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連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】5話「探索と遭遇」(2)


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第三章の登場人物



5話 探索と遭遇(2)


 (それにしてもリカルドは、ちょっと様子がおかしすぎるわね…)

眉をひそめながら、ツマルタの道を歩くナイフ。午前中は、昨日ミリア達が担当した工場エリアを回っていた。複数の工場に聞き込みをするも結果は変わらず、そのような子の姿すら見たことがないと、どの工場でも口を揃えて言われた。

 そして午後になり、また飲み屋街の方へと移動している。

(ゴナンが心配なのはわかるけど、少し病的なのよね)

故郷の件があるにしろ、それは今までも同じだったし、少し表情が暗くなるようなことはあっても決して平静を乱すようなことはなかった。この短期間でここまでゴナンに執着してしまうようになったのが、そもそも不思議でもあるが…。

 と、ナイフは彼の拠点の、あのガラクタ部屋を思い出す。彼はああいったくだらないものに、理解不能なほど執着をみせる。

(本来のリカルドは、もっと情が深くて執着心が強い性格なのかもしれないわね。でも、それで心を惑わされたり苦しみたくないから、必要以上に人に向ける情を押さえ込んでしまって、でもゴナンに対しては、そのたがが外れてしまっていて…)

 あのガラクタ部屋もその反動かも知れない。そう考えると、あの部屋の見方が少し変わってきてしまう。いや、とはいえ、やはりガラクタだらけだが。



 と、右手の路地の方に、スッと走り去る人影が見えた。ゴナンくらいの背丈の男性が見えたように思える。

「…! ゴナン…?」

ナイフは即座に駆け出し、その人影の気配を追う。

ツマルタの飲み屋街は迷路のように小路が入り組んでいる。多少の土地勘はあるものの、気配を追うのに難儀するナイフ。と、また前方に人影がすっと走る。やはり、ゴナンに似た背丈だ。素早すぎてよく見えないが、バンダナのようなものを巻いているようにも見えた。

「…ゴナン? 違うの?」

ナイフは呼びかけながら気配を負い続け、路地をグネグネと走り続けた。ゴナンだとしたら、なぜ逃げるのか。いや、彼はナイフに追いつかせない程のスピードで逃げられるだろうか? とにかく声を掛け続けなければ。

 そのとき…。

「きゃっ!」
「うわ!」

曲がり角で出会い頭に人とぶつかった。互いに相当なスピードで走っていたようだが、ナイフは少しだけよろめき、相手はナイフの強靱な体躯にはじき飛ばされて道にドサリと尻餅をつく。

「ゴメンナサイ。よく見てなくて、大丈夫?」
「こちらこそ…。…あれ?」

差し出されたナイフの手を取ろうとした相手が、顔を見てスッと表情を変えた。白銀の髪に、灰青の瞳の華奢な男性…。

「え、ヒマワリちゃん!?」
「…げ、ナイフちゃん…」

ナイフと激突したのはヒマワリだった。『フローラ』にいたときの装いとはうって変わり、ポンチョにダボダボのパンツをはいている。それでも、この美少年の顔はそうそう忘れない。

「ヒマワリちゃん、急にいなくなったから心配していたのよ?」
「は? 心配~?」

苦々しい表情をするヒマワリ。

「別に心配される義理はないと思うんだケド」

「あなたの目的が何であれ、うちで働いていた子はみんな家族だから」

「……」

少し居心地悪そうにするヒマワリ。

「そして願わくば、ナンバーワンとしてもっともっと稼いでもらって、ゆくゆくは私の後を任せて『フローラ』を盛り上げてもらいたいとも思っていたのだけど」

「……そこまで見込んでいただいてアリガタイ限りだけど、残念ながらもっとやるべき事があんの、私は」

にべも無く断られ、少しガッカリするナイフ。ヒマワリはナイフの手を取らずに立ち上がって、パンパンと土埃をはたいた。


「それよりナイフちゃん、なんでこの街にいるのさ? お店は?」
「営業停止中よ。あの帝国男どもに謀られてね」
「へえ、そうなんだ。それはご愁傷様…」

と、ヒマワリはキョロ、と周りを見回す。

「…まあ、積もる話も特にないから、じゃあね。ハイ、サヨナラ!」

そう言って走り出すヒマワリ。ナイフが追っていた気配の方向だ。ナイフもそのまま追いかける。

「…ちょっと、なんで付いてくんの?」

「私もそっちに逃げた人を追ってるのよ」

「…!」

その言葉を聞いた瞬間、ヒマワリはナイフに蹴りかかってきた。ナイフはすっと避けて、足を止める。

「ヒマワリちゃん?」

「…そうだよね。今、この街にいるってことは、ナイフちゃんも敵か…。リカルドさん達も来てるんだろうなあ」

「…?」

と、人の気配を感じてナイフは左の方を見た。そこには男性が立っていた。さっきからずっと追い続けていた気配だ。残念ながらゴナンではなかったが、ゴナンと同じ年頃に見える。褐色の肌色に黒髪で黒目、小柄だが締まった体格の男性。頭にはバンダナ、というより鉢巻きのようなものを巻いている。そして、その背中には、巨大な楕円形の…。

「…背中に、大きな卵……?」



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