連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】5話「探索と遭遇」(3)
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5話 探索と遭遇(3)
大きな卵を背負った少年は、ナイフとヒマワリの様子を窺っているようだ。かまわずヒマワリはナイフに向かう。
「あいつを追ってたんでしょ?」
そう言ってヒマワリは、またナイフに蹴りかかってくる。その素早さに避けきれず、ナイフは手でガード。その少年は二人が争う様子を見ると、路地の奥へとすっと姿を消した。
(…?)
ナイフは彼のその挙動に少し違和感を抱きつつ、蹴りを繰り出してくるヒマワリに尋ねた。
「…ちょっと! どうしてこっちに蹴りかかってくるのよ。あっちを追いかけなさいよ。それに、別に私は、あなたとは何も争ってないでしょ?」
「卵を狙ってるならみんなライバル! まずは敵を少しでも減らしたいの。さすがにナイフちゃんが敵だと、ちょっと分が悪いけど」
「減らすって、私を殺すってこと?」
ヒマワリの蹴りを手で捌きながら、ナイフがギラリと目線で威圧した。ヒマワリは躊躇なく、さらに蹴りを繰り出す。
「そうだね。卵のためなら仕方が無い…!」
そう言って腰から例の棒を取り出した。その棒でナイフに打ちかかる。…が。今度はナイフはその攻撃も避けた。
「…ちっ」
「同じのを二度は食らわないわよ」
ヒマワリが手にする棒は、取り出したときの5倍くらいの長さに伸びている。どういう仕組みになっているのかは分からないが、ヒマワリはそのまま棒術でナイフにまた襲いかかった。ものすごいスピードで的確に急所ばかりを狙ってくる。
「ちょっと、ケンカ慣れしすぎじゃないの?」
「体格の不利は技術で補わないとね」
と、ガッと沈み込み蹴りでナイフを足払いするヒマワリ。ナイフは少しよろける。その隙を狙いヒマワリは棒でナイフの首を狙って突きを繰り出してくるが、ナイフはギリギリ反応して避け、カウンターでヒマワリの胴を回し蹴りした。ヒマワリの細い体は吹き飛ばされ、地面に打ち付けられる。しかし、すんでのところで受け身を取ったようだ。
「…ゲホッ…」
「ヒマワリちゃん。無駄なことはやめた方がいいわよ。相手が悪いわ」
普段の優しい雰囲気からは想像もつかないほどの怜悧な目で、ヒマワリを見下ろすナイフ。常人なら震え上がる圧だが、ヒマワリはひるむことなく強い目線でにらみ返し、すぐに立ち上がってナイフと少し間を取った。5mほどは離れただろうか。
(あの棒が、もっと伸びたりするとか…?)
ヒマワリの動きに警戒するナイフ。と、ヒマワリはその棒をシュン、と縮めて、腰のバッグに収めた。代わりに取り出したのは、片手で持てる大きさの、何かの…機械? 折れ曲がった円柱のような姿をしている。
「…!」
と、ヒマワリがナイフに照準を合わせるような仕草をした直後に、指で何かのスイッチを引いた。ドン!という音が響き、瞬間、ナイフは胸を押さえ、その場に倒れ込む。

「ハイ、サヨナラ」
そう言ってヒマワリは倒れるナイフを一瞥したのち、卵を背負った男を追って消えていった。
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夜。
リカルドの拠点に、馬を返したミリアとエレーネがやって来ていた。リカルドはすでに戻ってきている。相変わらず顔色が悪い。
「あれ? ナイフちゃんはまだ?」
ミリアがリカルドに尋ねる。
「ああ、そうだね。夜のお店に話を聞いているから、少し遅くなるかもしれないね。そっちはどうだった?」
「ええ、まず、鳥の姿は見かけなかったわ。そして、川を渡った先まで馬で巡ってみたのだけど…」
エレーネがイスに座りながら報告する。長時間の乗馬で、さすがに少し疲れているようだ。
「草原から荒れ地になっていく感じで、水場の気配すらなかったのよね…」
「そうか…」
エレーネは地図を開く。
「明日はもう少しだけこの南の方を回ってみるわ。こちらにもっと進むと鉱山もあるし、少し地形が変わっていそうだから」
「うん、そうだね、頼むよ」
「そちらも、見つからなかったのね?」
エレーネの質問に、リカルドは首を横に振る。
「ああ、ゴナンがいたような形跡すら見つけられていないよ。明日は馬で、一気にストネまで戻ってみようかなと思うんだけど…」
「そんなに移動するかしら? 荷物を何も持っていないんでしょう?」
「うん…。でもほら、ゴナンはサバイバル能力がとても高いから…。それに、あの子が知ってる場所はまだそんなに多くないだろう? よく知った街で働ける場所を探すってのも、あり得るかなと思って」
「…」
エレーネは心配げな表情でリカルドを見る。藁にもすがる思い、というのはこういうことを言うのだろう。
「まあ、でも、もし何か事故に巻き込まれていたりするのなら、ストネまで戻っても仕方がないんだけど…」
「リカルド。ゴナンの身の不幸を思うような言葉はよくないわ」
また卑屈に目線を落としていたリカルドに、ミリアが背筋を伸ばしてピシャリと言った。思わず自身も背筋を伸ばすリカルド。
「ミリア…」
「リカルド。わたくしは決めたわ。わたくしは鳥だけを追って、ゴナンのことは探さないわ。そうすれば、わたくしの不運の星はゴナンには関わりなくなるから、きっとゴナンは無事だし、見つかるわ」
「…いや、その理論でいくと、鳥が絶対に見つからないということになってしまうけど」
「鳥も不幸をまき散らすのだったら、わたくしと鳥とで不運をぶつけあうのだから、問題ないわ。鳥の方は任せて。あなたにとっては、まずはゴナンでしょ。あなたはストネでもどこでも、気の済むまで探して。それで見つかるから」
妙に自信満々にそう話すミリア。全く筋も根拠も何もない内容だが、不思議と話に聞き入ってしまう。これが王族というものなのだろうか。リカルドは、ふっと破顔した。
「…そうだね…。ありがとう。今だけは、君の不運の星を信じるよ」
「ええ、任せて!」
謎の自信で胸を張るミリア。ミリアのもたらす不運を一身に受けることになりかねないエレーネは少し苦笑いしたが、ほっと微笑むリカルドの表情が少し和らいだのをみて、何も言わなかった。
「じゃあ、ナイフちゃんが戻ってきたら、明日の予定を話し合おうかな。僕はストネの『フローラ』の拠点に1泊することになりそうだから」
「そうね。お腹も空いたわね。何か近くで買ってくるわね」
エレーネはそう申し出て、ひとまずはナイフを待ちながら食事をとることにした。
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