【連作掌編】『バイバイ』 第二話 映画とマクド
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第二話「映画とマクド」 作:MMPP.K
映画館の中は、思っていたより暗かった。
当たり前のことなのに、なぜか少し落ち着かない。
座席に座ると、隣の気配だけがやけに近く感じる。
ポップコーンの袋が少しだけ擦れる音がした。
映画が始まってからは、ほとんど会話はない。
ただ、スクリーンの光だけが二人の顔を交互に照らしていた。
物語は静かに進んでいく。
特別な展開があるわけではないのに、最後に向かって少しずつ何かが積み上がっていくタイプの映画だった。
横を見ると、相手は最初から最後までほとんど動かなかった。
ただ、途中から呼吸のリズムが少しだけ変わった気がした。
気のせいかもしれない。
でも気のせいじゃない気もする。
エンドロールが流れ始めた時、隣から小さく鼻をすする音がした。
振り向くと、思っていたより目が潤んでいた。
というより、普通に泣いていた。
「そんな泣く?」
思わず聞いてしまった。
相手は少しだけ笑って、
「だって、あれは反則でしょ」
と言った。
「どこが?」
「最後の選び方」
その一言だけで、もう話が続かない気がした。
映画館を出ると、外の空気は少しだけ冷たかった。
さっきまで別の世界にいたような感覚が、少しずつ薄れていく。
でも、まだ完全には戻っていない。
「どうだった?」
歩きながら聞く。
「よかった」
即答だった。
「どこが?」
「全部」
その返事は、少しだけ重かった。
全部、という言葉は便利だ。
でも、便利すぎて、時々本当かどうか分からなくなる。
駅の方向へ歩きながら、次にどこへ行くかを決める流れになる。
自然に、というより、いつもそうなる。
「マクドでいい?」
相手が言った。
「いいよ」
自分もそう答えた。
マクドナルドの店内は、映画館よりずっと現実だった。
音も明るさも、逃げ場がない感じがする。
ポテトを食べながら、さっきの映画の話になる。
「主人公、最後どう思った?」
そう聞かれた。
「逃げたと思う」
そう答えた。
少し間があく。
相手はポテトを口に入れてから、
「私はそうは思わなかった」
と言った。
「じゃあ何?」
「選んだだけじゃない?」
その言い方が、少しだけ優しかった。
でも、同時にどこか引っかかった。
「選ぶって、あれで?」
「うん。あれしかなかったんじゃない?」
また沈黙になる。
さっきまで一緒に見ていた映画が、急に違うものに見えてくる。
同じシーンを見ていたはずなのに。
「まあ、人それぞれか」
自分がそう言うと、
相手は小さく頷いた。
でも、その頷きはさっきより少しだけ遅かった。
店を出る頃には、空気は普通に戻っていた。
何もなかったみたいに歩き出す。
駅の前で立ち止まる。
どちらに行くか、いつも通りの別れ道。
「じゃあ」
「うん」
手を振る。
振り返される。
それだけ。
でも、今日は少しだけ違った。
改札を抜ける直前、もう一度振り返ると、まだそこに立っていた。
そのまま少しだけ手を振っている。
その姿が、なぜか長く残った。
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