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連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】5話「探索と遭遇」(5)


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第三章の登場人物



5話 探索と遭遇(5)


 椅子に座って、ふう、と一息つくと、ナイフは状況の説明を始めた。

「ええと、まずは、工場街の方は相変わらず、ゴナンの情報は何もなし。それで、午後になって飲み屋街に向かったんだけど、そこで、ゴナンっぽい人影を見かけた気がしてね、追いかけたら、途中でヒマワリちゃんと遭遇して」

「え? ヒマワリちゃん?」

 予想外の名前が出てきた。もう二度と会うことはないとの話だったのに、1ヵ月も経たないうちにこれである。

「そう。ゴナンに似てると思って追いかけた人影が、実際はくだんの卵を背負った男で、ヒマワリちゃんはそいつを追ってたみたいね。で、鉢合わせて、なぜか私がヒマワリちゃんに襲いかかられて、また、ちょっと不覚を取ってね…」

そう言って右の胸辺りを押さえるナイフ。リカルドは驚く。

「1度ならず2度までも、ナイフちゃんが彼にやられるなんて」

「本当よ、情けないわ。例の棒はやっぱり伸縮する武器で、それは対処できたんだけど、今度は遠くから機械で何かを当てられて…」

「機械?」

ミリアがナイフの言葉に反応する。

「どんな機械だったの?」

「そうね…。一瞬でよく分からなかったけど、細長い円柱が折れ曲がったような形で、私に狙いを定めて何かを操作したようなんだけど、その瞬間に胸に何かが当たって…。石でも飛ばされたかと思ったんだけど、それらしきものは何も落ちてなかったのよ。何だったのかしら、あれは…」

「…き…、傷は?」

ミリアはなぜか慌てた様子で、ナイフのタンクトップをたくし上げる。

「え? ちょっと、ミリア? あなた、淑女がそんな風に異性の服を脱がせるなんて、はしたないわよ」

戸惑うナイフのタンクトップの下、熱い胸板の右胸側に、拳大の打撲痕が付いていた。ミリアはその痕を震える手で撫でて、ホッとした様子を見せる。




「…どうしたの? ミリア」

「ううん、何でもないわ。とても痛そう…」

「ええ…、なかなかの衝撃で、いっとき動けなかったわ。でも、これをみぞおちや喉や眉間に食らってたら、もっとひどいことになってたわね。何とか、当たる寸前にずらせてよかったわ」

タンクトップをおろしながらふう、と思い出すナイフ。どうにもヒマワリとは格闘面で相性が悪い。

「その治療のために、医者にかかってたの?」

「いいえ、これは治療するほどではないもの、ついでに湿布薬はもらってきたけど。ヒマワリちゃんも卵男もどこかに行ってしまったから、そっちはさておいて、飲み屋街の聞き込みにいったのだけど…」

そこまで話して、ナイフはリカルドの方を見る。

「……、何が何でも卵を追った方が良かったかしら」

「…いや。ナイフちゃんの判断に任せるよ」

「私がヒマワリちゃんに不覚を取って動けなかったせいもあるんだけど、あの卵を背負った男の挙動が、ちょっと気にかかって。深追いしない方がよい気がして」

「挙動?」

「卵を狙っている人を『釣り』に来ている風に見えたのよ。だからちょっと怪しく感じたのだけど、でもヒマワリちゃんは突っ込んでいっちゃった。卵の真贋は分からないわね…」

 それを聞いてリカルドは少し考えるが、次の話を促した。

「…それで、医者に行ったっていうのは?」

「ええ、飲み屋街を回っていろいろ聞いていたら、今日、夕方に排水溝で若い男性の遺体が発見されたって話を聞いて」

「…!」

リカルドはゾワっと怖気立ち、思わず立ち上がった。

「い、遺体…」

「リカルド、落ちついて。私ももしやと思って警察へ行ったら、医者のところへ検視に回していると言うから、それで寄ってたのよ。ゴナンとは似ても似つかない男だったから、安心して」

そのナイフの言葉に、ふう、と安堵の息を吐いて、また椅子に座るリカルド。

「…遺体…。そうか、でもやっぱり、そういうこともあり得るのか…」

「この街は工房や工場からの排水を流す排水溝が多いから、夜に酔っ払ってうっかり落ちて命を落とす人も、たまにいるそうなのよ。ただ…」

そこまで話して、ナイフは一瞬、口ごもる。

「…今回見つかった人に関しては、他殺の可能性が高いという話だけど」

リカルドの顔色がまた、蒼白になる。ナイフはすぐに次の句を続けた。

「身ぐるみ剥がされていたそうだから、物盗りだろうって。ゴナンはお金も何も持っていないんだから、狙われることはないわよ。警察にも行方不明の手配をお願いしてきたから。リカルド、悪いことばかり考えない!」

「……うん…」

そううつむくリカルドの頭を軽くはたき、ナイフは立ち上がった。

「さて、随分遅くなってしまったわ、宿に戻りましょ。それにしても、あなた達まで待っていることもなかったのに…。申し訳なかったわね」

「いいえ。リカルドが余りにもナイフを恋しがるから、放っておけなかったのよ」

「まあ、本当に甘えん坊な大きなお坊ちゃんだこと」

ナイフはまた努めて明るく、リカルドをからかった。

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