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【連作掌編】『バイバイ』 第三話 既読とレストラン

前の話し

第三話「既読とレストラン」 作:MMPP.K

 スマホを開くと、既読がついていた。
 それだけで終わっているメッセージがいくつかある。
 返信はまだない。

 特に急ぎの用事ではない。
 だから送ったこと自体を少し忘れていた。
 それでも、ふとした瞬間に思い出す。

「忙しいんやろな」
 そう思うことで終わらせる。
 終わらせることには慣れている。

 昼休み、もう一度スマホを見る。
 やっぱり返事はない。
 通知は静かなまま。

「まあいいか」
 声には出さない。
 出さなくても、そう思うだけで一度は落ち着く。

 その日の夜、返事が来た。

『ごめん、今日ずっとバタバタしてた』

 短い文章だった。

 それだけで、少しだけ空気が変わる。
 怒っていたわけではないのに、怒っていなかったことが分かると、少しだけ安心する。

『大丈夫』とだけ返した。

 数日後。
「ご飯行く?」
 と向こうから来た。

 その日は少しだけ、いつもより早く待ち合わせ場所に着いた。
 駅前のベンチに座る。
 人の流れをぼんやり見る。

 遠くから手を振るのが見えた。
 いつも通りの顔だった。

「待った?」
「ちょっとだけ」

 そのまま歩き出す。
 どこに行くかは決まっていない。

「どこ行く?」
「どうしよか」

 結局、少しだけいいレストランに入ることになった。
 一人では入らないような店だった。

 店内は静かだった。
 照明が少しだけ柔らかい。
 会話の声も自然と小さくなる。

 料理が運ばれてくる。
 特別な料理ではないのに、少しだけ丁寧に見える。

「ここ、いいね」
「うん、落ち着く」

 しばらく、特に大きな話はしない。
 食べて、飲んで、それだけ。

 でも、沈黙が気まずくない。
 むしろ、何かを埋めているような沈黙だった。

「また来たいね」

 自分がそう言うと、相手は少しだけ笑って答えた。

「うん」

 その「うん」は、いつもと同じだった。
 でも、少しだけ遅かった気もした。

 帰り道。
 駅まで並んで歩く。

「今日はちゃんと話せた気がする」

 どちらからともなく、そんな話になる。

「そう?」
「うん、ちゃんと」

 その言葉に意味があったのかは分からない。
 でも、その時はそう思った。

 駅に着く。
 いつもの別れ道。

「じゃあね」
「うん、また」

 手を振る。
 振り返される。

 それだけのはずだった。

 でも、ホームに降りてから、少しだけスマホを見た。
 何も来ていない。

 そのことに、特に意味はないはずだった。


第四(最終)話「バイバイ」
第二話「映画とマクド」

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