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怖がる場所を、間違えないで|便潜血・高血圧・「いつもの所見」を放置しないための話|再検査と言われたら #04

怖がるべき場所は、名前の怖い所見ではありません。

この連載では、ここまで「怖がらなくていい」話を続けてきました。要精密検査の9割以上は念のためで終わる。数字はその日のコンディションで揺れる。心電図の怖い名前も、たいていはやさしい。

今日は、その逆側の話をします。
診察室で長年見てきた、少し切ない「ねじれ」があります。不完全右脚ブロックのような優しい所見に青ざめて眠れなくなる方がいる一方で、本当に確認が必要な項目を「たぶん大丈夫」と放置してしまう方がいる。

不安の大きさと、実際の危険の大きさは、しばしば一致しないのです。今日は「こちら側は放置しないで」という項目を、実際にあったパターンとしてお話しします。

「痔があるから」——便潜血のいちばん危ない解釈
便潜血で陽性が出たとき、いちばんよく聞く言葉が「痔があるので、それだと思います」です。
たしかに、痔でも陽性は出ます。でも、痔と大腸がんは、同時に持てるのです。「痔のせい」という説明がありえることと、「痔のせいだと確認できた」ことは、まったく別の話。
痔だと思って放置していた陽性が、実は大腸がんだった。診察室で、実際に見てきたパターンです。
思い出してください。精密検査を受けた人の9割以上は「何もなし」で終わります。大腸内視鏡は、9割の確率で安心を、残りの確率で早期発見を持ち帰れる検査です。どちらに転んでも、受けた人が勝ちます。

「倒れて初めて」——高血圧のもったいなさ
高血圧の怖さは、症状がないことです。痛くもかゆくもないから、健診で指摘されても後回しになる。
報道された調査があります。脳出血で救急搬送された約350人を調べたところ、50歳未満の患者さんは全員が高血圧で、そのうち約8割は治療をしていなかったそうです。50代でも7割、60代でも6割が未治療だった——つまり「倒れて初めて、血圧と向き合う」方が、それほど多いということです(ある新聞の記事より → https://www.asahi.com/sp/articles/AST3V0RFYT3VUTFL005M.html )。
この数字は、裏返すと希望です。血圧は、コントロールできる。倒れる前に向き合えば、防げる可能性が高い病気なのです。

健診で血圧を指摘されたら、まず家で測る(先週のリールでお話しした、朝すわって1〜2分のあれです)。そして数字を持って、一度受診してください。

「いつもの所見だと思った」——慣れの罠
毎年おなじ所見で引っかかっていると、通知が来ても「ああ、いつものやつ」と思ってしまう。これも危ない瞬間です。
いつもは背骨の彎曲で引っかかっていた方が、その年だけは肺の影で引っかかっていた。でも「いつものやつ」と思い込んで、確認しなかった——そういうパターンがあります。
通知の紙は、毎年同じに見えて、同じではありません。今年の指摘項目がどこなのか、そこだけは毎年、指差し確認をしてください。
そしてもうひとつ。体の検査結果について相談する相手は、医師にしてください。かかりつけの整体師さんやジムのトレーナーさんは、体の心強い味方ですが、レントゲンの影の判断は専門外です。「誰に聞くか」を間違えると、答えも間違えてしまいます。

「薬だけは飲みたくない」——我慢くらべの果てに
痛風発作を繰り返しながら、「薬に頼りたくない」と我慢を続けて、最後は靴が履けなくなってしまった方がいました。
自然に治したい、薬を増やしたくない。その気持ちは、よく分かります。治療の方針は、あなたが決めていいのです。ただ、我慢くらべの相手が「病気」の場合、負けたときに失うものが大きすぎる。
薬を使う・使わないの前に、まず「いまの選択肢を全部聞く」だけでも受診の価値があります。聞いたうえで決める我慢と、聞かずに続ける我慢は、別物です。

放置しないための、3つの行動

長くなったので、行動だけまとめます。
・便潜血の陽性は、自己解釈せずに内視鏡の予約を
・血圧の指摘は、家で測って、数字を持って受診を
・毎年の通知は「今年はどの項目か」を指差し確認を

怖がらなくていい場所では、ホッと深呼吸を。怖がるべき場所では、予約の電話を。この連載が伝えたいことは、結局この一行に尽きます。

次回は、「再検査に行くと、何をされるのか」。足が向かない、いちばんの理由に答えます。フォローしておくと、届きます。

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