連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】 7話「毒と薬」(1)
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7話 「毒と薬」(1)
リカルドとナイフ、エレーネが遺跡から屋敷へと戻ってきた。しかし、屋敷内の雰囲気がいつもと違った。何か、少しピリついているような…。
「?」
不思議に思いながら、屋内へと歩みを進める3人。視線の先には、ゴナンがミリア・エレーネの客室の外で不安げに立っている姿が見える。
「ゴナン、ただいま。どうしたの? 土まみれになって。あれ、ほっぺたが腫れてるよ、どうかした?」
「…こ、これは何でもないよ…。ミ…」
「…?」
「…ミリアが…、ど、毒を盛られたって…」
「え? …毒?」
「…か、顔が、真っ白で…、ひどく、震えてて…。ミリア…、し、死んじゃったら…、どうしよう…」
「…!」
3人は戦慄し、客室へと駆け込んだ。中ではマリアーナとジョージ、ディルムッドがミリアの除毒措置を行っている。
「さあ、ミリアさん、苦しいけどもう少し頑張って」
マリアーナが優しく話しかけながら、何やら黒い液体をミリアに飲ませている。即座に体を前傾させ、指を入れて吐かせる。
「…ふ…、うぅっ…」
「気を確かにね。眠っちゃダメよ…」
ミリアの顔色は蒼白で、意識ももうろうとしているようだ。体中を震わせ苦しみながら液体をなんとか吐いている。気を失うと液体を吐けなくなるため、マリアーナが優しくも必死に声かけをしていた。
「ミリア…!」
「ディル…! 毒って、どういうこと…?」
「ああ…。戻ったか…。見ての通りだが…」
一時、夫妻に措置を任せ、ディルムッドが3人へ説明する。
「少しの時間、ミリア様をこの部屋にお一人にしてしまったのだ。戻ると床に倒れていた」
「でも、それだけで、どうして毒だと分かったの?」
「……」
ディルムッドはクラウスマン夫妻をチラリと見て、少し小声でナイフの問いに答える。
「…王族の方は常に毒の危険にさらされているため、万が一に備えて毒を吐く訓練を行っている。その挙動を、ミリア様がなされた形跡があった。つまり、自分で毒を飲んでしまったと気付いたということだ」
「…!」
リカルドとナイフは顔を見合わせる。
「でも、この屋敷でそんなこと、ある…?」
「…分からない…。ミリア様が一人になる時間をずっと狙われていたのか…。しかし、怪しい気配も感じられなかったし、私もすっかり油断していた…」
ナイフはミリアの方に近づく。
「先生、ミリアは…」
「ああ、何とか飲んだものを吐かせている状況だよ。炭を混ぜた水を飲ませてね。炭は悪い物を吸着するから。しかし、体に入ってしまった毒に対しては、まだ対処ができていない」
「…マリアーナ先生、代わるわ。先生は毒の分析が必要なのではない?」
「え、ええ…、助かるわ」
マリアーナがナイフと交代し、ふう、と息をつく。
「…もしかして、私の研究室の薬草が何かの弾みでお茶か何かに混ざったのかとも思ったけど、こんなに即効性が高くて強い症状が出る毒、思い当たるものがなくて」
「強い症状…?」
「…ええ…。全身の神経に症状が回っている。呼吸も浅くなって、何度か意識を失って脈も弱まったわ…。今はなんとか持ち直しているけど…。正直、どうなるかわからない…」
「…!」
ディルムッドの体が大きく震える。この前、誓ったばかりなのに、またミリアを危険な目に遭わせてしまっている。自戒の念が止まらない。
「マリアーナ先生。なんとか、なんとか…。手助けできることは何でも、いたしますので…。何とぞ…!」
ものすごい圧でマリアーナに迫るディルムッドを、「ディル」とリカルドが押しとどめる。
「もちろん、全力を尽くすわ。原因を探るのは、まずはミリアさんが無事となってからね。街の医師と看護師にも今来てもらっているから」
と、玄関の方から人が訪れる音がした。呼んでいた医者達が到着したようだ。処置の邪魔にならないようにリカルドとディルムッドは部屋を出る。
(…?)
その際、ディルムッドは違和感を抱いた。いつもならすぐにミリアに寄り添いにいきそうなエレーネが、立ち尽くしている。そして目線だけをソワソワと動かしていた。

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