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AIの電力消費はどこまで増えるのか。データセンター問題から考える「使いすぎないAI活用」


AIの電力消費はどこまで増えるのか――データセンター問題から考える「使いすぎないAI活用」

以前以下の少し深堀したAIの環境負荷についてコンテンツを作成しました。

このコンテンツの『電力消費』という部分にフォーカスしてコンテンツを書いていこうと思います。

【予習】米国の電力消費量

米国の年間電力消費量は、2025年に約4.20兆キロワット時、つまり約4,200テラワット時に達しました。

「それってどれくらい?」という毎回ある質問に、
普段は「アメリカの米国人口約3.4億人ほどですが約26億6,000万人分(約7.8倍)電力を使っている」と説明させてもらっています。

もう少し経済的な指標として見るならば、4,200テラワット時という数字は、出力100万キロワット規模の大型発電所が、約480基、24時間365日休まず動き続けるほどの電力量です。
日本で言えば徳島県阿南市のJ-POWER橘湾火力発電所や柏崎刈羽原子力発電所がそれくらいの規模の発電所です。

米国のデータセンター電力需要

データセンターが消費した電力は、2023年時点で約176テラワット時と推計されています。米国全体の電力消費量に占める割合は約4.4%です。

4.4%という数字だけを見ると、それほど大きく感じないかもしれません。
しかし、重要なのは増加の速さです。

米国エネルギー省によると、データセンターの電力消費量は2014年の約58テラワット時から、2023年には約176テラワット時まで増えました。
2017年から2023年にかけての需要増加には、AI向けサーバーの普及が大きく影響したとされています。

背景にあるのは、生成AIだけではありません。

企業のクラウド利用
動画配信
オンラインサービス
データ分析
高性能コンピューティングなど、
さまざまなデジタルサービスがデータセンターを必要としています。

生成AIの拡大は、すでに増えていたデータ処理需要を、さらに押し上げていると考えるべきでしょう。

そもそもなぜAIは多くの電力を必要とするのか

生成AIでは、膨大なデータを使ってモデルを開発する「学習」と、利用者からの質問に回答する「推論」が行われます。

学習とは、AIが大量の文章や画像などからパターンを身につける工程です。
推論とは、学習済みのAIが実際の質問や指示に対して答えを生成する工程です。
どちらも、多数の高性能半導体を使って計算します。

©2026 KEITA MUROSAKI.All rights reserved.

サーバーは計算中に大きな熱を発生させるため、冷却設備も必要です。
AI向けの高性能チップだけでなく、冷却、電源設備、通信設備などを含めたデータセンター全体が電力を消費します。

AIの利用者が増え、一人当たりの利用回数が増え、処理する文章や画像、動画が大きくなれば、それだけ計算量も増えていきます。
一方で、半導体や冷却技術、ソフトウェアの効率は改善しています。同じ処理を、以前より少ない電力で行えるケースも増えています。

ここに、将来予測の難しさがあります。
AIの効率が上がっても、利用量がそれ以上に増えれば、全体の電力消費は増加します。これは経済学でいう「リバウンド効果」に近い現象です。

*リバウンド効果とは、技術の効率化によって一回当たりの負担が下がった結果、利用量が増え、全体としての資源消費が十分に減らない、あるいは逆に増えてしまう現象を指します。

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AIが便利になり、安価になり、誰でも使えるようになるほど、利用総量が拡大する可能性があります。

『将来予測』に大きな幅がある理由

データセンターの電力需要が今後も増える可能性は高いものの、どの程度まで増えるかについては幅があります。

米国エネルギー省の2024年版調査では、米国のデータセンターによる電力消費量は、2028年に約325~580テラワット時へ増える可能性が示されました。全米の電力消費量に占める割合では、約6.7~12%に相当します。

ローレンス・バークレー国立研究所が公表した2025年更新版では、2030年に米国の電力消費量の約9.5~15.3%をデータセンターが占める可能性が示されています。

国際エネルギー機関は、2030年までに米国で増加する電力需要のうち、データセンターが約半分を占める可能性を示しています。

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この予測幅が大きいのは、調査が不正確だからではありません。
将来を左右する変数が多いためです。

AIの成長と展開速度がこれまでの産業などにないレベルだからです。

  • 今後どれほどAIサービスの利用が増えるのか

  • どの種類のAIが普及するのか

  • 半導体の性能がどこまで向上するのか

  • データセンターの稼働率がどうなるのか

  • 冷却技術がどの程度改善するのか

必要な電力量は変わります。
企業が発表したすべてのデータセンター計画が、そのまま建設されるとも限りません。

電力網への接続、資金調達、地域住民との調整、水資源の確保、建設資材や人材の不足などによって、計画が延期・縮小される可能性もあります。
つまり、将来予測には不確実性があります。

むしろ、幅のある複数のシナリオを前提に、どのような場合でも対応できるよう準備することが重要です。

問題は、『電力が足りるか』だけではない

データセンターの増加によって問われるのは、発電量だけではありません。

大規模なデータセンターを稼働させるには、発電設備から電力を運ぶ送電線、地域へ配る変電設備、データセンターを電力網につなぐ連系設備が必要です。

ハイパースケーラーと呼ばれる巨大IT企業やクラウド事業者は、一つの拠点で非常に大きな電力を必要とする場合があります。
地域全体では電力が足りていても、必要な場所へ電力を届ける設備が不足していれば接続できません。

電力会社や行政は、数年先のデータセンター建設を見越して設備投資を判断する必要があります。

  • 需要を過小評価すれば、送電網や変電設備が足りなくなります。

  • 需要を過大評価して大型投資を進めた後に計画が中止されれば、使われない設備のコストを誰が負担するのかという問題が生じます。

AIの将来予測は、単なる技術予測ではありません。

電力料金、地域経済、土地利用、環境政策、企業誘致などに関わる、経営と社会基盤の問題です。
AI活用を推進する側にも、その土台となる社会インフラを意識する姿勢が求められます。

企業に必要なのは「使わない判断」も含めたAI活用

AIの電力問題を知ったからといって、企業がAIの利用をすべて控える必要はありません。重要なのは、効果の高い業務へ絞って使うことです。

例えば、毎日繰り返される文章の下書き、社内規程の検索、問い合わせ内容の分類、大量の記録からの論点抽出などは、AIの効果が出やすい領域です。

一方、数分で終わる簡単な判断に複雑なAIシステムを使ったり、既存の機能で十分な処理を生成AIへ置き換えたりする必要はありません。

  • 計算で処理できる業務には計算式を使う

  • 定型処理には自動化ツールを使う

  • 検索で済むものには検索機能を使う

  • 文章の意味を理解する必要がある仕事はAIを使う

  • 曖昧な情報を整理するタスクにはAIを使う

このような使い分けが大切です。
「AIを使いすぎないAI活用」とは、AIを否定する考え方ではありません。

それぞれの業務に合った手段を選び、費用、電力、確認作業、心理的負担を含めた全体の効率を高める考え方です。

中小企業のDXも環境負荷と運用負荷は密。

一社のAI利用による電力消費は、巨大なデータセンター全体から見れば小さく感じられるかもしれません。

しかし、そもそもで言えば不要なAI処理を減らすことは、電力消費だけでなく、利用料金(従量課金などによるAPI使用料など)や確認作業も減らします。
必要のない文書を作らなければ、保存、共有、確認、修正、管理の負担も生まれません。

つまり、環境負荷を減らす考え方と、現場の運用負荷を減らす考え方は、別々のものではありません。
業務の無駄を整理し、必要な処理だけを残すことは、人にも環境にも負担の少ないDXにつながります。

私はDX支援において、システムやAIを導入することよりも、まず業務の流れを確認することを重視しています。
誰が、いつ、何を見て、どのような判断をし、次の人へ何を渡しているのか。

どこで作業が止まり、どこで二重入力が発生し、誰に負担が集中しているのか。このような整理しなければ、AIを入れても問題の形が変わるだけなのです。

小さく試し、効果と負担の両方を測る

AI活用は、最初から全社規模で進める必要はありません。
まずは一つの業務を選び、小さく試すほうが現実的です。

その際は、作業時間が何分減ったかだけでなく、

  • 確認時間が増えていないか

  • 入力する情報が増えていないか

  • 担当者が不安を感じていないか

  • 利用料金に見合う効果があるか

  • AI導入前より仕事が楽になったのか。

  • ミスが減ったのか。

  • 担当者が休んでも業務を続けられるようになったのか。

  • 顧客への対応が良くなったのか。

こうした変化を見ながら、続けるか、修正するか、やめるかを判断します。DXでは、導入した仕組みをやめる判断も重要です。
一度導入したから使い続けなければならない、という考え方は、現場の負担を大きくします。

AI時代のDXは、見えない負担まで設計する

AIやデータセンターの電力需要は、今後も増える可能性があります。
もちろん、その規模には大きな不確実性があります。

AIは便利な技術ですが、無料でも無限でもありません。
電力を使い、設備を使い、人による確認を必要とし、運用のルールも必要とします。

これからのDXでは、画面上の便利さだけではなく、
その裏側にある電力、コスト、環境、現場の心理的負担まで含めて設計することが大切です。

DXは、大規模なシステム導入から始める必要はありません。
まずは業務を棚卸しし、どこに負担があり、どこに無駄があり、何を改善したいのかを言葉にすることから始められます。

自社だけでは業務上の問題を整理しにくい場合、外部の視点を入れることで、当たり前になっていた無駄や負担が見つかることがあります。

私は、経営と現場の間に入り、業務の流れ、人の負担、費用、運用の持続性を確認しながら、無理のないDXを一緒に設計したいと日々思っています。

『とりあえずAIを導入する』『システムを増やす』ことではなく、会社と働く人にとって本当に必要な仕組みをつくること。
できるかぎりの電力や環境の問題とも向き合う。

きっとそれがもうすぐそこまできている『AIとの共存2.0』ではないでしょうか。

参考資料

・U.S. Department of Energy, “DOE Releases New Report Evaluating Increase in Electricity Demand from Data Centers”

・Lawrence Berkeley National Laboratory, “2024 United States Data Center Energy Usage Report”

・Lawrence Berkeley National Laboratory, “United States Data Center Energy Usage Report: 2025 Update”

・U.S. Energy Information Administration, “Use of Electricity”

・International Energy Agency, “Energy and AI”

室﨑 敬太 【Linkedin】【E-mail】
馬車馬テクノロジーズ 業務執行社員/Chief Strategy Officer
その他DX関連の顧問を複数社請け負わせていただいております。

17歳で学生起業家として活動を開始し、事業の立ち上げと運営を経験。その後、ファーストリテイリンググループに入社。 三井住友海上火災保険株式会社にて法人営業やリスクマネジメントに従事し、金融・保険分野における専門性を確立。 独立後は室﨑総合保険/MKエージェンシーを創業。不動産会社との業務提携を経て役員に就任。 コロナ渦以降にAIやDX、プログラミングを学び現在は企業のDXおよびAX戦略の立案から実行までをリード。AI・LLMを活用した業務改革や新規事業開発を中心に、複数の企業において顧問として参画している。 国内上場企業から外資系企業まで、繊維、小売、自動車、金融、不動産、建設、サービスなど多岐にわたる業界での実務経験を有し、業界横断的な知見と実行力を兼ね備えたDXに強みを持つ。

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室崎 敬太 【AIテック企業役員×オーナー経営】 現在進行中の「気持ち良いDX」及び 就労支援プロジェクト、精神疾患罹患後の社会復帰事業に充てさせていただきます。