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【連作掌編】『バイバイ』 第四(最終)話「バイバイ」

前の話し

第四(最終)話「バイバイ」 作:MMPP.K

 その日は、特に予定はなかった。
 もともと大した約束でもなかったのに、少しだけ時間が空いた。
 だから、会うことになった。
 いつも通りだった。

 駅で合流する。

「おつかれ」
「おつかれ」

 それだけで会話は始まる。

 歩き出す方向は、もう決まっているようで決まっていない。
 どこかに行くというより、ただ一緒に歩く感じだった。

「何食べる?」
「なんでもいい」
「またそれ」

 軽く笑う。
 その笑い方も、いつも通りだった。

 結局、少しだけ落ち着いた店に入る。
 前にも来たことがあるような気がする。
 たぶん来ている。

 注文は早い。
 迷いはない。
 慣れている感じだけが積み重なっていく。

 料理が来るまで、少しだけ沈黙がある。
 スマホを少し見て、また置く。

「今日さ」

 どちらかが言いかけて、止まる。

「ん?」
「いや、別に」

 そのまま流れる。
 そういう流れはもう珍しくない。

 食事は普通に終わる。
 美味しいとも、不味いとも強く言わない。

「まぁ、いい感じやったね」
「うん」

 店を出ると、少しだけ風が強かった。

 駅まで歩く。
 いつもの距離。
 いつもの時間。

 でも、少しだけ空気が違う気がした。
 理由はない。
 説明もできない。

 駅前に着く。
 いつもの別れ道。

「じゃあ、ここで」
「うん」

 普通なら、それで終わる。

 でも、その前に少しだけ沈黙があった。

「さっきのさ」

 どちらかが言う。

「うん?」

「別に怒ってるとかじゃないけど」
「うん」

 言葉が続く。
 でも、はっきりした内容ではない。

「なんか、いつもそういう感じやん」
「そう?」

 また沈黙。

「いや、別にいいねんけど」
「うん」

 その「うん」が、少しだけ重くなる。

「まぁ、いいや」

 そのまま、空気が終わる。

 相手が一歩先に動く。

「帰るわ」
「うん」

 先に歩き出す背中を、少しだけ見ていた。

 改札に向かう途中で、一度だけ振り返る。
 手が少し上がる。

 こっちも軽く振り返す。

 そのまま、見えなくなる。

 少しだけ残る音がある。
 駅のアナウンスと、人の声と、電車の音。

 スマホを見る。
 何も来ていない。

 しばらくそのまま立っていた。

 それから、小さく言う。

「バイバイ」


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