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【エッセイ】【音楽】我が道を往く ザ・バンド、ヴァン・モリソン、ドクター・ジョンを巡る雑感

 しばらくはたいそう誇らしかった……。
 You Tube Musicからザ・バンドのアーティスト公認、トップリスナーのバッジを獲得したという通知があった。以前、全世界のリスナーの上位0.25%に入ったという連絡はあったが、今回はどうやら0.01%に入ったということらしい。メンバー全員が鬼籍に入った今、一体誰が公認してくれるのかという疑問はさておき、結構すごいことじゃないかと一人悦に入っていたところに、先日、今度はジョニ・ミッチェルのトップリスナーになったとの通知が届いた。確かに3年前の復帰ライブの頃は狂ったように聴いていたが、最近はそこまでヘビーローテーションで再生しまくっていたという自覚はない。これって案外簡単にもらえるんじゃねえ?このぶんならニール・ヤングのトップリスナーのバッジも近いうちに獲得できそうな気がする。ボブ・ディランはハードルが高いにしても、ヴァン・モリソンやドクター・ジョン、次々と「ラスト・ワルツ」参加ミュージシャンのトップリスナーとなってバッジをコレクションし、目指せフルコンプリート!——むなしい人生である……。

ラスト・ワルツ

 ロビー・ロバートソンはヴァン・モリソンとドクター・ジョンに対し、「同期」に似たような感覚を持っていた節がある。ピーター・バラカンのインタビューに対し、同じ1968年にシーンに登場した“変な”アルバムとして、ドクター・ジョン「グリ・グリ」、ザ・バンド「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」、ヴァン・モリソン「アストラル・ウィークス」の3作を挙げたという。確かに今でこそどれも歴史に残る名盤とされているが、サイケデリック・ムーブメントの真っただ中、古くて新しいこれらのレコードに針を落とした瞬間、当時の人々の耳にはどう響いたか——それぞれのオープニングナンバー、「グリ・グリ・ガンボ・ヤ・ヤ」(Gris-Gris Gumbo Ya Ya)の妖しく立ちこめる異教的ムード、「怒りの涙」(Tears of Rage)の異様にスローなテンポとリチャード・マニュエルの震えるようなファルセットヴォイスから呼び起こされる悲劇的感情、そして「アストラル・ウィークス」(Astral Weeks)の深い霧の中を彷徨うかのような瞑想的、神秘的雰囲気——一聴にして独自の世界観に引き込み、魂の深層に触れるようなそのサウンドは、聴く者にさぞや奇妙で新鮮な印象を与えたことだろう。
 その後、3者の運命は交わり、1976年のザ・バンドのラスト・コンサートは総決算だった。記録映画「ラスト・ワルツ」(マーティン・スコセッシ監督)は見どころが多く、ファンそれぞれに思い入れのある場面があるようだが、ザ・バンドの大ファンとして知られる中国文学者の井波律子が、ドクター・ジョンの「サッチ・ア・ナイト」(Such a Night)、ロビー・ロバートソンとリック・ダンコの細かな足の動きを挙げていたのには、そんなところをと驚いた。ドクター・ジョンのピアノとザ・バンドのバック、肩の力が抜け、ぴったり息の合った、実に楽しそうな演奏である。

  池上晴之の「ザ・バンド 来たるべきロック」は読みごたえ十分の、確かな耳で聴きとった熱量高きザ・バンド論で、後半は「ラスト・ワルツ」のトリヴィア満載、これ以上なく行き届いた鑑賞ガイドになっているが、映画には登場しない曲、ヴァン・モリソンが歌うビング・クロスビーの持ち歌「アイルランドの子守唄」のリハーサル時、ステージの脇で聴いていたドクター・ジョンが感動で涙を流したという胸を打つエピソードを教えられた。そして「熱唱」という言葉はこのパフォーマンスのためにあるというようなヴァン・モリソンの「キャラバン」(Caravan)、音楽とともに世界中を旅するジプシーのキャラバンへの高らかな賛歌は、ツアー活動から身を引くザ・バンドへのはなむけにふさわしいだろう。その意気に応えるようなザ・バンドの熱演、そして興奮冷めやらぬ中、ステージから颯爽とはけるヴァン・モリソンに、ロビー・ロバートソンが送るかけ声がいい、「Van the man!」——。

 こうしてみると、ドクター・ジョンもヴァン・モリソンも、上述のロビー・ロバートソンと同じような感覚を、お互いに対して抱いていたのではないかと思えてくる。反時代的で「我が道を往く」者同士、心強き同世代の仲間としての連帯感のようなものを。

ガース・ハドソン(1937~ 2025)

 今年1月、ザ・バンドの最後の存命メンバーでサウンドの要だったガース・ハドソンが亡くなり、琴線に触れるところもあって、ザ・バンドに関する雑文をぼちぼちものしてきましたが、そもそもザ・バンドについてたいして知識があるわけでもないのに、分かった風な口を利くのもおこがましいので、ザ・バンド関連の記事はマガジンにまとめて、今年いっぱいで打ち止めとすることといたします。まあ、所詮はもっぱらサブスクで聴いている程度のファンですので。


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橋本 健史 公開中の「林檎の味」を含む「カオルとカオリ」という連作小説をセルフ出版(ペーパーバック、電子書籍)しました。心に適うようでしたら、購入をご検討いただけますと幸いです。