『私という病』 第41話|富
※この章で語られる「富」は、金銭や所有を指すものではありません。
私は、溢れんばかりの富を持っている。
それは金鉱のように、
掘り当てるほど増えるものではない。
気づいた瞬間、
すでにそこに在ったものだ。
長いあいだ、私はそれを
外に探していた。
成果。
評価。
肩書。
安心。
だがあるとき、ようやく理解した。
富とは、
集めるものではなく、
失われないものの総体なのだと。
安楽とは何か。
それは逃げることでも、
何も背負わないことでもない。
この世界から一度、距離を取り、
それでもなお、
この世界に役割を持って生かされている状態。
人はそれを、
静かな自由と呼ぶのかもしれない。
人々よ。
私の足跡は、
やがて消えるだろう。
それでいい。
残るべきものは、
歩いた跡ではなく、
すれ違った誰かの中に生まれた、
わずかな温度だ。
私を追う人よ。
もし世界から反発を受けたなら、
それはあなたが
何かを本気で
守ろうとした証明である。
