【連載小説】銀色のシェイカー 第7回「台本」
全13回・完結
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ビデオが終わると、照明がつけられた。
眩しくて……僕はなんだか、ぼーっとしてしまい、
そのあとどうやってお通夜が終わったか、あんまり覚えていない……
安田さんが僕のところに来た。
「あのビデオ、ほとんど君が主役だったね」
ニカッと笑って、向こうへ行った。
そのまま同じ会場で、みんなでお寿司を食べた。
鶏の唐揚げやサラダもあった。ジュースも注文した。
大人たちはずっと話していて、僕は一人でトイレに行った。
廊下の向こうに安田さんがいて、僕に気がつくと
「あっ!」と言って、奥へ行ってしまった。
なんだろう……?
僕がトイレから出てくると、安田さんが何かを手に持ち、
トイレの前に立っている。
僕のことを待っていたようだ。
「明日のお葬式で、君に頼みたいことがあるんだ。
お母さんにはもう、許可をとってある」
「なんのこと?」僕が聞くと、
「昼間、おばあちゃんの家から借りてきたんだ。
これでカクテルを作ってほしい。
おじいちゃん、お酒が好きだったんだろ?」
そう言って、彼は何かを僕に差し出した。
彼の手の上で、それはキラリと光った。
見覚えがある。
これは……おじいちゃんが使っていたシェイカーだ!
僕が小さかった頃、おじいちゃんがこれに氷とか牛乳とか、
なにかを入れて、シャカシャカ振っていたのを見たことがある。
僕はピカピカ光るシェイカーが珍しくて、
おじいちゃんから取ろうと手を伸ばした。
おじいちゃんは
「気になるか? ピカピカして綺麗だろ?」
と笑った。
そのときの光景が、鮮明に頭に浮かぶ……
僕が作ったカクテルを、祭壇に供える。
そんな台本が出来ていた。安田さんの提案だ。
そんな台本、勝手に作るなよ……
僕は心底あきれた。
お酒を作ったこともない。
それ以前に、お酒を飲んだこともない僕がカクテルを作るなんて
意味不明じゃないか……
戸惑う僕に安田さんは、
「大丈夫。僕が教える。これでも若い頃、バーテンダーをやっていたんだ」
と、ちょっと得意気に言ってきた。
バーテンダーか……テレビで見たことがある。

ちょっとカッコいい感じはするが……
僕は、まんざらでもない顔をしていたのだろうか。
安田さんは僕の心を見透かしたように、ニカッと笑い、
「じゃあ、よろしく!」
と言って、奥へ行ってしまった。
まったく……無茶振りにもほどがある。
……でも、ちょっとだけワクワクしている自分もいた。
食事が終わって、帰り支度が始まった。
明日の葬儀は10時スタートだから、
今日はなるべく早く帰ろうということになった。
