「成長」「市場価値」――なぜ内向型の私は、意識が高い人を見ると、怯んでしまうのか。
※「意識が高い人」というのは、ここでは批判的な意味では使っていない。自己投資や成長、発信に積極的で、エネルギーを外に向けて行動している人、という意味で使っている。
最近はどんな本を読んでいますか?
副業とかやっていますか?
人生、このままでいいのですか?
そのような会話になった瞬間、急に自分が小さく感じることがある。
昨日もきちんと仕事に行って、洗濯して、ご飯を食べて、なんとか一日を終えたのに。
誰かの「もっと上へ」を目にしただけで、「私は足りない」という感覚が湧いてくる。
意識が高い人を見ると、なぜ怯むのか
朝5時起き。自己投資。月商○○万。
SNSを流し見しているだけで、そういう言葉が目に飛び込んでくる。誰かに見せつけられているわけではないかもしれない。
でも気がつくと、「私ってダメなんだろうか」という気分になっている。
職場でも同じことは起きる。
会議で「もっと挑戦したいです!」と元気よく言える人を見ると、なぜか自分まで縮こまってしまう。
怯んでいるのは、意識高い人そのものではないのかもしれない。
「ああならなきゃいけない」という空気感に、飲み込まれているのだ。
「比較」が起動している
心理学の分野では、人が他者と自分を比べることで感情が動きやすくなるという知見が積み重ねられている。
とくにSNSにおける比較は、羨望や羞恥心と結びつきやすいことが示されている。
怯む、萎縮する、焦る。これは、人間が本来持っている比較のメカニズムが動いた結果であり、認知の仕組みとして自然に起きるものだ。
ここで問題にしたいのは、比較が起きた後に何が起きるか、だ。
無意識に比較モードに入ると、誰かの価値観がまるで自分の価値観であるかのように感じられてくる。
「朝5時に起きなければ意欲がない人間だ」という思い込みが、誰に言われたわけでもないのに、いつの間にか自分の内側のルールになっていたりする。
内向型ほど"場の価値観"を内面化しやすい
内向型の人は、外からの刺激を処理するのに時間とエネルギーがかかりやすい。
人が多い場所、騒がしい環境、連続した対話。
そういったものへの反応が、外向型の人と比べて強く出やすいと言われている。
つまり「場の空気」も細かく拾ってしまうということでもある。
職場全体が「成長志向」な雰囲気だと、それを意図せず自分の中に取り込んでしまう。「みんなが大事にしていること=自分も大事にしなきゃいけないこと」に変換されやすいのだ。
私もかつて、イケイケのベンチャー企業に入ってしまった(正確には、企業合併によって社風が真逆になった)時は、「成長志向」の宗教みたいになっており、その一体感についていけず、精神的にも疲弊した。
「私ってなんで熱くなれないんだろう」と感じるとき、自分の熱量が足りないのではなく、他人の熱量の基準を借りてしまっているのかもしれない。
意識が高い人は、別のゲームをしているだけ
「でも、成長したいなら意識高い人を見習うべきでは?」
そう感じる人もいると思う。確かに学べる点はあると思う。
ただし、他人の価値観から学ぶことと、他人の価値観を自分のものとして生きることは、全然別のことだ。
自分に合わない役割を演じ続けることは、消耗や不適応につながる可能性が示されている。
「この人みたいに朝活しなきゃ」
「この人みたいに発信しなきゃ」
と無理に真似をしても、長続きしにくいのはそのためかもしれない。
意識が高い人は、自分に合ったゲームのルールで動いている。外向型の傾向が強い人が、外向けに発信し続けることは、その人にとって自然なことだ。内向型の人が同じルールで動こうとすると、消耗するのは当然だ。
他人の人生に感心することと、他人の人生を生きることは、違う。
怯まないための5つの対処法
具体的に、消耗を減らすためにできることを5つ整理する。
① 「すごい」と「自分に必要」を分けて考える
「この人はすごい」と「自分もこれをすべきだ」は別の話だ。感心することと、取り入れることは分けていい。憧れは憧れのまま置いておいていい。
② 競技のルールを確認する
成長、発信、朝活、収益化。
これはあくまで「ある種の競技」のルールだ。そのルールに参加するかどうかは、自分で決めていい。参加していないことは「負け」ではなく、「別の種目を選んでいる状態」だと思う。
③ 情報の入り口を意識的に選ぶ
上述の通り、比較は認知として自然に起きる。しかしきっかけの量は調整できる。
特定のアカウントのミュートや、朝イチのSNS閲覧を避けるだけでも、比較モードに入る頻度は変わってくる。
④ 自分の回復コストを把握する
内向型の人は、外向型の人と同じペースで動き続けると回復が追いつかないことがある。自分がどんな状況で消耗して、何があると回復できるかを把握しておくことは、戦略的な自己管理だ。
⑤ 小さな積み上げを見える化する
誰かの大きな成果と自分の小さな継続を比べても、フェアではない。自分が今週できたこと、続けていることを書き出す習慣は、比較に引きずられにくくする助けになるだろう。
「私はどの山を登るのか」を決める
最後に、少し立ち止まって考えてみてほしいことがある。
何のために頑張りたいのか
本当は何を守りたいのか
5年後も続けたいと思える努力は何か
誰にも見られていなくても、やり続けることは何か
これは「目標設定をしましょう」という話ではなく、他人の価値観に引っ張られているとき、自分の軸がどこにあるかを確認するための問いかけだ。
答えはすぐに出なくていい。でも、この問いを持っておくだけで、比較モードに入りかけたとき、少し我に返ることができるかもしれない。
チェックリスト―この焦り、本当に自分のもの?
誰かを見た直後に湧いてきた感情か
「~べき」が増えていないか
本当に自分が興味を持っていることか
見栄のための努力になっていないか
その努力を1年続けたいと思えるか
3つ以上当てはまるなら、比較モードに入っている可能性があると思う。
おわりに|成長しない自由ではなく、自分で選ぶ自由
世の中には、もっと早く走れる人もいる。もっと目立てる人もいる。
でも、一人の時間が必要で、静かに考えて、自分のペースで積み上げる人もいる。
成長には向き不向きがある。でも、消耗には限界がある。
このnoteでは、内向型・繊細な気質を持つ人が消耗しすぎずに生き延びるための情報を、当事者目線で発信しています。 社労士(有資格者)・キャリアコンサルタントとしての知見も交えながら書いています。
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