏線というか救いのようにも感じられるのは深読みでしょうか。
何にせよ、新たな相棒とともに旅立ったブブを待つものは――今回もまた先は見えないのです。
『古怪蒐むる人』(柴田真秋)
単行本が発売されたばかりの本作の今回の題材は、「めいしん」なる秘法。原典は『耳嚢』ですが、人によっては『まんが日本昔ばなし』で「めいしん秘密の法」として放映されたものをご存知かもしれません。
とある寺の和尚が会得しているという「めいしん」――一生に一度の危難に用いるというその秘術を会得すべく、寺に通う喜多村。和尚の心も動いてきた一方で、寺の小姓は喜多村を妙に敵視します。実は彼もまた、「めいしん」伝授を和尚に願っていて……
という今回の物語の流れは、先に触れた『まんが日本昔ばなし』のそれと同様なのですが(残念ながら『耳嚢』の原文が手元にないので異同を比較できないのが申し訳ない)、怪談コレクターの喜多村が関わることで、「めいしん」伝授の条件に和尚に怪談を語るというアレンジになっているのが面白いところです。そしてそれがラストの展開にも繋がっていくというのも巧みといえるでしょう。
また、「めいしん」がひらがなで表記されるのもポイントで、そのために術の内容がわからず、はたしてどのような字を当てるのか、喜多村が試行錯誤するのにも注目です。その果てにたどり着いた結論は――なるほどというべきでしょうか。
次回、その三でラストとなります。『前巷説百物語』『姉妹倫々裏づとめ 紅と藍』を紹介予定です。
前回の紹介記事はこちら。
