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連載小説「オボステルラ」 【第四章 狼煙の先に】  15話「祭」(3)


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15話「祭」(3)


 エドワードはゴナンに話しかける。

「今の鳥、すごく大きかった気がするな」

「あ…、うん…」

「でも、そんな気がしただけかな? 龍みたいな巨大な鳥なんて、おとぎ話の世界だしな」

「……」

 祭の会場を見渡しても、巨大鳥が飛んでいたことに気付いた者もいたようではあるが、それは少数で、騒ぎになる様子はない。目撃した者もエドワードと同じような感想のようだ。

「……エドや、この街に、何か不幸が起こったら…」

 ゴナンは、少し不安そうにリカルドに尋ねる。リカルドはニコリと微笑んだ。

「…でも、何かあったとしても、きっとこの街の人は乗り越えられるよ。ここは豊かで強い街だから。ストネの街でもそうだっただろう? それに伝承では、『鳥を見た者』に不幸が訪れるんだよ。この祭の雰囲気の中では、見た人数は少なそうだよ。ね」

「うん…」

 そう答えるも心配そうにエドワードを見るゴナン。が、そのエドワードは少し気まずそうな顔をして、ナイフを見ていた。目線に気付くナイフ。

(…ああ、私のことを気持ち悪いって言ってたとかだったわね)

 ナイフはニッコリ微笑んで、エドワードに話しかけた。

「あら、エドくん。どうしたの? なにかお話?」

「あ…、いえ…。その…」

 エドワードはゴナンとナイフに交互に目線を遣り、少し話しづらそうにしていたが、ぐっと目線を上げて話し始めた。

「あ…、あの、なんで、そんな女みたいな服装で、女みたいな話し方なんですか…? 体はすげえ男らしくて、格好いい体格なのに。男らしくした方が、もっと強くなれるんじゃないん…、ですか…?」

「!」

 意外に直球で訊いてくる。しかし、これがエドワードなりの誠意なのだろう。ナイフはフフ、と微笑んで、ポーズを取った。

「あら、私はコレが一番美しいと思っているのだけど、お気に召さない? 好きな格好をして、本当の自分でいようとしているだけよ」

「本当の自分…」

 そう呟くエドワードの両肩に、ナイフは腕を乗せ顔を近づける。



「…あら…、エドくん。よく見ると、お目々がくりっとしていて可愛らしい顔立ちだわ。あなた、ドレスを着てお化粧をすれば、もっと美しくなれるのに。どうしてそんな男の子らしい服装をしているの?」

「…えっ? イヤだよ、ドレスに化粧なんて、きもちわりい…!」

 思わずナイフを撥ね除けそう答えて、ハッと口を押さえるエドワード。隣でゴナンは少しムッとするが、ナイフはさらに笑顔で続ける。

「…そう、それと同じよ。私だって男の服を着て、男っぽく振る舞うことだってできるけど、『イヤだよ、きもちわりい!』って思っちゃうの。同じことなのよ。我慢していた時期もあったけどね」

「……」

「私は生まれてからずっと『こう』なの。こういうのは、変えられるものではないでしょ? あまり多くはないかもしれないけど、世の中にはそういう人もいるって、知っていてほしいわ」

「…はい…。なんか、ちょっと、分かりました…」

 少し目を伏せ、素直に頷くエドワード。ナイフはそんなエドワードの頭をギュッとハグする。

「…まあ、でも、ドレスアップさせると、とても可愛くなりそうではあるけどね。うちのお店で働かない? ストネの街で女装バーをしてるのよ」

「うわ、やめろ…!」

 顔を赤くしてナイフを振りほどくエドワード。ナイフはさらに笑った。

「そう。安全に生きていくためには、得体の知れない者を警戒する気持ちも大事よ、エドくん。ほら、ゴナンもそんな顔しないで。エドくんも分かってくれているのよ」

「…うん」

 始終、エドワードの反応に対してムッとした顔をしていたゴナンに、ナイフは優しく話しかけた。

*  *  *

 やがて、夕暮れになってきた。中央の櫓の周りに人が集まり始めている。リカルドはゴナンに、今から何が始まるかを教える。

「そろそろ、ダンスタイムの始まりだね。男の人が女の人をエスコートして、楽しく踊るんだよ」

「踊る…」

「ゴナンの村みたいに夜這いの習慣なんかはないけど、でも、このダンスの時間がきっかけになってカップルになったり結婚したりする人もいるそうだよ」

「ふうん…」

 ミリアなら目を輝かせて詳細を聞き込んでくるような話題だが、ゴナンはあまり興味がなさそうだ。「俺は踊れないから、見てるよ」と、集まる人々の様子をただ、眺めている。

 と、エドワードが鼻息荒く、ゴナンの元にやってきた。

「エド、どうしたの? エドも踊る?」

「…ああ…、ゴナン。俺は、やってやるぜ…」

「?」

 周りで他の少年達が「マジかよ」「やめておけよ、無理だって」とザワついている。首を傾げるゴナン。

「やってやるって、何を?」

「…俺は今から、お前の仲間の、あのキレイなお姉さん、エレーネさんを、ダンスに誘う…!」

「…!」



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