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良いポートレートには、必ず"物語"が写っている

「良いポートレートとは?」

そう聞かれたら、皆さんは何と答えるだろうか。

露出が適正な写真。

構図が綺麗な写真。

ライティングが美しい写真。

もちろん、それも写真の良さを決める大切な要素だ。

だが、私はそれだけでは足りないと考えている。

私が考える良いポートレートとは、

写真を見たときに、ストーリーが見える写真だ。

「静止画なのにストーリー?」

そう思う人もいるかもしれない。

しかし、良い写真には不思議と物語が浮かんでくる。

写真の中で何かが起きている。

あるいは、この写真の前後に何かがあったように感じる。

そんな写真には、単純に「綺麗」というだけではない魅力がある。

では、ストーリーが見える写真とは、どんな写真なのだろうか。

例えば、こんな写真を想像してみてほしい。

例A

純白のドレスを纏った新婦と新郎。
その周りを取り囲む人々。

例B

父親と娘が手を繋いで立っているツーショット。

皆さんには、どんなストーリーが浮かぶだろうか。

例Aは分かりやすい。

「結婚式に祝福されている新郎新婦」

おそらく、多くの人がそう感じるだろう。

では、例Bはどうだろう。

第三者から見れば、ただの親子のツーショットにしか見えないかもしれない。

しかし、父親にとってはどうだろう。

娘が思春期を迎え、いつか父親との距離が少しずつ離れていったとき。

その写真を見れば、

「まだ娘が自分のことを大好きと言ってくれていた頃」

「まだこうして手を繋いで歩いてくれていた頃」

そんな記憶が蘇ってくるかもしれない。

このように、良い写真といっても、物語には二つの種類があると思う。

誰が見てもストーリーが浮かぶ写真。

そして、

特定の人物が見たときにだけ、ストーリーが浮かぶ写真。

私は、後者もまた非常に価値のあるポートレートだと思っている。

むしろ、本人にしか分からないストーリーがあるからこそ、その人にとっては何物にも代えられない一枚になることもある。

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ポートレートに物語を持たせる

では、どうすれば第三者のフォトグラファーがポートレートに物語を持たせることができるのか。

大切なのは、被写体にとっての「未来」が、どんな時間なのかを想像することだ。

例えば、子供と親を撮るとき。

子供が親と手を繋いでくれる時間は、永遠に続くわけではない。

いずれ思春期が来れば、親子の間にはある程度の距離が生まれる。

だからこそ、その距離が生まれる前の時間を写真として未来に残す。

今この瞬間を残すだけではない。

いつか来るかもしれない未来まで想像して、今を撮る。

そうすれば、その写真は単なるツーショットではなくなる。

いつか親子の間に距離が生まれたとき、

「昔はこんなふうに手を繋いでいた」

と、親子の絆を思い出す一枚になる。

ただ、このような写真を撮ることは簡単ではない。

なにせ、このようなストーリーは人それぞれ違うからだ。

ある人にとっては何気ない日常が、別の人にとっては一生残したい瞬間かもしれない。

だからこそ、被写体一人ひとりに合わせて、その人だけのストーリーを想像する必要がある。

では、それをするにはどうしたらいいのか。

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他人の人生に触れる

私が思う答えは、

他人の人生に、少しでも多く触れることだ。

読書でもいい。

映画でもいい。

何ならショート動画でもいい。

とにかく、第三者の人生や価値観に触れ、自分の中に少しずつ蓄積していく。

自分とは違う人生を歩んだ人が、何を大切にしているのか。

何に喜び、何に悲しむのか。

どんな出来事を幸せだと感じるのか。

そうしたものを知ることで、自分の中にある「人を見るための引き出し」が増えていく。

もちろん、他人の人生を完全に理解することなんてできない。

それでも、多くの人の人生や価値観に触れていれば、

「この人にとって、この瞬間にはどんな意味があるのだろう?」

と考えるきっかけは増えていく。

すると、目の前にいる人を単なる「被写体」として見るのではなく、

「この人には、どんな人生があるのだろう」

「この人にとって、今という時間はどんな意味を持つのだろう」

と想像できるようになる。

そして、その想像力が、

写真に写っていない物語を残す力になる。

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ポートレートは「今」だけを写すものではない

写真は、一瞬を切り取るものだ。

だからこそ、私たちは「今この瞬間」をどう綺麗に撮るかを考える。

しかし、本当に残したいものは、その一瞬だけではないのかもしれない。

その写真を見る未来の自分。

その写真を見る家族。

何十年後かに、その写真を見返す人。

そこまで想像すると、同じ被写体でもシャッターを切る瞬間は変わってくる。

今は当たり前に笑っている人も、

いつかは、その場にいなくなるかもしれない。

今は当たり前に繋いでいる手も、

いつかは繋がなくなるかもしれない。

だからこそ、

「今、何を撮るか」だけではなく、「いつか、この写真を見たときに何を思うのか」まで考えて撮る。

それが、ポートレートに物語を持たせるということなのだと思う。

露出が完璧でなくてもいい。

構図が少しくらい崩れていてもいい。

その写真を見たときに、

「このとき、こんなことがあったな」

と思い出せる。

あるいは、第三者であっても、

「この後、何が起きたんだろう?」

と想像したくなる。

そんな写真には、時間を超えて残る力がある。

良いポートレートとは、綺麗な写真だけではない。

そこに写っている一瞬から、その前後のストーリーまで想像できる写真。

そして、いつかその写真を見る人の中に、新しいストーリーが生まれる写真。

私は、そんなポートレートこそが、

「良い写真」なのだと思う。


そして最後に

例Bのお嬢さんの未来の姿が例Aだったとしたら…




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