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健診で「要再検査」と言われたあなたへ|数万人の結果を見てきた内科医が、最初に伝えたいこと

その封筒、開けるのに勇気がいりますよね。

健診の結果が届いて、封筒をしばらく開けられなかった。開けたら「要再検査」の文字があって、夜中にスマホで病名を検索して眠れなくなった。
診察室で、そういう方に何度も会ってきました。

医師になって約20年、外来と健診の仕事を並行してきたので、健診結果はおそらく数万人分は読んでいます。
今日は、再検査の通知を前にとまどっているあなたに、私が診察室でいつも最初に伝えていることを書きます。

まず、この数字から。
人間ドックを受けて、すべての項目が「A判定」で返ってくる人。どのくらいいると思いますか。
全国集計で、およそ10人に1人です。年齢が上がるほど減って、60歳以上では100人に4人ほど。つまり、何かしらの項目で引っかかるのは、特別なことではなくて、健診ではむしろ普通のことなんです。
「要再検査」の紙を持っているのは、あなただけじゃない。まずそこから。

次に、いちばん心配な「がんだったらどうしよう」について。
がん検診で「要精密検査」になった人のうち、実際にがんが見つかる割合は、胃がん検診でおよそ50人に1人。いちばん高い乳がん検診でも20人に1人ほどです(国立がん研究センターの集計より)。
裏を返すと、精密検査を受けた人の9割以上は、がんではなかったという結果になります。要精密検査は「がんの疑いが濃厚」という意味ではなく、「念のため、もう一段くわしく見せてください」という意味なんです。

じゃあ全部安心かというと、そうは言いません。
血圧や血糖、コレステロールのような生活習慣病系の再検査は、少し話が別です。私の経験だと、若い方の多い職場の健診では、再検査で実際に治療や経過観察が必要になる方は1〜2割ほど。ご高齢の方が多い地域では3〜4割ほどになります。年齢とともに「本物」の割合が増えていく領域です。

ここまでを整理すると、こうなります。
・何かの項目で引っかかること自体は、ごく普通 ・がんの精密検査は、大半が「念のため」で終わる ・生活習慣病系は、年齢が上がるほど本当に対応が必要なことが増える

だから私が伝えたいのは「怖がらなくていい」でも「怖がってください」でもなくて、怖がる場所を間違えないでほしい、ということです。

診察室で長年見てきた、少し切ない「ねじれ」があります。
心電図の「不完全右脚ブロック」のような、健康な人にもよく見られる所見に青ざめて眠れなくなる方がいる一方で、本当に確認が必要な項目を「たぶん大丈夫」と自己判断して、再検査に来ない方がいる。
不安の大きさと、実際の危険の大きさは、必ずしも一致しないんです。紙の上の文字だけでは、その区別がつかないのは当然です。区別をつけるのが、再検査という仕組みの役割です。

もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。
健診の数値は、その日のコンディションでけっこう揺れます。
たとえば腎機能の指標のクレアチニン。前日にお酒を飲んで、当日は朝から絶食で、暑い時期に水も飲まずに健診会場へ。この状態だと体が軽い脱水になって、血液が濃くなり、クレアチニンが普段より高く出ることがあります。同じ量の塩でも、たっぷりの水に溶かすか、少ない水に溶かすかで濃さが変わるのと似ています。
こういう方が水分をとって再検査を受けると、今度は正常値。実際、よくあります。
風邪をひいた直後の白血球、生理前後の尿検査、プロテインを飲んでいる方の尿酸値。どれも同じように「一時的な揺れ」で引っかかることがある項目です。このあたりは、次回からの記事で1つずつ丁寧に説明していきますね。

そもそも「基準値」というものは、健康な人を集めたときに95%の人が収まる範囲のことです。定義からして、健康でも20人に1人は範囲の外に出ます。1回の数値で白黒をつけるものではなく、去年、一昨年からの流れで見るものなんです。

最後に。
ここまで読んで「なんだ、思ったより大丈夫そう」と感じた方にこそ、お願いがあります。
再検査、行ってください。
大丈夫かどうかの答え合わせは、検索ではできません。あなたの去年の結果と、今年の体調と、その日のコンディションまで並べて初めて「これは揺れです」「これは対応しましょう」の区別がつきます。それができるのが再検査の場です。
9割の人は「念のためでしたね、よかった」と言って帰る場所です。そして残りの人にとっては、早く見つかって本当によかった、に変わる場所でもあります。
封筒を開けたあなたは、もう最初の一歩を踏み出しています。次の一歩も、どうぞ。

このシリーズでは、再検査と言われたときの「?」に、ひとつずつ伴走していきます。次回は、血液検査の「一時的な揺れ」の話。フォローしておくと、続きが届きます。

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