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『私という病』第29話|異世界の住人たち

2025.10.1
世界は、水のようなものだ。

あちらの水と、こちらの水。
同じ透明さをしていても、
同じ性質とは限らない。

それなのに、なぜ人は、
すべてが同じ世界に生きていると
思い込むのだろう。

あの人の見ている世界と、
この人の見ている世界は、
本当に同じなのだろうか。

濁った水に浸る場所と、
山の上流から湧き出る水に触れる場所。
同じ「水」と呼ばれていても、
そこに棲むものは、まったく異なる。

恨み、妬み、責め、奪うこと。
それが当たり前として循環する世界がある。

一方で、
愛、奉仕、無償の気遣い、
思いやりが、努力ではなく
自然に行き交う世界もある。

人は、どちらの世界に
「住んでいる」のだろうか。

ひどい人は、確かに存在する。
だが、なぜあなたは、
そこから離れられないのだろう。

不幸が連鎖する場所と、
幸運が静かに重なっていく場所。

出来事が違うのではない。
住んでいる世界が、違うのだ。

国家は、大きな水槽だ。
組織は、中くらいの水槽だ。
家族は、小さな水槽だ。

同じ会話、
同じ価値観、
同じ常識が、循環する。

人は、
「皆同じ世界に生きている」
そう教えられてきた。

だが本当に、
そうだろうか。

認識は、無意識のうちに形づくられる。
気づかぬまま、
世界の枠組みは受け継がれていく。

操られていると感じないのは、
それが「普通」だと
信じているからだ。

あなたの見る世界と、
隣の人の見る世界は、
驚くほど異なっている。

水槽の中で生きる魚と、
社会の中で生きる人間。

その違いに、
気づいたことはあるだろうか。

選択は、常にあなたにある。
否定はしない。

ただ、
別の世界へ移る余地が
残されていることを、
伝えたいだけだ。

人はそれぞれ、
自分の道を進む。

あなたは、
あなたの住む世界へ向かう。

主人公は、あなたか。
それとも、
誰かの物語の登場人物か。

どちらを選ぶかは、
誰にも奪えない。

それだけは、
確かだ。


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