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「コミック乱ツインズ」 2025年3月号(その一)

 今月の「コミック乱ツインズ」誌は、表紙&巻頭カラーが『鬼役』。1月号を除けばここ四ヶ月間表紙を飾っているわけで、もう完全に顔と言ってよいかと思います(実は連載陣でほとんど唯一の武士主人公ですしね……)。また、特別読切として『牛頭と椿』『凛九郎』『古怪蒐むる人』が掲載されています。今号も、印象に残った作品を一つずつ紹介します。

『前巷説百物語』(日高建男&京極夏彦)

 第三話「二口女」に突入した本作、今回は導入部ということで、ゑんま屋手代の角助から又市に依頼が語られ、それを受けての又市・仲蔵・林蔵のやり取りが描かれます。
 が、今回の事件はこれまで以上に難しい――というより、そもそも何が依頼なのかわからない。もちろんこれは原作からそうなのですが、とある旗本屋敷で、嫡男である前妻の子が亡くなったのが実は折檻死である――そう言ってきた後妻・縫が、折檻したのは自分であると同時に語っているというのです。はたして縫はそれを隠したいのか明らかにしたいのか? 本人もはっきりしていない上に、そもそも真偽も定かでない依頼に、又市たちもほとほと弱ってしまって……

 という展開なのですが、この漫画版では原作の内容は変えることなく、これまで以上に構成をアレンジして描いてみせます。とくに冒頭では、久瀬棠庵先生(本当に胡散臭いビジュアルが実にいい。『病葉草紙』もぜひ漫画化していただきたい)が滔々と「二口」について述べ、そしておちかが会話の中で武家の家中の不自由さを語り――と今回のエピソードのメインとなる部分について予備知識を描いているのが目を惹きます。
 また、内容的にはいつものことながら会話がメインなのですが――原作のそれを時に引き時に足し、そしてキャラクターのリアクションを吹き出しも交えてカリカチュアして描くことにより、会話に動きを出しているのに感心させられます。

 さらに、本作ではキャラクターのビジュアルが実にいいのですが、今回のメインキャラクターというべき縫については、器量は十人並みながら、気立てが良く働き者という設定そのままなのが見事というほかありません(しかしどこかで見たような……)。

 そしてもう一つのこの漫画版の楽しみは、又市・仲蔵・林蔵トリオがわちゃわちゃやり取りする姿なのですが、今回もまたそれが実に楽しい。
 後年の姿からは想像もできないほど表情豊かな又市と、容貌魁偉だが常識人の仲蔵、そしてコイツこそ後年の姿が想像できないお調子者の林蔵と――気のおけない三人のやり取りがファンとしては何とも嬉しくなります。毎回言っている気もしますが本当に……(未来を知っているとなおさら)。

『江戸の不倫は死の香り』(山口譲司)

 毎回さまざまなヒロインが登場する本作ですが、今回のメインとなるのは父を亡くして女中奉公に出ることになったお兼――と書くとごく普通のようですが、実は彼女はいわゆる巨女&メカクレという、何というかある意味攻めたキャラなのが目を惹きます。性格も素朴な良い子で、もうこのキャラでラブコメを描いたほうがいいのでは、平和な話にしましょうよ――という願いが叶うはずはもちろんなく、隠れマニア趣味だった店の旦那に目を付けられたおかげで、可哀想なことになるというのが今回のお話です。

 いやもうほとんど毎回嫌な気分になる本作ですが、しかし今回はラストに火付盗賊改長官・水野甲子二郎が登場して思わぬ展開を見せることになります。この水野甲子二郎という人物は、後の水野忠徳――この後、幕末に外国奉行という立場で諸外国と渡り合った傑物で、もうこれからはこのキャラが悪人を裁く話にしたほうがいいのでは――という願いが叶うはずももちろんないと思います。
(ちなみに今回、『藤岡屋日記』よりというクレジットがついていましたので、いつか調べてみたいと思います)

『ビジャの女王』(森秀樹)

 ひとまず最大の危機は逃れたビジャですが、今回はそのビジャから離れ、更迭されたラジンを巡る物語となります。ハーン直属部隊によって本国に移送中のラジンを追う副官の「名無し」ですが、彼が思い出すのはかつてラジンから聞かされた「精霊ジン」のこと――というわけで、拘束直前にラジンが骨壺と偽って持ってこさせた壺の中に潜むジンの存在が、いよいよ語られます。

 少年時代のラジンが父とともに冬虫夏草の買付に行った際(回想の回想)、ヒマラヤで出会った奇怪な牟尼。あからさまにうさんくさいこの牟尼は、壺の中に潜む、動く者、大声を出す者の命を奪うというジンを二人に見せ――と、虫ではないとは否定されているものの、やはりどう考えても何かしらの虫を使った生物兵器(漫画版『墨攻』の虫部隊とはさすがに関係ないでしょうが……)に思えるジン。その真偽と効果のほどはまだ不明ですが、本物であれば恐ろしいことになるでしょう。

 それにしても冬虫夏草といい、この牟尼がどう見ても以前チラッと会話の中に出てきたあの人物の父親としか思えないのですが――思わぬところで物語が繋がっていたのに驚かされます。

 次回に続きます。(全二回)

前の号の紹介記事はこちら。


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