内向型の私が自己啓発本で消耗した理由を考えてみた。
本屋で自己啓発本を手に取る。
読み終えたその夜、「明日から変わろう」と思う。
すぐ行動する。
人脈を広げる。
とにかく動く。
でも数日後には疲れ果てて、元の生活に戻っている。
そして最後に残るのは、「結局わたしは意志が弱い」という感覚だ。
私は一時期、駆り立てられて自己啓発本オタクのようになっていたことがある。
しかし、私の場合は、何冊読んでも同じだった。読み終えた頃には内容もほとんど頭に残っていない。
読むたびに少しだけ希望が湧いて、続かなくて、またしぼんで。
むしろ読む前より自己評価が下がっている気さえして、途中から本屋に行くのが怖くなった時期もあった。
でも最近、少し考え方が変わった。
続かなかったのはわたしの問題ではなく、多くの自己啓発本の「想定読者」が、そもそもわたしではなかったのかもしれない、と。
自己啓発本には「理想の読者」がいる
有名な自己啓発本を思い浮かべてほしい。
とにかく行動量を増やせ
人脈を広げろ
毎朝早く起きて自己投資しろ
まず動いて、考えるのは後でいい
これらのメッセージに共通しているのは、「外に向かうエネルギー」が前提になっていることだ。
積極的に人と会い、発信し、即断即決する。
そのような動き方を「標準」として書かれている本が、市場には多い。
たしかに、そのスタイルが合っている人にとっては、力強い指針になる。
ただ、全員に当てはまるわけではない。
社会的ネットワーク研究では、外向的な行動スタイルを持つ人のほうがネットワーク上で可視化されやすく、「成功モデル」として認識されやすいという傾向が指摘されている。
つまり書店に並ぶ自己啓発本が外向的な処世術に偏りがちなのは、そういう本が「売れる・目に触れる」構造があるからかもしれない。
n=1の場合の落とし穴
ここで少し立ち止まって考えたいことがある。
自己啓発本の多くは、「わたしはこれで成功した」という著者自身の体験を一般化した本だ。(最近はそうでないものも多いが)
でもよく考えると、これはサンプル数が1の話を、全員に当てはまる法則として語っている、ということになる。
これには、いくつかの問題がある。
生存者バイアスがかかっている
同じ方法を試して続かなかった人、失敗した人は本を書かない。書店に並ぶのは「うまくいった人の話」だけだ。うまくいかなかった無数のケースは、そもそも可視化されない。
著者のプロフィールが隠れている
著者が外向型か内向型か、どんな職種か、どんな時代にいたか。そういった文脈が本文には書かれないことが多い。「わたしはこれで変われた」の裏には、その人固有の条件が山ほどある。
再現性が検証されていない
学術研究であれば、同じ条件で複数の人が試して同じ結果が出るかを確認するプロセスがある。自己啓発本にそのプロセスはない。著者1人に効いたことが、読者全員に効くかどうかは、誰も確かめていない。
「成功者の習慣」として語られる内容の多くが、外向的なスタイルをベースにしていることは多い。
つまりこういうことだ。
著者がたまたま外向型だった。外向型向けの方法で成功した。それを本にした。内向型のわたしがそれを読んで実践しようとした。うまくいかなかった。「わたしの意志が弱いせいだ」と思った。
で処方箋の対象者が最初からちがっていた。
「まず動け」が効きにくいのはなぜか
内向型の人が情報を処理するときの傾向については別の記事でも触れているが、一点だけ言うと、「行動する前に頭の中でシミュレーションする」プロセスが長めという特徴がある。
怠けているのではない。頭の中で何度も動かして確認してから、ようやく実際に動く。そういう認知のやり方だ。
「まず動け」というアドバイスは、そのプロセスをすっ飛ばすことを求めている。
外向型の人にとっては「動いてから考える」が自然なリズムだから、そのアドバイスはフィットする。
でも内向型にとっては、シミュレーション抜きで動くのは不安が大きく、後で後悔したり疲弊したりしやすい。
やり方が向いていないのに、「続けられない自分」を責め続けていた。そういうことだったのかもしれない。
内向型に必要なのは「もっと頑張ること」ではない
同じゴールを目指すにしても、やり方は一通りではない。
たとえば、こんな置き換えが自分には合っていた。
「朝活」→ 夜の静かな時間に集中する
「人脈100人」→ 深く付き合える3〜5人
「即行動」→ 48時間考えてから動くルール
「毎日継続」→ 週2日と決めて無理なく続ける
どれも「やる量を減らす」のではなく、「エネルギーが実際に動く方向に合わせる」という話だ。
自分のエネルギーの回路と逆方向に頑張り続けると、成果が出る前に消耗してしまう。設計を変えると、同じ努力量でもずっと持続しやすくなる。
自己啓発本との上手な付き合い方
誤解されないうちに書いておくと、自己啓発本が全部合わないと言いたいわけではない。
「全部やる」から、「使える部品だけ拾う」ことが必要だと思う。
私は本を読む前に、こう問うようにしている。
この方法は誰向けに書かれているか?
エネルギーコストはどれくらいかかりそうか?
1割だけ取り入れるとしたら、どの部分か?
この問いを持つようになってから、本を読んで落ち込むことがなくなった。(これもn=1の話ではあるが)
次に自己啓発本を手に取るときに
世の中には、「とにかく動け」でうまくいく人もいる。でも、考えて、観察して、自分なりのやり方を組み直したほうが前に進める人もいる。
どちらが正しいかではなく、どちらが自分に合っているか、という話だ。
自己啓発本を読むたびに苦しくなるなら、あなたに問題があるとは限らない。その本の想定読者が、たまたまあなたではなかっただけかもしれない。
次に本を手に取るとき、自分を否定する材料としてではなく、自分に合う部品を探すための道具として使えたなら、少しだけ読書が楽になるかもしれない。
内向型・繊細な気質を持つ人が消耗しすぎずに生き延びるための情報を、当事者目線で発信しています。社労士(有資格者)・キャリアコンサルタントとしての知見も交えながら書いています。
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