第10回「週刊ことさきく」:英文法こそが正確な英語理解の土台だ!
「週刊ことさきく」ポッドキャストにもなりました!
ユーチューブは、ここ!
「週刊ことさきく」の記念すべき第10回目です。
今回のテーマは「英文法こそが正確な英語理解の土台だ!」。
ここ数十年にわたって日本の英語教育で続いている「文法軽視」という致命的な間違いを真正面から正します。
内容は以下のとおりです。
☆☆☆
0:40 高橋
今回のテーマは「英文法こそが正確な英語理解の土台だ!」です。
成瀬先生も、受験界で神様といわれている薬袋先生も、英文法がいかに重要かということを強調されています。
ところが最近の学校教育ではそこから逆行して文法を軽んじているように思えます。
この点について、成瀬先生、お話いただけませんか。
1:30 成瀬
まずこのテーマになったきっかけは、高橋さんがnoteに書いてくれたエッセイにあります。(https://note.com/naruseyukio/n/n0d2d53c3c06b)ぜひ読んでみてください。
ここからは日本の英語教育の歴史について話します。
日本の英語教育は40年ぐらい前までは英文を正確に読む力をつけるということを目標としてきました。
1970-80年代からは「読む」ではなく「話す」に重点が置かれるようになりました。
これによって文法の役割がどんどん小さくなっています。
学校英文法が古めかしいとの批判も高まりました。
こうした流れのなかで日本の英語教育から文法学習が消えていきました。
それでも大学入試が一種の歯止めになっていましたが、大学入試自体も「話す」ほうへと振れてしまった。「正確に読める」よりも「はやくざっくり読める」のほうへと重点を移しました。
4:30
こうした動きの中で、日本人の英語力はどうなったか。
みんな英語が話せるようになったのか。なっていません。
では、しっかりと読めるようになったか。逆に、ぜんぜん読めなくなっています。速読もできていない。意味がきちんととれていない。
意味がきちんととれないというのは、ビジネスをするにしても研究をするにしても致命的ですが、それが致命的であるということさえ、いまは気づけなくなっています。
5:50 高橋
私が高校生だったのは1980年代後半だったので、高校英語にも英文法という時間がありました。文法を頼りに英語を理解しようというかたちだった。
6:20 成瀬
その「文法を頼りに英語を理解する」というのが批判されたわけです。
それでは、たんなる暗号解読ではないか、英語を英語として読んでいない、と。
6:40 高橋
では、そのように批判する人たちは、文法を使わずに、英語をどのように読むべきであると思ったんでしょうか。
7:00 その点が、伊藤和夫が、反文法派の人々を批判した点です。
文法を使って読むことをそうやって批判するのはいいが、ではあなたたちは英文をどのように読めばいいと考えているのか、その代替案を出してほしい、と。何も代替案も出さないで、批判ばかりしていて、それでいいと思っているのか、と。
伊藤和夫は、だから私は直読直解のためのメソッドを作るんだ、と。
それで書いたのが、あの『英文解釈教室』なんです。そしてそれを引き継いでいるのが薬袋さんです。
7:50
そのときに伊藤和夫がいったのは、伝統文法を捨ててはいけないということ。
伝統文法を安易に捨てようとする人たちがいるが、それはよくない。
当然ながら、伝統文法にはいいところと悪いところの両方がある。
それを全部捨てて、新しいものに全部取り換えることで、本当によくなるのか。
そういうものではないだろう、と。
伊藤和夫という人物は非常に面白くて、考え方は非常に革新的であるのに、メソッドとしては非常に保守的。
9:30
私は予備校とはまったく無関係で、伊藤和夫の本に出会ったのは50代になってからのことでした。読んでみると、私が自分で考えついたと思っていたことがきちんと書いてあったので驚きました。
伊藤和夫は、新しい言語理論が出てきているのは知っているが、安易にそれにとびつくことが、本当に新しい価値を生むのか、といっています。そのとおりだと思いましたね。
11:00
ところが、日本の英語教育は、伊藤和夫のような考え方は主流になりませんでした。
ここからは毒舌になりますが、日本の英語教育業界は、たんに欧米で主流となったものをただ無批判に受け入れてきました。それだけです。
当時の移民のあり方や生活言語としての必要性などを考えても、欧米と日本とではまったく社会的な状況が異なっていたにもかかわらず、日本の英語関係者は愚かですから、欧米の理論や手法を鵜呑みにしてきました。
はっきりいいます。愚かです。洗脳されたんでしょう。欧米でできたものはすべて素晴らしいという、洗脳でしょう。それしか、考え難いです。
12:30
結局、何が起こったか。日本人の文法力や読解力があきらかに落ちています。
たとえば、30年ほど前までは、日本人の留学生に対する評価は非常に典型的だった。最初の半年ほどは何も話せない状態が続くが、それ以降は成績がぐんと伸びる。なぜかといえば、正確な英語が身についているから。耳が慣れてくると、それが活きてきます。
いまは、それが崩れました。そういう評価は、このところは出ていないんじゃないでしょうか。
では、そのかわりに何が、日本人に身についたんでしょうか。何もついていません。
ただただ英語を話すだけなら、中国人のほうがうまいんですよ。メンタルバリアが小さいから。
つまり、日本人は、自分の強みだったところを、自分から捨てたんです。そして、そのことを気づいていません。
なぜか。読めない人間には、読めるということがわからないから。読めたつもりになっている。
しかし私たちのように翻訳をする人間、トップレベルの翻訳をする人間にとって、正確に読めるというのは、「いのち」なんですよ。
翻訳をみていて、読めていないパターンはふたつあって、ひとつはたんに直訳をするひと。それからもうひとつは、自然な日本語だがただざっくりと訳してくるひと。そういう人は、ちょっと複雑な思考の英文になると、きちんと読むことができないんです。
16:50
そして正確に読むための土台となるのが、文法なんです。
ただし、学校英文法だけでは足りないから、伊藤和夫や薬袋さんとか私とかが、それぞれに独自のやり方を付け加えています。学校文法を安易に捨ててはいけません。
17:30
そうやって読めば、読めば読むほど、深いところがわかってくる。書いた人の心が、だんだんと見えてくるんですね。
18:00 高橋
私は、文法の勉強をしたのは大学受験のときまでで、その後はそこまでに習ったものでなんとかやってきたんですが、そのうちにだいぶ崩れてきたなと感じることがあって、それでいま薬袋さんの最近の文法書を開いたんです。
そうすると、文法的にきっちりと読むことの重要性にあらためて気づきました。
そこで、いま薬袋先生のテキスト「黄リー」をあらためてやり直しているところです。
19:50
その「黄リー」のなかに書いてある、次のことは私にとって衝撃的でした。
「現代は、成果に直結することしか、教えない」と書いてあったんです。
英文法は成果に直結しないから、教えない、と。
成果というのは、すぐ話せるようになる、とかです。そういうことに英文法はつながらないから、教えない、と。
しかし、本当は、回り道をして勉強したことのほうが、あとあとに役に立つんだということを、薬袋さんは明確に書いています。まさにそのとおりだと思います。
そのことに感動して、私はあのエッセイを書きました。
20:30 成瀬
そういった目先の利益ばかりを追いかけるのは、普遍性がないと思います。
人間の持つべき普遍価値から、すごく外れていると思います。
まわりみちというのは、普遍価値を大切にしようということと同じだと思います。
すぐに結果を出さないといけないというのは、3カ月の決算で結果が出ないとCEOの首を切るというアメリカの会社経営スタイルとリンクしているような気がします。
いずれもどこかでつけがくると思います。
22:30
日本人はそうした普遍価値、長期的視点をすごく大事にしてきた民族だと思います。
少しずつ積み上げて、それが3年後、5年後に実をつけてくれればいいというメンタルを持っていた。それと、文法の勉強、読解の勉強とは、相性がよかったんですね。
日本人は、瞬間のパワーはそんなにないかもしれないけれど、こつこつと積み上げて、最終的には良い結果を出す民族である、そのように世界で認められてきたんです。
派手でもなんでもない、打ち上げ花火のようなことはしない、けれどもこつこつと積み重ねることで、日本人はしっかりと世界からの信頼を積み重ねてきた。そうした信頼を積み重ねられるだけの知識や技術を持っていた。それは回り道をしながら身につけてきたものです。それが日本人のやりかたでした。
その日本人の強みを、日本人は壊したんだと思います。
それも、自分からです。
そして、欧米でできたものはいい、という思考停止状態に陥ってしまった。
英語関係の人は、それが一番ひどいのです。もっともやってはいけないことをした。
お前たちはなにをしているんだ、と私は激高しています。
29:30
ようするに、英語関係の人は自分で考える力がないのではないか。
アメリカがこういうのが流行っているから輸入するんだ、イギリスでこんなことをしているから入れるんだ、ヨーロッパで参照枠とやらができたからそれを入れるんだ、バカじゃないか。
学校文法をやりなさいというと、そんなものは世界のどこもやっていないという。それがどうした、世界がやっていなくても、自分がよいと思えば、それをやればいいんだと私は思います。
ただ、絶望はしたくないです。これを見ている方のなかで、私たちの意見に対して、そうだそうだと思ったひとは、ぜひ高橋さんのnoteのエッセイ(https://note.com/naruseyukio/n/n0d2d53c3c06b)にコメントをください。
また、意見の違う英語関係者のあいだで、活発な議論ができることを望んでいます。
☆☆☆
☆☆☆
「ことさきく|成瀬由紀雄の日英文章・翻訳教室」では、このほかにも日本と日本人、英語・日本語・翻訳その他に関するコンテンツを数多くアップしてあります。総数は1000本を超えています。
いくつものマガジンを設定していますのでぜひチェックしてみてください。
