連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】5話「探索と遭遇」(4)
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5話 探索と遭遇(4)
…そして、数時間後。
まだ、ナイフは帰って来ない。
「おかしいな…。もう、2時過ぎだぞ。この街の飲み屋はこんなに遅くまで開いていないって、言ってた気がするけど…」
リカルドがソワソワと拠点の中を歩き回っている。待っている間にミリアがウトウトとして机に突っ伏して寝てしまったため、今はベッドに寝かせている。エレーネも窓の外に目を遣った。
「もしかしたら宿に直帰しているのかもしれないわね。宿に行って来ましょうか?」
「ああ、もう夜も遅いから、僕が行ってくるよ」
落ち着かない様子のリカルドが、マントを羽織って剣を持ち、いそいそと出ていく。そしてあっという間に帰ってきた。
「…宿にも戻ってなかった…」
「…そう…。まあ、こちらの街に知り合いがいるっていってたから、お酒を勧められたりしているのかもしれないわよ」
「…うん…」
そう答えるが、またリカルドの顔色がみるみる悪くなっていく。マントも剣も着けたままイスに座り、テーブルに肘をついてじっと何かを考えているようだ。
「…リカルド?」
「…何か、あったのかな…。ナイフちゃんまで…。やっぱり、僕が、巨大鳥を見たから…」
「……」
「…ナイフちゃん……。この旅には関わりなかったのに、僕のせいで、巻き込んでしまった……」
テーブルの上で組んだリカルドの手が震えている。エレーネはその手に、そっと自分の手を添えた。
「リカルド? 何を怖がっているの?」
「怖がってる…?」
言われて、リカルドは自身の状態に気付いた。
「…ああ、そうだね…。ゴナンに続いてナイフちゃんまで、と思うと、本当に怖くて…」
「……あなたはずっと一人だったんでしょ? 一人になることが、そんなに怖いの?」
「……」
リカルドはうつむいたまま、少しだけ沈黙する。
「…そうだね……。何だろう。ついこの前までは、一人でいることも、周りに居た人が離れていくことも、全く平気だったのに…」
「……」
「……よくないな…。これでは、僕は、『その日』が近づいて来たら、とても苦しんでしまう…」
「?」
エレーネには意味がよくわからない。尋ねようとしたが、リカルドの瞳の奥にほの暗い影をぞくりと感じて、それ以上の追及を自重した。
「…まあ、ゴナンはともかく、ナイフは流石に心配しなくても大丈夫よ。はっきり言って私達の中でも最強だし、この街でだって敵はいないはずよ。いろんな意味でね」
「うん…」
リカルドはうつむいたままだ。エレーネは手を離して自身もまたイスに座り、またナイフの戻りを待った。
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……しかし、それから1時間経ってもまだ、ナイフは帰って来ない。
リカルドは時計が3時を示したのを見て、真っ青な顔でガッと立ち上がった。
「…ぼ、僕…、飲み屋街の方に、行ってくるよ…」
「リカルド。心配しなくても大丈夫よ」
「うん…。迎えに行くだけだから。念のため…」
そう言いながらも追い詰められたような表情で、リカルドはドアから飛び出した…。
と、
「きゃっ!」
「うわあっ!」
すぐに硬い何かにぶつかり、リカルドが情けない叫び声を上げて拠点の中にドスンとひっくり返る。見ると、ナイフが立っていた。
「ただいま。ああびっくりした。どうしたのリカルド。どこかに行くところ? ゴナン探しならこんな夜中に出ても仕方が無いって…」
「違うのよ、あなたを探しに行こうとしてたのよ」
クスクスと笑いながら説明するエレーネ。ナイフの強い体躯にはじき飛ばされたリカルドだったが、すぐに立ち上がると、ナイフに飛びつくように抱きついた。
「…え? ちょっと、リカルド?」
「ナイフちゃん…、よかった、無事で…」
「はあっ?」
ギュッと力いっぱいハグするリカルド。ナイフの力なら彼を振りほどくことなど訳ないのだが、その尋常ならざる様子に、ひとまず、されるがままになっている。顔だけエレーネに向けて尋ねた。
「…どういうこと?」
「とても心配してたのよ。ゴナンに続いてあなたまでいなくなったらって…。私は心配ないって言ってたんだけど」
「ああ…」
ナイフは少し呆れたような面持ちで、ポンポンとリカルドの背中を叩く。
「リカルドに心配されるなんて、私もまだまだね。…それとミリア。覗き見は悪趣味よ」
見ると、寝室のドアの陰からミリアがワクワクした面持ちで、頬を赤らめながら抱き合う二人の様子を覗いていた。騒ぎで目を覚ましたらしい。意外にゴシップ好きな王女様のようだ。

「ほら、リカルド、離れて。青少年の教育上よろしくないわよ」
「うん…。よかったよ、本当に…」
弱々しい表情でゆっくりと体を離すリカルド。ナイフはため息をついた。
「遅くなってごめんなさいね。誰か伝言にやれば良かったんだけど、この大きなお坊ちゃまがこんなに心配するとは思わなかったから。ちょっといろいろあって、医者のところに行ってたのよ」
「いろいろ? 医者?」
リカルドは驚いた顔でナイフを見つめ、ものすごい剣幕で迫る。
「どうしたの? ケガした? 何があった? 大丈夫?」
「もう、うっとうしい! 説明するから、ひとまずマントを脱いで、イスに座りなさい」
まとわりつくリカルドを剥がして、ナイフも上着を脱ぎ、ふう、とイスに座った。ミリアも起きてきて、皆リビングに集まった。
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