連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】 15話「祭」(2)
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15話「祭」(2)
と、ここでゴナンはハッとする。随分、込み入ったことまでしゃべってしまったが、ルイージには意味が分からなかったのではないかと。
しかしルイージはゴナンの琥珀の瞳をじっと見たままだ。褐色気味の肌に、黒髪だが毛先の方は茶色に脱色している短髪、切れ長な黒い瞳。そういえば、ルイージはこのような顔立ちだっただろうか…。服装も、おめかしの服装ではないような…。
「…ルイージ…?」
「そうか…」
そう呟いて、まだ食べきれていない食べ物を抱えたまま、立ち上がった少年。ベンチに座るゴナンをじっと見下ろす。
「ごちそうさま。本当に美味しかった。昨日から何も食べてなくて、とても腹ぺこだったんだ。どこからか食べ物かお金を盗もうと思ってたくらい。いつか必ず、恩を返す」
「え、そんな、恩だなんて、大げさな…。大体、気にしないでいいよ。友達を助けるのは当たり前のことなんだから。…ていうか、盗むって…」
「……」
少年はニコリと微笑む。
「…ねえ、お前、名前は何?」
「えっ?」
「ゴナン!」
と、屋台街の方からエドワード等がやって来た。ベンチから立ち上がりそちらを振り返るゴナン。
「エド」
「ごめん、お前、すごく気持ちよさそうに寝てたから、なんだか起こせなくて。先に屋台の方を回ってたんだ。こっちにいたんだな」
「大丈夫だよ。ぐっすり寝ちゃってたから、ありがとう。俺はルイージと…」
「ん? 俺?」
と、エドワードの後ろに立っている少年が答える。ゴナンはハッと気付いた。彼こそルイージだ。茶髪の短髪だが肌はもう少し白く、瞳はグリーン。よくよく見ると、見た目が結構、違う。
「…あれ、じゃあ、君は誰…?」
と、ゴナンは少年の方を振り返ったが、そこにはもう、誰の姿もなかった。あれはルイージではなく、誰だったんだろう…。
「ねえ、エド、今、俺の横にいたのって、誰だっけ」
「え? 知らない奴だよ。ウキの人間じゃないと思うぜ。ゴナン、誰としゃべってるんだろうって不思議に思っていたんだよ」
「…!」
と、「ゴナン!」とさらに声をかけて来た人物がいた。ナイフだ。リカルドも一緒に、駆け寄ってくる。
「ナイフちゃん」
「ちょっと! ゴナン、さっき一緒にいた男の子…」
「うん。なんか、すごいお腹を空かせてたから、一緒に屋台を回って食べ物をおごってあげていたんだけど…」
「……そうなの?」
そう聞いて、ナイフはリカルドと顔を見合わせる。そして、ゴナンの両肩に手を置いた。
「…聞いて、ゴナン。さっきの彼、あの『卵男』よ。卵を背負ってはいなかったけど」
「えっ?」
驚くゴナン。ゴナンは卵男と遭遇したことがなかったから、顔を知らなかったのだ。しかし、そういわれてみれば、着ていた服の柄。泉のほとりで見かけた、巨大鳥に乗る少女のものと同じだった。
「大丈夫? 何か危険な目に遭っていない? 毒矢を食らったりとか…」
リカルドも心配そうに声を掛ける。
「大丈夫だよ。普通に楽しく、屋台を回ってただけ。俺、この街の子だと思ってて…」
「そう? ならいいけど…」
「…リカルドにもらったお小遣いで、たくさん食べ物を、買ってあげちゃった…」
そう呟いて、シュンと落ち込むゴナン。リカルドは微笑み、頭を撫でる。
「…いいんだよ。ゴナンがそうしてあげたかったんだろう? きっと、お腹を空かせているのを、見てられなかったんだよね。君は、良いことをしたよ」
「…うん…」
「もう、いなくなっちゃったね。彼も身のこなしが軽そうだ」
キョロキョロと見回すリカルド。
「卵男だって気付いてたら、俺、自分の話なんかせずに、もっと卵のこと、いろいろ聞けたのに。ゴメン…」
「大丈夫だよ」
そう慰めつつ、リカルドは少し不思議に感じた。
(ゴナンが自分の話だけをするって、ちょっと珍しい気もするなあ…)
と、その時であった。
何か、上方から風の気配を感じた。見上げると…。
「あ…。巨大鳥…」
そこには、茶色の巨体で、すぐ近くから飛びあがる鳥がいた。羽ばたき、一直線に上昇している。卵男がいたのだから、仲間と思われる巨大鳥と少女が近くにいたとしても不思議ではない。ナイフはリカルドに尋ねた。

「どうする? 追う?」
「……いや…」
リカルドは一瞬だけ思案したが、すぐに首を横に振った。
「…今日はお祭だよ? 無粋ではないかな」
「無粋って…。必死こいて鳥を追ってるくせに、チャンス逃しちゃって。そんな感じでいいのかしら」
ナイフはそう言いながらも、少し微笑んだ。
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