ショートショート_MOYAI(舫い綱)
バス停で待つことは、最近はそれほど多くなくなった。
本来は、最寄りの電車駅から自宅までは、歩いてなかなかの距離があるのと、マンションから出て階段を下りて大通りに出ると直ぐにバス停があるので、バスの定期を持っている人が多く。毎日の通勤にはバスを使っていたはずなのだろうと思う。
だが、私は、使わなかった。
今から思うと、どうしてだったのだろうと不思議に思う。
歩くのは健康に良い。だが、坂道をひたすら歩いて登って毎日自宅に帰ることを考えれば、バスでも良かったのではなかろうかと思う。
特に、今日のような雨の日には、やっと階段までたどり着いて、雨露に濡れたバス停の看板をみるにつけ、少し過去の自分が恨めしくも思うのである。
こんな雨の日にも、晴れ渡った日にも、バス停は、ただ静かに佇んでいる。
そんな日曜日の午後に、またもや、荒技をやってしまった。
さて、小牧幸助さんの、シロクマ文芸部の最新お題は、木曜日に出る。
そして、今回のお題は、「バス停で」から始まる小説・詩歌・エッセイなどを自由に書いてみませんか?ということで。
そして、たらはかにさんからのお題は…。
表のお題が【つくし上位互換】で。裏のお題が【こぶし調理ご飯】|д゚)チラッ|д゚)チラッということだ。
また、山根あきらさんの、青ブラ文学部のお題は、少し早めに出る。
今週の青ブラ文学部のお題は、「もやいづな(舫い綱)」というお題で作品を書いてみませんか?ということで。
舫い綱とは、船を桟橋や岸壁に固定するための綱のことで。比喩的に人と人とを繋ぐ絆のことにも使う。
お題は文中に入れ込もう。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、「荒技師」だなんて、あんまりおおっぴらに言わないほうがいいよ。
うむ……。そうだな。
3人の企画は両方とも、膨大な数のファンの方、参加希望者を抱えていらっしゃって。お題を出すだけでも、大変だと思うのである。それでもお題を出してくれる。毎週。ほんとうに、ありがたい限りだ。ほんとうに励みになる。
また、今回は、deepblueさんのシロクマ文芸部作品を読んでみた。ちょっとその感想を、シロクマ感想文として書いてみる。
今週も、「シロクマ文芸部・夜桜と」で検索して飛んで行き、「シロクマ感想文」を少し、コメントにて残した。
この記事は、deepblueさんの実話を元にしたエッセイだ。
不測のトラブルで乗っていた列車が不通になり。思いも寄らぬ駅で新快速が停車。振り替え輸送の準備も間に合わず自ら路線バスを探す。
何とも心細い。そして、とぼとぼと元の駅への路線バスを探して道を戻りつつ、途方に暮れつつ。
結局は楽しみにしていた都会の映画館での鑑賞やショッピング、そして、パスタは不意になったとは言え。
お嬢様との、いつもと変わらぬ地元での豊かな時間が過ごせたことは、ラッキーだったのだろうと思ったりする。
そんなことはどこにも書いていないけれど。淡々として達観の色が見えるところから、何気ない日常こそが幸せだと感じる意識が垣間見える気がする。
都会での楽しみは、また今度にとっておいて。またその時には、今日よりもっと思い切り楽しもう。私まで、なんだかそんな気分になった。
帰り道はきっと、軽やかな足取りだったに違いない。
今、生きていられることに感謝して。今宵も、月に祈ろう。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
せっかく出していただいたお題を、小牧幸助さんの始まりの言葉(シロクマ文芸部)と、たらはかにさんの裏表のお題(毎週ショートショートnote)、そして山根あきらさんのお題(青ブラ文学部)、4ついっぺんに書く荒技。まして、シロクマ感想文まで、5重の荒技。あまりにもやりすぎじゃないかな。
今週は5重の荒技だ。
うむ。
これで何週間だろうか。
まあ、続けられるだけ、続けるさ。
心の中の、リトルkojuroが、また、ボソリと、呟いた。
まるで、悪ガキそのものだな。
まあな。
なんのはなしですか。

さて。それでは、本編にまいりましょう。今週の荒技、「MOYAI(舫い綱)」約410字を、どうぞ。

バス停で待っていると、一面に靄が立ちこめた。
泉は直感的に狙われたと気付いたが、今回は敵が一枚上手だった。
霞が晴れ、そこはだだっ広い平原で。どうやら異次元へ飛ばされたようだった。
一度落ち着いて情報収集をする。
財前のツールは、あらゆる状況に対処できる。電気も不要。GPSは衛星を頼らず、生体反応センサーは未知の生物さえ解析する。
リサーチの結果、周囲にあるのは植物のみ。動物はいない。周囲にはいくつか川が流れている。
さしあたりの危険は無い。
夜が更けてきて。調理パックをこぶしでパンチ。御飯が炊けた。
つくしが群生しているが、一部を上位互換ツールでアスパラガスに変えておかずにする。
そんなサバイバルをこなしているうち、財前の転送ツールが稼働し、泉は早朝のバス停に戻った。
ふと、ツールの名前が「MOYAI」だというのを思い出した。
身につけたツールは、いついかなる時も生還を約束する絆だったのだ。
山の端に顔を出した朝日が、綺麗だった。

さっちゃん(注1)に、今日の荒技が終わったとソファーを振り返って話しかけると、さっちゃんは笑って言った。
そんな時間があるなら、もっとマッサー(注2)に使ってもらっていいのよ。今日は日曜日だし、また倍返ししてもらおうかな。
……。
マッサーをすると家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)さっちゃんとは、家内のことである。我が家の実質の最高権力者なので、別名、女王陛下という呼び名もある。
(注2)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

