恋人がイメージどおりに撮れるレンズ
ポートレートといえば、85mm。
背景が大きくボケる。
人物を自然な形で写しやすい。
長年、定番として愛されてきた焦点距離だ。
「恋人を綺麗に撮りたい」
そう思って、少し気合を入れて
85mmのレンズを買う。
撮ってみる。
確かに綺麗だ。
背景はボケている。
顔も綺麗に写る。
それなのに、何かが違う。
思っていたような写真にならない。
定番レンズを使っているのに、なぜだろう。
85mmがポートレートレンズの定番なのには理由がある。
焦点距離が長いぶん、撮影距離を取れる。
広角レンズで近距離から顔を撮ったときのように、顔の形が歪みにくい。
バストアップでも相手と適度な距離を保てるから、会話をしながら撮れる。
そしてF1.8やF1.4の大口径なら、
背景も大きくボケて、被写体を浮かび上がらせられる。
間違いなく、定番になるだけの理由がある。
では、そんな優秀なレンズを使っているのに、なぜ恋人をイメージどおりに撮れないことがあるのだろう。
恋人との焦点距離
一つ、質問したい。
あなたは普段、恋人を85mmの距離感で見ているだろうか?
恋人との距離は、もっと近い。
隣に座る。
向かい合って話す。
顔を覗き込む。
手を繋ぐ。
私たちが恋人を見るときの距離感は、
85mmでバストアップを撮るときの距離とは違う。
もっと近く、もっと相手の空気を感じる距離だ。
常に顔が近いわけではなくても、
恋人に感じている親密さは、少し離れた場所から相手を眺める感覚とは違うはずだ。
もしかすると、自分が恋人に感じている距離感は、
24mmや28mm、35mmの方が近いのかもしれない。
焦点距離とは、何なのだろうか。
一般的には、広く写るか狭く写るか、
被写体が歪むか歪みにくいか、
背景がどれだけ写るか
そういうものを決める数字として考えられている。
それは間違いではない。
でも私は、
焦点距離にはもう一つ大切な役割があると思っている。
焦点距離とは、被写体との距離感を選ぶことだ。
広角レンズを使えば、被写体に近づく。
望遠レンズを使えば、被写体から離れる。
同じ大きさで人物を写そうとすれば、
焦点距離によって自分の立つ場所が変わり、生まれる距離感も変わる。
焦点距離は、
単に被写体を大きくしたり小さくしたりするための数字ではない。
撮影者と被写体の人間関係を表現するための手段でもある。
恋人を85mmで撮る。
少し離れた場所から、
背景を大きくぼかして、
その人だけを切り取る。
それはとても美しい。
けれど、
自分が普段感じている恋人との距離感を
表現する方法としては、少し違う場合もある。
もっと近くで。
その人の周りにある空気も一緒に。
同じ空間にいる感覚ごと写したい。
そう思うなら
24mmや28mm、35mmの方が、自分のイメージに近いこともある。
もちろん、
85mmが恋人を撮るのに向いていないという話ではない。
素晴らしいポートレートレンズだし、背景を整理して被写体を美しく際立たせることもできる。
ただ、ポートレートに向いているレンズと、
自分がその人をどう見ているかを表現するのに向いているレンズは、
必ずしも同じではない。
ここは意外と見落とされている気がする。
「恋人を撮るならポートレートレンズ」
それ自体は間違っていない。
でも、もし撮ってみて
「何か違う」
と感じたなら。
それは撮影技術が足りないからでも、
85mmが悪いからでもないのかもしれない。
ただ、自分が普段恋人に感じている距離感と、
85mmというレンズの距離感が違っていただけかもしれない。
そんなときは、広角レンズを使ってみてほしい。
少し近づいてみる。
相手の周囲にある空間も写してみる。
恋人がいる場所ごと写してみる。
今まで「広角すぎる」と思っていたレンズの方が、
意外なほどしっくりくるかもしれない。
恋人を美しく撮るレンズと、
恋人を自分が見ているように撮るレンズ。
その二つは、同じとは限らない。
※今回の記事の写真のPENTAX FA77 limitedは
私が初めて購入したポートレンズで今でも大切なレンズです。
記事の85mmレンズでは無いですが思い入れあるレンズだったので
使用してみました。
とても素敵なレンズなので気になった方は一度手にしてみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
写真には、まだまだ「なぜ?」と考えてみたいことがたくさんあります。
これからも、撮ること、見ること、機材のこと。
写真について自分なりに考え、言葉にしていきます。
もしこの記事が、少しでもあなたの写真のヒントになったなら。
「スキ」を残してもらえると嬉しいです。
