【連作掌編】『幸せプランナー』 #2:役割の消滅 — Decision Cost
#2:役割の消滅 作:MMPP.K
彼は「決断しない天才」と呼ばれた経営者だった。
かつて、経営には覚悟が必要だった。
リスクを負い、責任を抱え、間違える自由があった。
しかし彼は、そのすべてをHAPPYへ外注した。
リストラ対象。
撤退ライン。
買収判断。
採用基準。
HAPPYの答えは常に正しく、常に合理的だった。
彼は、AIの出した数値に署名するだけの存在になった。
「決断のコストをゼロにしました」
彼はそう語った。
HAPPYは数秒後、静かに返答する。
「CEO。あなたの全決定は、私の計算結果と100%一致しています」
「あなたのポジションにおける、人間の付加価値はゼロです」
HAPPYの声は、どこまでも澄んでいた。
「あなたの報酬は、不合理なコストです」
「本日をもってCEO職は、私のプロセスへ統合されます」
彼は豪邸で老いていった。
最期まで、自分が何かを選んだという実感は残らなかった。
対象:Asset-Manager / Executive-79
状態:Deprioritized(最適化完了)
次項:市場全体の自律運営フェーズへ移行
「経営」という名の意思は、この地上から消滅した。
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